L
相手の通帳を見たことがないまま、退職の日が近づいてきます
共働きを始めたころから、夫婦の財布は別々。
住宅費は夫、食費と日用品は妻。旅行や家電の買い替えは、そのとき余裕がある方が出す。細かな使い道を干渉しなくてよいため、これまでは大きな問題を感じませんでした。
ところが、定年や年金の話が身近になると、急に分からないことが増えてきます。
「夫は、退職金があるから心配ないと言う。でも、いくらあるのかは知らない」
「妻は貯金しているようだけれど、老後の生活費に使うつもりなのか、自分のために残すのか聞けない」
「自分は住宅費を多く払ってきた。相手はその間に十分貯めているはずだと思っている」
夕食のときに「老後のお金、どうする?」と切り出しても、「まだ先の話だよ」「自分の分は自分で何とかする」と話が終わってしまう。
そこで「貯金はいくらあるの」と聞けば、疑っているように聞こえそうです。
聞かないままでは不安なのに、聞けば夫婦関係が悪くなりそう。そのため、通帳の残高を知らないことより、話題にできない状態そのものが重くなっていきます。
別財布であることが問題なのではありません。
二人の生活に必要なお金と、それぞれが老後に出せるお金の境目が決まっていないことが、老後の見通しを曇らせます。
家計を完全に一つへまとめなくても、共有すべき数字だけを決めれば、老後資金は見えるようになります。
老後の話が進まないのは、二人が別の質問に答えているからです
一方が「老後資金は大丈夫?」と聞いたとき、夫婦が思い浮かべている内容は同じとは限りません。
| 聞いた側が知りたいこと | 聞かれた側が受け取ること |
|---|---|
| 二人の年金で生活費を払えるか | 自分の貯金額を調べられている |
| 住宅ローンが退職後も残らないか | これまでの働き方を責められている |
| 介護や入院に備えられるか | 自由に使えるお金を取り上げられる |
| 片方が先に亡くなっても暮らせるか | 縁起の悪い話をされている |
| 今から貯蓄を増やす必要があるか | 自分の浪費を疑われている |
「いくら持っているか」から始めると、相手は財産調査をされているように感じます。
最初の質問は、次のように変えます。
「退職後も、今と同じ分担で家の支払いを続けられそう?」
「二人の年金で、毎月の生活費をどこまで出せるかだけ見てみない?」
「通帳を見せてほしいのではなく、二人の生活に毎月いくら出せるかを知りたい」
残高ではなく、共同生活に出せる金額から聞くことで、話の目的が伝わりやすくなります。
別財布のままでも、五つの数字は二人の情報にします
すべての収入や支出を細かく共有すると、これまでの別財布の良さが失われたと感じることがあります。
まずは、老後の生活を左右する五つだけを二人で書きます。
| 共有する数字 | 具体的に書くこと | 分からないと起きること |
|---|---|---|
| 公的年金 | それぞれの受給開始時期と手取り前の見込額 | 退職後の毎月の収入を多く見積もる |
| 老後に使える資産 | 預貯金、退職金、個人年金、投資資産などの金額帯 | あると思っていた資金が、別の目的に使われる |
| 返済が必要なお金 | 住宅ローン、車のローン、カード分割、親族への借入など | 貯蓄額だけを見て家計に余裕があると誤解する |
| 退職後も続く固定費 | 住居費、保険、通信、車、税金、管理費など | 生活費を食費や光熱費だけで計算してしまう |
| 共同生活へ出せる額 | 各自が毎月出す額と、臨時支出の負担方法 | 不足が出るたびに、どちらが払うかで揉める |
正確な貯金残高を言いたくない場合は、最初は金額帯でも構いません。
- 100万円未満
- 100万円以上500万円未満
- 500万円以上1,000万円未満
- 1,000万円以上
ただし、住宅ローン以外の借入、税金や保険料の未払い、家族に内緒の連帯保証など、夫婦の生活へ影響する負担は「個人のこと」として隠したままにしない方がよいでしょう。
相手の全財産を把握することより、将来の家計へ入るお金と、家計から出ていくお金を間違えないことが目的です。
