親の介護費を払うと、自分の家の生活費が残らない
母のデイサービス代と紙おむつ代を支払い、通院のタクシー代も立て替えました。
介護のために仕事を週5日から週4日へ減らしたので、自分の給与も以前より少なくなっています。
月末に通帳を見ると、自宅の住宅ローン、子どもの学費、食費を払うには足りません。
ケアマネジャーには介護サービスの相談をしています。
けれど、「私の家計まで苦しい」とは言い出せずにいます。
市役所へ電話しようとしても、介護保険課なのか、生活相談なのか、福祉事務所なのか分かりません。
「親の介護費について相談したいのか、自分の生活費について相談したいのか、どちらかに決めないといけないのだろうか」
「貯金が少し残っているうちは、生活相談へ行ってはいけないのではないか」
「兄弟に頼る前に役所へ行ったら、家族で何とかするよう言われるだろうか」
介護と生活費は、別々の問題に見えて、実際にはつながっています。
介護サービスを増やせば費用が増えることがあります。家族が介護を引き受ければ、働く時間や収入が減る場合があります。
片方だけを見直しても、もう片方の負担が重くなることがあるのです。
最初の窓口は、「いちばん期限が近い困りごと」で決めます
| 今いちばん困っていること | 最初の窓口 | 伝えること |
|---|---|---|
| 親の介護方法やサービス費を見直したい | 地域包括支援センター、担当ケアマネジャー | 現在の介護状況、家族の負担、毎月払える上限 |
| 自分の家の食費・家賃・光熱費が足りない | 自治体の自立相談支援機関 | 介護で増えた支出、収入減、毎月の不足額 |
| 親と介護者の家計が両方苦しい | 地域包括支援センターまたは自立相談支援機関 | 「介護と生活費を切り離せない」と最初に伝える |
| 今月の食料や住まい、必要な医療を確保できない | 地域を担当する福祉事務所 | 所持金、預貯金、未払い、今日困っていること |
| 介護で仕事を休み、給与が減る | 勤務先の人事・労務、ハローワーク | 介護休業制度、介護休業給付の対象になるか |
| 借入れやカード返済も重なっている | 自立相談支援機関、自治体の多重債務相談、法テラス等 | 借入先、残高、返済日、滞納の有無 |
一つの窓口だけですべての手続きが終わるとは限りません。
それでも、「ここでは介護だけ」「ここではお金だけ」と自分で完全に分けてから行く必要はありません。
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防などを担う、市町村が設置する地域の中核的な相談機関です。家族介護者も含めた支援の必要性が示されています。
自立相談支援機関では、生活上の困りごとを受け、仕事、住まい、家計などを含む支援計画を相談者と一緒に作ります。家計改善支援では、収支の見える化や関係機関へのつなぎも行われます。
どちらへ行くか迷ったら、電話口で「親の介護費が増え、介護する私の生活費も足りません。両方を一緒に見てもらえる入口を探しています」と伝えてください。
親の家計と、介護する家族の家計を一枚に混ぜない
介護が始まると、誰のお金で何を払ったのか分からなくなりがちです。
親の年金口座から介護サービス費を払い、子どもが紙おむつや交通費を立て替え、自分の勤務を減らした分は貯金で補う。
この状態では、「介護費はいくらかかっているか」も、「子どもの家計がいくら不足しているか」も見えません。
親本人の家計
| 親の収入・支出 | 月額 |
|---|---|
| 年金・その他の収入 | 円 |
| 住居費・光熱費・食費 | 円 |
| 医療費 | 円 |
| 介護サービス自己負担 | 円 |
| 介護保険外の費用 | 円 |
| 親の毎月の不足額 | 円 |
介護する家族の家計
| 介護者の収入・支出 | 月額 |
|---|---|
| 介護前の手取り収入 | 円 |
| 現在の手取り収入 | 円 |
| 親のために立て替えた費用 | 円 |
| 自分の世帯の生活費 | 円 |
| 借入れ・分割払いの返済 | 円 |
| 介護者世帯の毎月の不足額 | 円 |
親の家計が黒字でも、介護する子どもの家計が赤字になることがあります。
反対に、介護者には収入があっても、親の年金だけでは施設費や在宅介護費を払えない場合もあります。
相談窓口では、「家族全体でいくら足りないか」だけでなく、誰の家計に不足が出ているかを伝えてください。
介護費には、サービス代以外のお金も入れます
介護保険サービスの自己負担額だけを見ていると、実際に家計から出ていく金額と合いません。
介護に伴って増えやすい支出
- デイサービスや訪問介護などの利用者負担
- ショートステイや施設の食費・居住費
- 紙おむつ、清拭用品、介護食などの日用品
- 通院や施設面会の交通費・駐車場代
- 介護保険の対象外となる家事・見守りサービス
- 住宅改修や福祉用具の自己負担
