固定資産税の通知を見ると、「家を持っているのにお金がない」と責められている気がすることがあります
春から初夏にかけて、固定資産税の納税通知書が届く。封筒を開ける前から、なんとなく重い。金額を見て、そっと閉じる。いったん机に置く。そして、できれば封筒ごと見なかったことにしたくなる。
けれど、通知書はなかなか消えてくれません。書類界の居座り名人です。
「年金だけではきつい」
「住宅ローンや修繕費もある」
「親から相続した家だけど、住んでいないのに税金だけかかる」
「空き家の固定資産税を払い続ける意味が分からなくなってきた」
「督促状が来たら、すぐ差し押さえになるのだろうか」
固定資産税は、毎月の食費や光熱費と違い、まとまった金額で届くため、家計に強く響きます。
ただ、ここで一番避けたいのは、「払えないから何もしない」ことです。払えない事情がある場合でも、連絡する前と後では、選べる対応が変わることがあります。
固定資産税で困ったときの相談先は、まず税務署ではなく、納税通知書や督促状に書かれている市区町村の税務担当・納税担当・収納担当です。
「払えない」と思った日が、相談の始めどきです
納期限を過ぎてから相談する方も多いですが、本当は「このままだと払えないかもしれない」と思った時点で連絡してよいです。
市区町村の窓口に伝えるべきことは、完璧な家計簿ではありません。まずは、次の4つです。
| 伝えること | 具体的に見るもの | なぜ必要か |
|---|---|---|
| どの固定資産税が払えないか | 納税通知書、納付書、督促状 | 年度・期別・税額を確認するため |
| いつまでにいくら必要か | 納期限、未納額、延滞金の有無 | 相談の緊急度を判断するため |
| 今いくらなら払えるか | 通帳残高、収入予定、手元資金 | 分割や一部納付の相談材料にするため |
| なぜ払えないか | 収入減、病気、介護、失業、修繕費、借入返済など | 猶予や家計相談の必要性を見てもらうため |
電話をするのが怖いときは、最初の一言だけ決めておくと少し楽です。
「固定資産税の納付書が届いていますが、今の家計では期限までに全額を払うのが難しいです。分割や猶予の相談ができるか確認したいです」
これで大丈夫です。うまく話す必要はありません。窓口にとって必要なのは、名演説ではなく、税目、金額、期限、状況です。
督促状が届いたら、「怒られた手紙」ではなく「今すぐ連絡する合図」です
固定資産税を納期限までに払えないと、督促状が届くことがあります。
督促状を見ると、かなり心臓に悪いです。名前も強い。もう少し柔らかい名前にしてほしいところですが、現実には大事な書類です。
自治体の案内では、納期限を過ぎても市税が納付されない場合に督促状が送付され、督促状の送付後も未納が続くと滞納処分が行われる場合があるとされています。督促状が届いたら、放置せず、記載された問い合わせ先へ連絡してください。
| 届いているもの | 状態の目安 | すること |
|---|---|---|
| 納税通知書・納付書 | まだ納期限前、または期別の支払い前 | 払えない見込みなら、期限前に納税窓口へ連絡する |
| 納期限を過ぎた納付書 | すでに遅れている可能性がある | 延滞金や使える納付書かを確認し、窓口へ相談する |
| 督促状 | 自治体から正式に未納を知らせる段階 | 記載された担当窓口へ早急に連絡する |
| 催告書・差押予告に近い通知 | 滞納処分に進む可能性が高まっている段階 | その日のうちに連絡し、納付計画を相談する |
| 差押書・差押通知 | すでに処分が進んでいる段階 | すぐ自治体へ連絡し、必要なら法律相談も検討する |
「納付済みなのに督促状が届いた」という場合もあります。自治体によっては、金融機関やコンビニ等で納付してから納付データが届くまで時間がかかり、入れ違いで督促状が送付されることもあります。心当たりがある場合は、領収書や支払い履歴を手元に置いて問い合わせましょう。
差し押さえで怖いのは「家だけ」ではありません
固定資産税の滞納で「差し押さえ」と聞くと、多くの方は自宅をすぐ取られるようなイメージを持つかもしれません。
もちろん、不動産が対象になることもあり得ます。ただ、滞納処分で対象になり得る財産は、不動産だけではありません。預貯金、給与、年金が入る口座、売掛金、動産など、状況によって調査・差し押さえの対象が検討される場合があります。
ここで不安を煽りたいわけではありません。大事なのは、「まだ大丈夫だろう」と放置しないことです。