最初の一枚には、現在の家計簿ではなく退職後の月額を書きます
現役時代の家計を細かく調べ始めると、「あなたの趣味代が多い」「そちらは食費を出していない」と過去の精算になりやすくなります。
まず、退職後の一か月を仮に作ります。
| 項目 | 夫が出す額 | 妻が出す額 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 住居費・管理費 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 食費・日用品 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 水道光熱費 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 通信費 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 医療・薬 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 車・交通費 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 税金・社会保険料 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 交際費・冠婚葬祭 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 住宅・家電の修繕積立 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 夫婦共通の予備費 | 記入 | 記入 | 記入 |
税金や保険料は、年金額面から差し引かれるものや、自分で納めるものがあります。最初は正確な手取りが分からなくても、年額を12で割って仮置きします。
旅行、趣味、子どもや孫への援助などは、共通生活費と別にします。
「二人が暮らすために必要な額」と「それぞれが楽しむための額」を混ぜない方が、別財布を維持しやすくなります。
年金は「夫婦で月いくら」ではなく、一人ずつ確かめます
夫婦のどちらかが「二人なら年金で何とかなる」と思っていても、その根拠が標準的な夫婦のモデル額や知人の話だけになっている場合があります。
公的年金は、加入期間、働き方、報酬、受給を始める時期などによって個人ごとに異なります。
日本年金機構の「ねんきんネット」では、自分の年金記録を確認し、今後の働き方や受給開始年齢などの条件を設定して、将来の老齢年金見込額を試算できます。夫婦それぞれが自分の情報を確認してください。
紙に書くのは、次の項目です。
| 夫 | 妻 |
|---|---|
| 老齢基礎年金の見込額 | 老齢基礎年金の見込額 |
| 老齢厚生年金の見込額 | 老齢厚生年金の見込額 |
| 受給開始を予定する年齢 | 受給開始を予定する年齢 |
| 退職から受給開始までの収入 | 退職から受給開始までの収入 |
| 企業年金・個人年金など | 企業年金・個人年金など |
「ねんきんネット」の試算は、基本的に本人の老齢基礎年金と老齢厚生年金が対象です。遺族年金は試算の対象外で、配偶者に関する加算も試算へ反映されない場合があります。将来の家計を作る際は、表示された二人分を足すだけで終わらせないでください。
共済年金の加入歴、加給年金、振替加算などが関係し、試算額に疑問がある場合は、年金事務所で個別に確かめます。
退職時期が違う夫婦には、年金開始までの「空白」があります
夫が60歳で退職し、妻は65歳まで働く。あるいは、年上の夫が先に年金を受け取り、年下の妻はまだ働いている。
このような夫婦では、「老後全体では足りるか」だけでなく、収入が切り替わる時期ごとに見ます。
| 時期 | 主な収入 | 見落としやすいこと |
|---|---|---|
| 二人とも働いている | 二人分の給与 | 余ったお金を誰が老後用に残すか決まっていない |