- 親の家と自宅を行き来する交通費
- 介護のために購入した寝具や家電
- 仕事を休んだことによる収入減
「介護サービス費は月2万円」と思っていても、交通費、日用品、食事、収入減を加えると、家族全体への影響が月5万円を超えることがあります。
相談時には、介護保険の請求書だけでなく、直近1か月に介護のために使った現金やカード支払いも書き出します。
ケアマネジャーには、払える金額まで伝えてよい
担当ケアマネジャーがいる場合、体調やサービス内容だけを伝え、家計の苦しさを隠してしまう人がいます。
しかし、計画どおりの費用を払えないなら、そのケアプランは家庭にとって続けられる計画ではありません。
伝え方の例
「現在のサービス内容だと、保険外費用も含めて月4万円ほどかかっています。私も仕事を減らし、自宅の生活費が足りなくなりました」
「介護の安全は保ちながら、月の自己負担を3万円以内に近づける方法がないか見たいです」
「サービスを単純に減らすだけでは私が仕事へ行けなくなります。家族の収入も含めて組み直したいです」
「高額介護サービス費など、申請できていない負担軽減がないかも知りたいです」
ケアマネジャーが生活費の制度をすべて決定するわけではありません。
それでも、利用中のサービスを見直したり、地域包括支援センターや自治体の担当窓口へつないだりする入口になります。
サービスを減らす前に、負担軽減制度を使えているか見ます
介護費が高いからと、デイサービスやショートステイを急に減らすと、家族が仕事を休む日が増え、かえって収入が減る場合があります。
まず、現在の自己負担に使える制度がないかを確かめます。
| 制度・見直し | 主な内容 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 高額介護サービス費 | 介護サービスの月々の利用者負担が所得区分ごとの上限を超えた場合、超えた分が支給される仕組み | 市区町村の介護保険担当 |
| 施設の食費・居住費の負担軽減 | 所得・資産等が一定以下の場合、介護保険施設やショートステイの食費・居住費に負担限度額が設けられる仕組み | 市区町村の介護保険担当 |
| 高額医療・高額介護合算制度 | 同じ医療保険の世帯で医療と介護の自己負担が高額になった場合、年単位で負担が軽減される仕組み | 医療保険者、市区町村 |
| ケアプランの見直し | 利用回数、時間、サービスの組み合わせを生活と家計に合わせて再検討する | 担当ケアマネジャー |
高額介護サービス費は、所得に応じた月額上限を超えた自己負担が支給対象となります。ただし、食費・居住費や福祉用具購入費など、上限計算に含まれない費用があります。施設の食費・居住費に関する負担軽減も、所得・資産等の要件があり、市区町村への申請が必要です。
「介護費が高い」と伝えるときは、介護サービス自己負担と、食費・居住費・日用品などを分けてください。
生活費の窓口では、親の介護状況も隠さず伝えます
自立相談支援機関へ行くとき、「家賃が払えない」「生活費が足りない」だけを伝えると、赤字の原因が見えにくくなります。
介護のために勤務時間を減らしたこと、親の支払いを立て替えていること、サービスを減らすと仕事へ行けないことも話してください。
窓口での伝え方
「手取りが以前は月25万円でしたが、親の介護で勤務を減らし、現在は19万円です」
「親の介護費と交通費を月3万円ほど立て替えています」
「自分の家の家賃と生活費を払うと、毎月5万円ほど不足します」
「介護サービスを減らすと働けないため、介護と家計を同時に組み直したいです」
生活困窮者自立支援制度では、生活全般の相談、家計の立て直し、仕事や住まいに関する支援などが行われています。貯金が完全になくなった人だけを対象にした相談ではありません。
窓口へ持っていくのは、完璧な家計簿でなくて構いません
親について分かるもの
- 年金などの月収
- 預貯金のおおよその残高
- 介護保険負担割合証
- 介護サービス利用票・請求書
- 医療費・薬代
- 施設やショートステイの請求書
- 家賃、住宅費、光熱費
介護する家族について分かるもの
- 給与明細や年金額
- 家賃・住宅ローン
- 食費・光熱費・通信費
- 税金・社会保険料
- 借入れやカード返済
- 介護で立て替えた支出
- 仕事を減らした時期と減収額
最初の相談メモ
| 介護される人 | 母・父・配偶者・その他 |
|---|---|
| 現在の介護状態 | |
| 利用中のサービス | |
| 介護にかかる月額 | 円 |
| 親本人の月の不足額 | 円 |
| 介護者世帯の月の不足額 | 円 |
| 最も近い支払期限 | 年 月 日 |
| 今日聞きたいこと |
金額が正確に分からない欄は「約3万円」「通帳を見ないと不明」で構いません。
分からないことも、支援者が次に調べるための情報になります。
「どこかへ電話してください」で終わったときの聞き返し方