督促状や催告書を放置すると、自治体側から見ると「連絡が取れない」「納付意思が見えない」状態になります。反対に、こちらから連絡し、払える金額や時期を伝えることで、相談の余地が生まれることがあります。
差し押さえを避けるために一番先にすることは、まとまったお金を急いで借りることではありません。まず、納税通知書・督促状を手元に置き、担当窓口へ「全額は難しいが相談したい」と連絡することです。
全額が無理でも、「いくらなら払えるか」を出してから相談します
窓口へ相談するとき、「払えません」だけだと、次の話に進みにくくなります。
一方で、「今月は1万円なら払える」「次の年金支給日に3万円なら払える」「ボーナス月に残りを払える」など、現実的な金額があると、分割納付や納付計画の話がしやすくなります。
| 相談前に出す数字 | 書き方の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 未納額 | 固定資産税 第1期 〇円 | 年度と期別を間違えない |
| 今払える金額 | 今月は〇円まで | 生活費をゼロにしてまで出さない |
| 次の入金予定 | 年金、給料、売上、退職金など | 確実性の低い入金を前提にしすぎない |
| 毎月払える金額 | 月〇円なら継続できる | 食費・医療費・家賃を削りすぎない |
| 一時的に苦しい理由 | 病気、失業、介護、修繕費、収入減 | 資料があれば持参する |
「分割にしてください」と一方的に決めるのではなく、「今の家計では一括納付が難しいため、どのような納付方法が相談できるか確認したい」と伝える方が現実的です。
自治体によって、分割納付、納付計画、徴収猶予、換価猶予などの扱いは異なります。申請書や資料が必要になる場合もあります。
たとえば横浜市の市税の徴収猶予制度では、一定の要件がある場合、申請により1年以内の期間に限り徴収猶予が認められる場合があると案内されています。猶予が認められると、新たな督促や差押え、換価などの滞納処分が行われないこと、延滞金の全部または一部が免除される場合があることも示されています。
ただし、これは自治体ごと、事情ごとの判断です。「誰でも必ず猶予される」とは考えず、まずは自分の自治体に確認してください。
固定資産税が払えない理由は、家そのものにある場合もあります
固定資産税の支払いが苦しいとき、原因がその年の出費だけとは限りません。
家や土地を持ち続けること自体が、今の家計に合わなくなっている場合があります。
| 状況 | 起きやすいこと | 考えたいこと |
|---|---|---|
| 年金生活で自宅を所有している | 収入は減ったのに税金・修繕費は続く | 固定資産税、修繕費、保険、管理費を年間で見る |
| 親から相続した空き家がある | 住んでいないのに税金と管理費がかかる | 売却、賃貸、管理、解体、相続人の分担を考える |
| 共有名義の不動産がある | 誰が払うかで家族間でもめやすい | 代表者だけで抱えず、共有者で分担を話す |
| 住宅ローンも残っている | ローンと固定資産税の両方が重い | 金融機関への返済相談も含めて見る |
| 土地はあるが現金収入が少ない | 資産はあるのに生活費が足りない | 不動産の活用・売却・相続対策を検討する |
固定資産税を毎年払えない状態が続く場合、今年の納付だけでなく、「この不動産を持ち続けられるのか」も考える段階かもしれません。
ただし、家や土地を急いで売る、親族に名義を移す、借入で一気に払う、といった判断は慎重に行ってください。不動産、税金、相続、住宅ローンが絡むため、後から戻しにくい判断になることがあります。
親の家や空き家の固定資産税を、子どもが払っている場合
この記事を読んでいる方の中には、ご本人の自宅ではなく、親御さんの家や相続した空き家の固定資産税で困っている方もいると思います。
親御さんは年金生活で払えない。兄弟姉妹は関心が薄い。納税通知書は代表者である自分に届く。気づけば、自分だけが毎年払っている。
これはかなりしんどい状態です。
この場合は、「親のためだから」「長男だから」「近くに住んでいるから」と一人で抱えない方がよいです。
| 見ること | 具体的な確認 | 家族で話すこと |
|---|---|---|
| 納税義務者・共有者 | 誰の名義か、共有になっているか | 実際に誰が負担するのか |
| 通知書の送付先 | 代表者に届いているだけか | 他の相続人や兄弟にも共有する |