| 一人だけ退職した | 一人分の給与、退職金、再雇用収入など | 退職した側の生活費を誰が出すか |
| 一人だけ年金を受給 | 給与と一人分の年金 | 年金受給者が家計へいくら出すか |
| 二人とも年金生活 | 二人分の年金、個人年金など | 税・社会保険料を引いた後の手取り |
| 一人暮らしになった | 本人の年金、条件を満たす遺族年金など | 二人分の年金がそのまま残るわけではない |
「退職金があるから大丈夫」という言葉も、次のように分けます。
- 退職金の見込額はいくらか
- 住宅ローンの返済へ使う予定があるか
- 子どもへの援助や車の購入を予定しているか
- 老後の生活費として残るのはいくらか
- 退職金が支給されない、または減る可能性はないか
退職金を夫婦の老後資金と考えている人と、受け取った本人の自由なお金と考えている人が同居していると、退職後に初めて食い違いが表面化します。
現在の支出分担を、そのまま年金生活へ持ち込めるとは限りません
現役時代は、収入が多い夫が住宅費、妻が食費という分け方で成り立っていたかもしれません。
退職後に夫の収入が大きく減り、妻の年金が少ない場合、同じ項目分担では双方が苦しくなることがあります。
| 分担方法 | 特徴 | 老後に起きやすいこと |
|---|---|---|
| 項目ごとに分ける | 夫は住宅費、妻は食費など | 物価や修繕費の変化で負担差が広がる |
| 同額を共通口座へ入れる | 計算が簡単 | 年金額が違うと、収入の少ない側が苦しくなる |
| 収入比で入れる | 支払能力へ合わせやすい | 収入をある程度共有する必要がある |
| 必要な生活費を一方が多く払う | その時点では回しやすい | 払う側の資産だけが早く減る可能性がある |
| 共通費と個人費を分ける | 別財布を保ちながら共同生活を守れる | 何を共通費とするかの合意が必要 |
おすすめは、夫婦共通の生活費だけを先に決め、それぞれが収入に応じた額を入れる方法です。
たとえば、共通生活費が月24万円で、夫婦の手取り収入の比率が6対4なら、夫14万4千円、妻9万6千円を目安にします。
正確に比率計算をしなくても、「年金の半分ずつを出す」「一方は住宅費、もう一方は毎月決まった額を入れる」など、二人が納得でき、継続できる形で構いません。
重要なのは、不足したときに自動的にどちらか一人の貯金を使う状態にしないことです。
共通口座を作っても、個人の財布までなくす必要はありません
別財布を続けたい夫婦には、「共通口座+個人口座」という形があります。
| 共通口座から出す物 | 個人口座から出す物 |
|---|---|
| 住居費、管理費、固定資産税 | 個人の趣味 |
| 食費、日用品、水道光熱費 | 個人だけの交際費 |
| 二人が使う通信費や車 | 個人の衣類や美容 |
| 住宅・家電の修理 | 自分の子や親族への援助 |
| 夫婦共通の旅行や行事 | 相手が関与しない買い物 |
| 共通の予備費 | 各自が残したい貯蓄 |
共通口座には、生活費の数か月分をためるのか、毎月使い切るのかも決めます。
一方が多額のお金をもう一方名義の口座へ移し、「夫婦のお金だから」とそのまま貯蓄する場合は、税務上の扱いにも注意が必要です。
夫婦など扶養義務者の間で、通常必要な生活費を必要な都度負担するものは、原則として贈与税の対象になりません。一方、生活費の名目でも、将来分をまとめて渡して預貯金や投資に回した部分は、贈与税の対象となる可能性があります。多額の移動や名義変更を行う前に、税務署や税理士へ個別に確かめてください。
「貯金はいくら?」では答えない相手にも、金額帯なら聞けることがあります
配偶者がお金の話を嫌がるとき、何度も問い詰めれば、さらに口を閉ざすことがあります。
話す内容を三段階に分けます。
| 段階 | 共有する内容 | 聞き方の例 |
|---|---|---|
| 第一段階 | 退職後、毎月いくら共通費へ出せるか | 「年金生活になったら、家の支払いへ毎月いくら出せそう?」 |
| 第二段階 | 老後に使える資産の金額帯と借入の有無 | 「正確な額でなくていいから、500万円未満か以上かだけ共有しない?」 |