複数の問題があると、別の窓口を案内されることがあります。
そのこと自体は、たらい回しとは限りません。
ただし、窓口名だけ聞いて電話を切ると、次の場所でまた最初から説明することになります。
その場で聞きたいこと
- 次の窓口名と担当部署
- 電話番号と受付時間
- 何について相談する窓口なのか
- 予約が必要か
- 本人を連れていく必要があるか
- 持参する書類
- 現在の相談内容を引き継いでもらえるか
聞き返す会話例
「次の窓口へは、介護費と生活費のどちらを相談すると伝えればよいですか」
「私からもう一度すべて説明する形でしょうか。相談内容を共有してもらうことはできますか」
「今月末の家賃が不足しそうです。予約日まで待ってよい状態かも教えてください」
「親本人は外出が難しいのですが、まず家族だけで相談できますか」
次の行動が分かるまで聞くことは、迷惑ではありません。
介護で仕事を休む前に、勤務先の制度も同時に見ます
介護サービス費を節約するため、家族が仕事を休んで介護を引き受けることがあります。
しかし、給与が減り、社会とのつながりも失われると、長期的には家計を立て直しにくくなります。
退職を決める前に、勤務先へ次の制度や働き方を尋ねます。
- 介護休暇
- 介護休業
- 短時間勤務や時差出勤
- 残業免除・制限
- 在宅勤務の可否
- 社内の介護相談窓口
- 介護休業給付の手続き
雇用保険の介護休業給付は、要件を満たす介護休業について、同じ対象家族につき通算93日を限度に3回まで支給されます。給付額は原則として休業開始時賃金日額に支給日数と67%を掛けて計算され、賃金の支払い状況等によって減額・不支給となる場合があります。
介護休業は、家族がすべての介護を長期間担うためだけの休みではありません。
要介護認定の申請、ケアマネジャーとの面談、サービス導入、家族分担の調整など、今後仕事と介護を両立する体制を作る期間として使う考え方もあります。
社会福祉協議会の貸付は、給付金とは分けて考えます
生活費が不足すると、社会福祉協議会の貸付制度を案内される場合があります。
生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯などを対象とし、総合支援資金、福祉資金など複数の資金があります。介護サービスを利用するための費用が対象となる場合もあります。相談先は市区町村の社会福祉協議会です。
ただし、貸付は返済を前提とするお金です。
申請すれば必ず借りられるものでも、当日すぐ受け取れるものでもありません。
貸付を考える前に聞きたいこと
- 給付や負担軽減制度を先に使えないか
- 何の費用を借りるのか
- 返済は何の収入から行うのか
- 毎月赤字のまま借入れだけ増えないか
- 審査や入金までにどの程度の手続きがあるか
- 自立相談支援機関と一緒に家計を見てもらえるか
今月の不足を借入れで埋めても、来月も同じ額が足りなければ返済負担が加わります。
貸付だけを単独で申し込むより、家計改善と一緒に検討してください。
親の年金や預金を使う場合は、親の家計として記録します
子どもが親の介護費をすべて立て替えている一方で、親の年金が口座に残ったままという場合があります。
親本人が内容を理解し同意できるなら、親自身の医療費、介護費、生活費は、基本的に親の収入や資産から支払うことを検討します。
ただし、親名義の口座を、介護する家族の生活口座のように扱わないでください。
残しておきたい記録
- 引き出した日
- 金額
- 介護サービス、医療、日用品などの使途
- 立て替えた人
- 領収書
- 親本人へ説明した内容
親の判断力が低下し、金額や支払いの意味を理解するのが難しい場合は、家族判断で多額の引き出しを続けず、地域包括支援センターや取引金融機関へ状況を伝えます。
兄弟姉妹には、「手伝って」より不足額と役割を示します
介護している人が一人で費用を負担していると、「兄弟は何もしてくれない」という気持ちが強くなります。
一方、離れて暮らす兄弟は、実際にいくら不足しているのか分からない場合があります。
共有する数字
- 親の月収
- 親の通常生活費
- 介護・医療費
- 親の毎月の不足額
- 介護者が立て替えた額
- 介護者の収入減
- 申請中・検討中の制度
兄弟への伝え方
「母の年金は月14万円で、生活費と介護費が月16万円です。私が交通費を含め月2万5,000円ほど負担し、仕事も減らしています」
「全員が同じ金額を出すというより、月額負担、通院同行、手続きのどれを担当できるか話したいです」
「高額介護サービス費と家計相談を申請し、それでも残る不足額を見てから分担を決めたいです」
過去に誰が親から多く援助を受けたかという話を始めると、現在の支払いから離れてしまいます。
まず今後3か月の費用と役割を決めます。
親が公的窓口を嫌がるときは、生活を取り上げる話にしない
