国民健康保険料の封筒は、開ける前から重たく感じます
退職して会社の健康保険を抜けたあと、国民健康保険料の通知が届く。自営業やフリーランスで収入が下がったのに、保険料の金額は思ったより高い。年金生活に入った親御さんの分まで、世帯主宛てに請求が来ている。
封筒を開けて金額を見ると、ついこう思ってしまいます。
「え、こんなに払うの?」
「先月までの収入なら払えたけれど、今は無理」
「病院には行きたい。でも保険料を払えないとどうなるの?」
「督促状が来たら、すぐ差し押さえになるのかな」
国民健康保険料は、家賃や食費のように毎日の生活で目に見える支出ではありません。けれど、まとまって通知が来るため、家計にはかなり響きます。
ここで一番避けたいのは、「払えないから見ない」「怖いから置いておく」ことです。保険料の封筒は、机のすみに置いても静かに圧を出してきます。紙なのに、なかなか存在感があります。
ただ、払えない事情があるなら、相談できる可能性があります。大切なのは、納期限を過ぎてから慌てるより、払えない見込みが分かった時点で市区町村の窓口へつなぐことです。
最初に見るのは「金額」ではなく、通知書のどこに何が書かれているかです
国民健康保険料が払えないと思ったら、まず通知書や納付書を広げます。
このとき、細かい計算をすべて理解しようとしなくて大丈夫です。最初に必要なのは、相談窓口へ説明するための基本情報です。
| 見る場所 | 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 通知書の年度 | 何年度分の保険料か | 過去分か、今年度分かを分けるため |
| 納付書の期別 | 何月期分が払えないのか | どの支払いが遅れるかを伝えるため |
| 納期限 | いつまでに払う必要があるか | 督促前か、すでに期限後かを判断するため |
| 金額 | 一括額、各期の金額、未納額 | 分割相談の材料にするため |
| 問い合わせ先 | 保険年金課、国保担当、収納担当など | どこへ連絡するか迷わないため |
| 世帯主名 | 誰あてに請求されているか | 家族分が含まれているかを見るため |
国民健康保険料は、同じ世帯の加入者分をまとめて世帯主宛てに請求されることがあります。世帯主本人が国民健康保険に加入していなくても、同じ世帯に加入者がいれば、被保険者分の保険料が世帯主へ送られる場合があります。
そのため、「自分は国保に入っていないのに、なぜ通知が来るの?」と感じた場合も、まずは通知書を見ながら窓口へ確認してください。
減免・分割・猶予は、同じようで中身が違います
国民健康保険料が払えないとき、「減免してもらえるの?」「分割できるの?」と検索する方は多いと思います。
ただ、この2つは意味が違います。
| 言葉 | 意味のイメージ | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 軽減 | 所得などの基準により、保険料の一部が軽くなる | 低所得世帯、未就学児、制度上の対象に当てはまる場合 |
| 減免 | 災害、失業、所得減少などの事情で、保険料が減額・免除される場合がある | 収入が大きく減った、失業した、災害にあった、生活が著しく困窮している場合 |
| 分割納付 | 一括で払えない金額を、何回かに分けて納める相談 | 全額は無理だが、毎月いくらかなら払える場合 |
| 猶予 | 事情により、納付や徴収について一定の配慮を相談するもの | 一時的な収入減、病気、災害などで今すぐ納付が難しい場合 |
| 納付相談 | 今の家計でどう納めるかを窓口で話すこと | 減免に当てはまるか分からない、分割したい、督促が来ている場合 |
大切なのは、「減免に当てはまらないなら終わり」ではないことです。
減免の対象になるかは自治体が事情を見て判断します。一方で、減免が難しい場合でも、分割納付や納付計画を相談できることがあります。
「減免してほしい」とだけ伝えるより、「今の収入では一括納付が難しいので、減免に当てはまるか、分割納付ができるか相談したい」と伝える方が現実的です。
役所に電話するときは、うまく説明しようとしなくて大丈夫です
国民健康保険料の相談で一番ハードルが高いのは、役所へ電話することかもしれません。
「怒られないかな」
「払えないと言ったら、すぐ差し押さえになるのでは」