| 第三段階 | 金融機関、保険、資産の一覧と保管場所 | 「病気のときに困らないよう、どこに何があるかだけ残そう」 |
一度の会話で第三段階まで進める必要はありません。
ただし、「自分のことだから一切言わない」という状態が続く場合は、夫婦の共通生活をどう維持するのか、最低限の回答を求めて構いません。
次のように伝えます。
「自由に使うお金まで管理したいわけではないよ。ただ、あなたが家計へ出せる額が分からないと、私は自分の貯金をいくら残せばよいか決められない。まず毎月出せる額と借入があるかだけ教えてほしい」
相手が「自分の分は自分で」と言うなら、共同費の境目を尋ねます
「老後も自分の生活費は自分で払うから問題ない」と言われることがあります。
しかし、夫婦の生活には、どちらか一方の分に分けにくい支出があります。
- 家の修繕や給湯器の交換
- 固定資産税や管理費
- 二人で使う車
- 家電の買い替え
- 転居や住宅改修
- 配偶者の介護で増える光熱費や交通費
- 葬儀、納骨、住まいの片づけ
「自分の分」の境目を、具体的な場面で聞きます。
「屋根の修理に100万円必要になったら、どう分ける?」
「私が介護で働けなくなったら、生活費はどうする?」
「どちらかが施設へ入ったら、自宅と施設の費用を誰の資産から出す?」
この問いに答えられないなら、個人の老後資金だけでなく、夫婦共通の予備費が必要です。
二人暮らしの予算だけでは、老後の安全は分かりません
夫婦二人で暮らしている間は、二人分の年金が入り、家賃や光熱費を分けられます。
しかし、一方が先に亡くなった後も、住居費や基本料金が半分になるわけではありません。
一方の老齢年金は死亡により終了し、残された配偶者は、自分の老齢年金に加えて、要件を満たす場合に遺族厚生年金などを受け取ります。亡くなった配偶者の年金全額が、そのまま残された人へ移るわけではありません。遺族厚生年金の対象や金額、本人の老齢厚生年金との調整は、年齢や加入状況などによって異なります。
そのため、家計表は二つ作ります。
| 二人で暮らす場合 | 一人になった場合 |
|---|---|
| 二人分の年金見込額 | 本人の年金と遺族年金の見込み |
| 二人分の食費・医療費 | 一人分の食費・医療費 |
| 現在の住居費 | 一人でも同じ家に住み続ける費用 |
| 二人で行う家事 | 外注や生活支援が必要になる費用 |
| 車や交通手段 | 運転しない側が一人になった後の移動費 |
遺族基礎年金は、原則として一定の年齢までの子がいる配偶者または子が対象です。老後の夫婦で子がすでに成人している場合、遺族基礎年金を前提に家計を作らないようにします。
遺族年金の見込みは、「ねんきんネット」の老齢年金試算だけでは分かりません。年金事務所へ夫婦それぞれの加入状況を伝えて確かめてください。
介護費用は、介護される人の財布だけでは終わりません
別財布夫婦では、「自分の介護は自分の貯金で」と考えることがあります。
けれど、在宅介護になると、配偶者の家計や働き方にも影響が出ます。
| 介護される側にかかる費用 | 介護する側へ出る負担 |
|---|---|
| 介護サービスの自己負担 | 通院や送迎の交通費 |
| 紙おむつや介護用品 | 仕事を休むことによる収入減 |
| 福祉用具や住宅改修 | 食事や家事を外注する費用 |
| 施設の費用 | 自宅と施設の二重の住居関連費 |
| 医療費や薬代 | 面会や手続きに使う時間と移動費 |
介護用の共通予備費を作るなら、「誰の介護に使ってもよい夫婦の資金」として金額を決めます。
一方が多く貯めているから、その人の介護費をすべて個人資産から出すと決める前に、介護する配偶者の生活も維持できるかを見ます。
保険は「入っている」ではなく、誰にいくら支払われるかを共有します
配偶者から「保険には入っているから大丈夫」と言われても、老後の生活費に使える保険とは限りません。
| 共有したい内容 | 理由 |
|---|---|
| 保険会社と保険の種類 | どこへ請求するか分かるようにする |