親が「役所の世話にはなりたくない」「家族で何とかすればよい」と拒むことがあります。
その背景には、生活保護を勧められるのではないか、施設へ入れられるのではないか、貯金をすべて調べられるのではないかという怖さがあるかもしれません。
伝え方の例
「施設へ入れる相談ではなく、今の家で続けられるサービスと費用を聞きたいんだ」
「申請すると決めるのではなく、使える制度があるか話を聞くだけにしよう」
「お母さんのお金を取り上げたいのではなく、私の生活費まで足りなくなっているので、二人とも無理をしない方法を探したい」
本人が窓口へ行けなくても、一般的な制度説明や家族自身の負担について、家族だけで相談できる場合があります。
個別の申請や本人の情報確認には同意・委任等が必要なことがあるため、予約時に尋ねてください。
今日の食費や住まいが危ないときは、通常の予約を待たない
次の状態なら、「介護相談の予約が来週だから」と待たず、自治体や福祉事務所へ当日の状況を伝えてください。
- 今日・明日の食料がない
- 家賃を滞納し、退去を求められている
- 電気・ガス・水道が止まる予定がある
- 必要な医療や薬を受けられない
- 親を安全に介護できる人がいない
- 介護疲れから、親や自分を傷つけそうになる
- 親の年金や預金が家族に取り上げられている
生活保護の相談・申請窓口は、住んでいる地域を担当する福祉事務所です。
厚生労働省は、同居していない親族へ先に相談しなければ申請できないわけではなく、持ち家がある場合でも保有が認められることがあるため、まず相談するよう案内しています。
介護される親の生活が苦しいのか、介護する家族の世帯が苦しいのかによって、申請や世帯の考え方は異なります。
自分で対象外と決めず、現在の生活状況をそのまま伝えてください。
相談後は、「次に誰が何をするか」を一枚へ残します
| 次にすること | 担当する人 | 期限 |
|---|---|---|
| ケアプランの費用を再計算する | ||
| 高額介護サービス費の対象を確認する | ||
| 自立相談支援機関へ家計表を持参する | ||
| 勤務先へ介護休業制度を聞く | ||
| 兄弟へ現在の不足額を共有する | ||
| 次に家計を見直す日 |
窓口へ行っただけで、介護も家計もすぐに解決するとは限りません。
それでも、申請する人、連絡する人、次に集まる日を決めれば、介護者一人の頭の中だけで問題を抱えずに済みます。
今日するのは、すべての制度を調べることではありません
今日は、紙へ次の四つを書いてください。
| 今日書くこと | 内容 |
|---|---|
| 親の介護に毎月かかる金額 | 円 |
| 親本人の毎月の不足額 | 円 |
| 介護する家族の毎月の不足額 | 円 |
| 最も近い支払期限 | 年 月 日 |
そのうえで、親の介護方法が中心なら地域包括支援センターかケアマネジャーへ連絡します。
食費や家賃まで足りないなら、自立相談支援機関へ連絡します。
電話では、上手に説明しようとしなくて構いません。
「親の介護費を払うと、私の生活費が足りません。介護と家計を一緒に相談したいです」
この一文で始められます。
介護費と生活費が重なって苦しいのは、あなたの家計管理が甘いからとは限りません。
介護の支出、立替え、仕事の減収が、別々の場所から少しずつ家計を圧迫していることがあります。
介護の窓口と生活の窓口を一人で行き来するのではなく、最初の窓口で両方がつながっていることを伝える。
今日四つの数字を書き、一回電話できれば、問題を家族だけで抱える状態から抜け出す一歩になります。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」:地域包括支援センターの総合相談、権利擁護、介護予防、家族介護者支援に関する確認先。
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」:自立相談支援、家計改善、仕事・住まいなど生活全般の支援に関する確認先。
- 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」:高額介護サービス費、施設の食費・居住費の負担軽減、高額医療・高額介護合算制度に関する確認先。
- 厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」:介護休業給付の対象、期間、回数、給付額、申請手続に関する確認先。
- 厚生労働省・全国社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度」:低所得世帯、高齢者世帯等への貸付と相談支援に関する確認先。
- 厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」:福祉事務所、親族への相談、持ち家等と生活保護申請の関係に関する確認先。