「何を聞かれるか分からない」
そんなふうに感じる方もいます。
でも、連絡をしないままにするより、今の状態を早く伝える方が次の対応を考えやすくなります。
電話での会話例
「国民健康保険料の納付書が届いています。今の収入では期限までに全額を払うのが難しいです。減免や分割納付の相談ができるか確認したいのですが、担当の窓口をお願いします」
督促状が届いている場合の会話例
「督促状が届きました。放置したくないのですが、今すぐ全額を払うことができません。今月払える金額と、今後の納付方法を相談したいです」
家族の分も含まれている場合の会話例
「世帯主宛てに通知が来ていますが、家族分も含まれているようです。誰の分がいくらなのか、減免や分割の相談ができるのか確認したいです」
電話では、立派な説明をする必要はありません。必要なのは、通知書の年度、期別、金額、納期限、払えない理由、今払える金額です。
減免を相談したい人は、「なぜ今払えないのか」を資料で見せます
減免は、ただ「高いから安くしてほしい」と伝えるだけでは進みにくいことがあります。
役所側が見たいのは、保険料を払えない事情がどこにあるのかです。
| 事情 | 準備したいもの | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| 失業した | 離職票、雇用保険受給資格者証、退職日が分かるもの | 退職後、収入がなくなり納付が難しい |
| 収入が大きく減った | 給与明細、売上帳、確定申告書、通帳 | 前年より収入が大きく下がっている |
| 事業がうまくいかない | 売上台帳、経費、廃業届、帳簿 | 事業収入が減り、生活費も不足している |
| 病気・けがで働けない | 診断書、医療費明細、休業が分かる書類 | 通院や休業で収入が減っている |
| 災害や火災にあった | り災証明書、被害状況が分かるもの | 資産や住まいに被害があり、納付が難しい |
| 生活費が足りない | 家賃、光熱費、借入返済、食費、通帳の写し | 保険料を払うと生活が成り立たない |
横浜市の案内では、災害その他の事情で保険料を納めることに困っている場合、保険料の減免を受けられる場合があり、必要に応じて収入や資産などを確認することがあるとされています。失職や事業の失敗などで所得が著しく減少した場合、所得割額の減額が案内されています。
もちろん、これは横浜市の例です。お住まいの自治体によって条件や必要書類は異なります。自分の自治体の窓口で「自分の場合は対象になるか」を確認してください。
分割で相談するときは、「払える金額」を少なめに現実的に出します
分割納付を相談するとき、つい無理な金額を言ってしまう方がいます。
「今後は毎月3万円払います」と言ったものの、家賃、食費、光熱費、医療費を払うと続かない。結局、また滞納してしまう。
これでは苦しくなります。
分割相談では、見栄を張らず、生活を壊さずに続けられる金額を出すことが大切です。
| 相談前に考えること | 書き方の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 今月払える金額 | 今月は5,000円なら払える | 食費や薬代を削りすぎない |
| 来月以降の金額 | 毎月1万円なら続けられる可能性がある | 臨時収入を前提にしすぎない |
| 入金予定日 | 給料日、年金支給日、売上入金日 | いつなら払えるかを具体的にする |
| 未納の合計 | 今年度分、過年度分を分ける | 古い滞納がある場合は優先順位を確認する |
| 他の支払い | 家賃、税金、借入返済、電気・ガス | 国保料だけでなく家計全体で見る |
「少しでも払う意思を見せた方がいい」と考えて、生活費を削りすぎる必要はありません。
もちろん、納めるべき保険料です。ただ、無理な約束をして続かないより、現実的な納付計画を相談する方が、結果として立て直しやすくなります。
滞納を放置すると、督促・延滞金・差し押さえの話に進むことがあります
国民健康保険料を払えないとき、「少し遅れるだけなら大丈夫かな」と思いたくなることがあります。
ただ、放置はおすすめできません。