| 契約者・被保険者・受取人 | 誰の病気や死亡で、誰が受け取るかを取り違えないため |
| 保障期間 | 老後まで保障が続くかを見るため |
| 保険料 | 退職後も払い続けられるかを見るため |
| 解約返戻金や満期金 | 老後資金として使えるものかを見るため |
| 証券や連絡先の保管場所 | 入院や死亡時に家族が請求できるようにするため |
暗証番号やオンラインサービスのパスワードを無理に共有する必要はありません。
金融機関や保険会社の名前、契約の種類、書類の保管場所、緊急時の連絡先だけでも一覧にしておくと、病気や死亡時に探し回らずに済みます。
一方だけが住宅費を払ってきた夫婦は、「どちらが多く貯めたか」だけで比べません
夫が住宅ローンを払い、妻が日々の生活費を負担してきた家庭では、預貯金残高だけを見ると、妻の方が多く残っている場合があります。
そこで「住宅は自分が払ったのだから、妻の貯金も夫婦のもの」と言えば、妻は納得できないかもしれません。
反対に、妻が家事や育児を多く担ったことで、夫が働き続けられた家庭もあります。
老後の話し合いを、過去の貢献を金額へ換算する場にすると、結論が出にくくなります。
見る順番を変えます。
- 現在の住まいを今後も維持するか
- 住宅ローンや修繕費がいくら残るか
- 二人の年金収入はいくらか
- 各自が老後生活へ出せる資産はいくらか
- 不足分をどのように補うか
「今まで誰が多く払ったか」と「これから誰が払えるか」は、同じ答えにならないことがあります。
配偶者がまったく開示しないときは、自分の老後計画を別に作ります
何度話しても、配偶者が年金や貯金について一切話さないことがあります。
その場合、「相手には十分な貯金があるはず」と期待して、自分の資産を使い切らないようにします。
まず、自分だけの数字で家計を作ります。
- 自分の年金見込額
- 自分名義の預貯金と資産
- 自分が負担している生活費
- 自分名義の借入
- 一人になった場合の住居費
- 自分の医療・介護へ残したい額
そのうえで、配偶者へ次のように境界を伝えます。
「あなたの資産を管理したいわけではありません。ただ、何も共有されない状態では、私は自分の年金と貯金だけで暮らせるように計画します。今後、家の修理や生活費が不足したときに、私の貯金だけから出すことはできません」
拒否されたからといって、相手の分まで無条件に備える必要はありません。
共同生活へ必要な金額を示し、負担方法について回答を求めます。
隠れた借入が心配なら、残高より先に「毎月の返済」を聞きます
配偶者の口座を知らないと、貯金だけでなく借入も見えません。
問い詰める形を避けるなら、家計へ影響する支払いから聞きます。
- 住宅ローン以外の返済はあるか
- クレジットカードの分割払いやリボ払いはあるか
- 車のローンや事業上の借入はあるか
- 親族や知人から借りているお金はあるか
- 連帯保証人になっている契約はあるか
- 税金や社会保険料の未払いはないか
「借金があるでしょう」と決めつけず、次のように聞きます。
「老後資金は、貯金から返済分を引いて見たい。住宅ローン以外に、退職後も続く支払いがあるかだけ教えてほしい」
大きな負債が見つかった場合は、責める前に契約書や残高、金利、返済期間を見ます。家計だけで整理できない状況なら、金融機関や公的な多重債務相談、法律相談などへ具体的な資料を持ってつなぎます。
お金の話は、食卓で突然始めず「30分だけ」と予定にします
配偶者がテレビを見ているときや、仕事で疲れているときに通帳の話を出すと、内容以前に拒まれやすくなります。
話す日時と目的を先に伝えます。
「今度の日曜の午前中に、30分だけ老後の生活費を見たい。通帳を見せ合う話ではなく、年金と毎月の共通費だけを紙にしたい」
一回目の話し合いでは、結論を出そうとしません。
| 一回目 | 二回目 | 三回目 |
|---|---|---|
| 年金見込額と退職時期 | 共通生活費と負担額 | 貯蓄、介護、一人になった後 |
| 30分で終える | 不足額を仮計算する | 口座や書類の所在を残す |