自治体の案内では、納期限までに納付されない場合、督促状や催告書が送付されることがあり、督促状の指定期限までに納付しない場合には延滞金が発生することがあります。また、滞納がある場合は財産調査が行われ、預貯金・給与・生命保険などの財産が差し押さえられることがあるとされています。
| 状態 | 起きる可能性 | 今すること |
|---|---|---|
| 納期限前 | まだ相談しやすい段階 | 払えない見込みなら早めに電話する |
| 納期限を過ぎた | 督促状が届く可能性がある | 納付書が使えるか、延滞金があるか確認する |
| 督促状が届いた | 放置すると次の手続きに進む可能性がある | 記載された窓口へすぐ連絡する |
| 催告書・差押事前通知が届いた | 滞納処分が近づいている可能性がある | その日のうちに相談し、払える金額を伝える |
| 複数の滞納がある | 国保料以外も家計が崩れている可能性がある | 家計改善支援や法律相談も検討する |
怖い話をしたいわけではありません。
ただ、「何も連絡しないまま滞納が続く」状態は、役所側から見ると状況が分かりません。収入が落ちたのか、病気なのか、失業したのか、払う意思はあるのか。こちらから話さないと伝わりにくいのです。
督促状が届いたら、「怒られた手紙」ではなく「今すぐ連絡する合図」と考えてください。払えない事情があるなら、書類を捨てず、通知書を手元に置いて窓口へ電話することが第一歩です。
病院に行くのを我慢しているなら、保険料の相談と医療費の相談を分けます
国民健康保険料が払えないとき、もう一つ大きな不安があります。
「病院に行けなくなるのではないか」
体調が悪いのに、保険料を滞納しているから受診をためらう。薬が必要なのに、窓口負担が怖い。これはとてもつらい状態です。
保険料の滞納と、今すぐ医療を受ける必要があることは、分けて相談してください。
厚生労働省の通知では、国民健康保険料を滞納している世帯主等への措置に関連して、医療を受ける必要があり、医療機関への一時払いが困難である旨の申し出があった場合、市町村の判断により、通常より有効期限の短い資格確認書を交付するなどの対応が示されています。
制度の細かな運用は自治体によって異なります。だからこそ、体調が悪いときは、「保険料を払えていないので病院に行けない」と一人で判断せず、国民健康保険担当窓口に相談してください。
体調が悪いときの伝え方
「保険料を滞納していますが、体調が悪く、医療機関を受診したいです。医療費の一時払いも難しい状況です。どのような手続きや相談ができますか」
保険料の問題と、受診の必要性は別々に話してよいのです。
家族が代理で調べている場合は、本人を責めずに書類を一緒に開きます
この記事を読んでいるのが、ご本人ではなく配偶者や子ども世代のご家族である場合もあると思います。
親御さんの家で、国民健康保険料の督促状を見つけた。配偶者が通知書を隠していた。自営業の家計で、国保料だけでなく住民税や年金も払えていなかった。
こういう場面では、つい強い言葉が出ます。
「なんで放置したの?」
「早く言ってくれればよかったのに」
「こんなになるまで何してたの?」
言いたくなる気持ちは分かります。分かりますが、最初に責めると、本人はさらに隠したくなります。書類たちがまた押し入れに帰ってしまいます。これは避けたいところです。
| 避けたい言い方 | 話し合いに入りやすい言い方 |
|---|---|
| なんで払っていないの? | いつから払えていないか、一緒に見よう |
| 放置するなんて信じられない | 今からできることを確認しよう |
| すぐ全額払って | 今払える金額と、相談できる窓口を分けよう |
| 借りてでも払えば? | 借りる前に、分割や減免に当てはまるか聞こう |
| もう自分では管理できないね | 通知書や支払いを、これからどう見える化するか決めよう |
家族が手伝う場合は、本人の代わりに全部抱えるのではなく、本人と一緒に「通知書、金額、期限、相談先」を見える形にするのが第一歩です。
国保料だけでなく、税金・年金・借入も重なっているなら家計全体を見ます
国民健康保険料が払えないとき、実際には他の支払いも苦しくなっていることがあります。
- 住民税も払えていない
- 国民年金保険料も滞納している
- 家賃や住宅ローンが遅れそう
- クレジットカードのリボ払いがある
- カードローンで生活費を補っている
- 電気・ガス・水道料金も厳しい
- 医療費や薬代を後回しにしている
この状態で、国保料だけをどうにかしようとすると、別の支払いが崩れます。
生活費全体が回っていない場合は、生活困窮者自立支援制度の相談窓口や家計改善支援につながることも考えてください。厚生労働省は、生活困窮者自立支援制度として、住まい、就労、家計の立て直しなどの支援を案内しています。
| 困っている内容 | 相談先の例 | 持っていくとよいもの |
|---|---|---|
| 国民健康保険料が払えない | 市区町村の国保担当・保険年金課・納付相談窓口 | 通知書、納付書、督促状、収入が分かるもの |
| 生活費全体が足りない | 生活困窮者自立支援窓口、社会福祉協議会 | 通帳、家賃、光熱費、収入、支出のメモ |
| 借金返済が重い | 法テラス、弁護士、司法書士 | 借入先、残高、毎月返済額、督促状 |
| 税金も滞納している | 市区町村の納税担当窓口 | 納付書、督促状、払える金額のメモ |
| 医療費が払えない | 国保担当、医療機関の相談窓口、自治体窓口 | 保険証・資格確認書、医療費、通院予定 |
国保料の問題は、単独で起きているようで、家計全体の赤信号であることがあります。信号が赤くなっているのに、アクセルを踏み続けるのは危険です。いったん止まって、支払いの順番を組み直しましょう。
借りて払う前に、役所と家計相談を先に使います
保険料を払えないとき、カードローンやキャッシングで払おうとする方もいます。
一時的には納付できます。けれど、翌月以降に返済が残ります。国民健康保険料は、来月も、次の期も、来年度も続く可能性があります。
つまり、借入で払うと、今月の国保料が来月以降の返済に引っ越すだけになることがあります。しかも、利息という荷物を抱えて。あまりうれしくない引っ越しです。
借りる前に、次の順番で動いてください。
- 納付書・督促状を開く
- 未納額と納期限を紙に書く
- 今払える金額を出す
- 市区町村の国保担当へ電話する
- 減免・分割・納付相談の可否を聞く
- 他の支払いも苦しいなら家計改善支援へ相談する
- 借入や督促が複数あるなら法律相談も検討する
国民健康保険料を払うことは大事です。ただし、生活費をすべて削って払う、医療を我慢して払う、返済できない借入で払う、という形は慎重に考える必要があります。
今日できる一歩は、納付書に「電話する日」を書くことです
国民健康保険料が払えないとき、頭の中だけで考えるほど不安は大きくなります。
だから今日は、次のことだけで構いません。
- 封筒を開ける
- 納付書と督促状を捨てずにまとめる
- 未納額と納期限に丸をつける
- 問い合わせ先の電話番号に線を引く
- 今払える金額を紙に書く
- 電話する日を決める
電話する日を決めたら、納付書の上に大きく書いてください。
「〇月〇日、国保の相談をする」
これだけでも、放置から一歩出られます。
国民健康保険料が払えないことは、恥ずかしいことではありません。収入が変われば、家計も変わります。病気、失業、退職、事業不振、介護、物価上昇。自分だけの努力では追いつかないこともあります。
ただ、通知書を見ないままにすると、選べる方法が少なくなります。
まずは、役所へ「相談したい」と伝える。そこから、減免に当てはまるか、分割で続けられるか、生活費全体をどう立て直すかを一つずつ見ていきましょう。
出典・確認先メモ
- 横浜市「保険料について」では、国民健康保険料のしくみ、軽減・減免、非自発的失業による負担軽減措置、滞納時の督促・延滞金・滞納処分などが案内されています。自治体により運用は異なるため、お住まいの市区町村で確認してください。
- 厚生労働省の通知では、国民健康保険料を滞納している世帯主等への措置に関連し、医療を受ける必要があり、医療費の一時払いが困難である旨の申し出があった場合の市町村判断による対応が示されています。
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」では、生活の困りごとや不安に対する相談支援、住居確保、就労支援、家計改善支援などが案内されています。
- 国民健康保険料の名称、納付方法、減免条件、分割納付、延滞金、滞納処分、必要書類は自治体ごとに異なります。必ずお手元の通知書に記載された担当窓口で最新情報をご確認ください。


