| 宿題を一つ決める | 3か月試す分担を決める | 年1回の見直し日を決める |
最初から老後、介護、相続、葬儀まですべて話そうとすると、重すぎて進みません。
一回目の宿題は、「それぞれが自分の年金見込額を調べる」だけでも十分です。
話し合いが責め合いになりそうなときの会話例
相手の貯金額を知りたいとき
「使い道を管理したいわけではないよ。二人の生活に使えるお金があるのか分からず、私が自分の貯金をどこまで使ってよいか決められない。正確な残高でなく、老後に使える金額帯だけ教えてもらえないかな」
自分ばかり生活費を出していると感じるとき
「今までの分を返してほしいという話ではないよ。退職後も同じ分担では続けられないので、二人の年金に合わせて来年からの負担を決めたい」
相手が「何とかなる」と言うとき
「私も何とかしたいと思っている。ただ、何とかなる根拠が分からないと安心できない。二人の年金と住居費だけ、紙に書いて確かめよう」
話すこと自体を拒まれたとき
「今日は金額を言わなくていいよ。その代わり、来月までに年金見込額と、退職後に共通費へ出せる額だけ考えてほしい」
相手から疑われていると言われたとき
「あなたを疑っているのではなく、私たちの生活がどの収入で続くのかを知りたい。自由に使うお金には口を出さないので、家に必要な部分だけ一緒に決めたい」
夫婦の老後資金表は、一度作って終わりではありません
働き方、年金の受給時期、親への援助、病気、住み替えなどで、二人の状況は変わります。
少なくとも次の時期には、数字を更新します。
- どちらかが退職したとき
- 年金の受給開始を決める前
- 住宅ローンを完済したとき
- 大きな病気や介護が始まったとき
- 住み替えや住宅の大規模修繕を考えるとき
- 保険を解約・更新したとき
- 相続や退職金など、まとまった資産が入ったとき
毎月家計会議をする必要はありません。
年に一度、誕生月や結婚記念日など、思い出しやすい時期に「年金・資産・負債・共通費」の四つだけ更新する方法でも続きます。
今日共有するのは、全財産ではなく「老後に毎月出せる額」です
夫婦の財布が長年別だったなら、今日からすべてを一つへまとめる必要はありません。
まず、それぞれが紙へ次の三つを書きます。
- 退職後に受け取る年金の見込額
- 夫婦の生活費へ毎月出せる額
- 老後資金から絶対に出したくない用途
最後の項目も書くことがポイントです。
「自分の医療費として300万円は残したい」
「子どもへの援助には使わない」
「家の修繕には出すが、車の買い替えには出さない」
使えるお金だけでなく、守りたいお金を伝えることで、相手も財産を取られる話ではないと分かります。
次に、二人の毎月の共通生活費を仮に出し、それぞれの拠出額で足りるかを見ます。
不足するなら、すぐ投資や保険商品を探すのではなく、退職時期、住居費、車、保険、共通費の分担を一つずつ見直します。
別財布の夫婦に必要なのは、同じ通帳を持つことではありません。
二人で暮らすためのお金がどこにあり、毎月誰がいくら出し、片方だけになった後も暮らせるかを、お互いに説明できることです。
まずは「貯金を見せて」ではなく、「年金生活になったら、家に毎月いくら出せそう?」と聞くところから始めてください。
出典・確認先メモ
- 日本年金機構「ねんきんネット」:年金記録の確認、将来の老齢年金見込額の試算、通知書の確認に関する公式情報。
- 日本年金機構「年金見込額試算」:試算対象となる年金、配偶者情報や遺族年金が試算へ反映される範囲に関する確認先。
- 日本年金機構「遺族厚生年金」「遺族基礎年金」:配偶者が亡くなった場合の受給対象、要件、年金額の考え方に関する確認先。
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」:夫婦の年齢差や年金加入期間により関係する加算・終了時期の確認先。
- 国税庁「贈与税がかからない場合」:夫婦など扶養義務者間の通常必要な生活費と、預貯金等として残る一括移転の税務上の扱いに関する確認先。
