| 毎年の維持費 | 固定資産税、火災保険、修繕、草刈り、管理費 | 年間総額をどう分担するか |
| 今後の使い道 | 住む、貸す、売る、解体、保留 | いつまで保留するのか期限を決める |
| 親御さんの生活費 | 税金を払うと生活費が足りないか | 公的支援や家計相談も含める |
兄弟姉妹へ伝える会話例
「今年の固定資産税が〇円で、これまで私が払ってきたけれど、今後も一人で負担するのは難しい。親の家をどうするか、税金と管理費を含めて一度話したい」
親御さんへ伝える会話例
「家を残したい気持ちは分かるけれど、固定資産税や修繕費を毎年払うのが苦しくなっている。売るかどうかを今すぐ決める話ではなく、まず維持費を一緒に見たい」
家の話は、思い出や感情が深く絡みます。だからこそ、税金の封筒だけを一人で抱えないことが大切です。
借入で払う前に、支払い先と家計全体を見ます
固定資産税が払えないとき、カードローンやキャッシングで払おうと考える方もいます。
一時的には納付できます。ただ、その後に借入返済が残ります。来年も固定資産税は来ます。家の修繕費や保険料も続きます。
つまり、借入で払うと、今年の固定資産税が来年以降の家計に引っ越してくるだけになる場合があります。しかも利息というお土産付きです。これは、あまり歓迎できない引っ越しです。
借入を考える前に、次の順番で見てください。
| 順番 | すること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 納税窓口に連絡する | 分割、猶予、納付計画の相談余地を確認するため |
| 2 | 今月の生活費を守る | 食費、医療費、家賃、光熱費を削りすぎないため |
| 3 | 通帳とカード明細を見る | 固定費、借入返済、サブスク、保険料を確認するため |
| 4 | 家族や共有者に負担を相談する | 一人で抱える問題ではない場合があるため |
| 5 | 家計相談や法律相談を検討する | 借入や滞納が複数ある場合、整理が必要なため |
固定資産税だけでなく、カード返済、税金、国民健康保険料、住宅ローン、借入返済が重なっている場合は、早めに家計相談や法律相談も検討してください。
窓口へ行く前に、紙袋ひとつに書類をまとめます
相談に行く前から、完璧な資料を作る必要はありません。
まずは、関係ありそうなものを紙袋や封筒にまとめてください。
- 固定資産税の納税通知書
- 納付書
- 督促状、催告書、差押予告に関する通知
- 納付済みの領収書やスマホ決済履歴
- 通帳
- 直近の収入が分かるもの
- 年金振込通知書、給与明細、売上が分かるもの
- 家賃、住宅ローン、光熱費、保険料の明細
- 借入返済、カードローン、リボ払いの明細
- 医療費、介護費、修繕費など大きな支出が分かるもの
- 共有者や相続人がいる場合、その関係が分かるメモ
窓口でうまく説明できるか心配な方は、紙に次のように書いて持っていくとよいです。
「固定資産税〇年度〇期分、〇円が払えません。今月払えるのは〇円です。次の入金は〇月〇日です。分割や猶予の相談ができるか知りたいです」
これだけで、相談の入口としては十分です。
差し押さえ前にできることは、まだ残っています
固定資産税が払えないと、家を持っていること自体を責められているように感じることがあります。
でも、家を持っていることと、今すぐ現金があることは別です。土地や建物はあるのに、生活費や税金を払う現金が足りない。これは珍しい話ではありません。
だからこそ、放置せず、早めに動いてください。
- 納税通知書や督促状を捨てない
- 納期限と未納額を確認する
- 記載された納税窓口へ連絡する
- 払える金額と時期を伝える
- 家計全体の支払いを見直す
- 家族や共有者がいるなら一人で抱えない
- 借入が重なっているなら、家計相談や法律相談も考える
今日やることは、一括で払えるお金を用意することではないかもしれません。
まず、封筒を開ける。金額を見る。問い合わせ先に丸をつける。電話で「相談したい」と伝える。
この順番で十分です。
固定資産税の問題は、見ないほど大きく見えます。けれど、書類を開いて、窓口につなぐと、少なくとも次に何をすればよいかは見えてきます。怖い封筒を、行動のメモに変えるところから始めてみてください。
出典・確認先メモ
- 横浜市「督促状について」では、納期限を過ぎても市税が納付されない場合は督促状が送付され、督促状の送付後も未納が続いた場合には滞納処分が執行されると案内されています。
- 横浜市「市税の徴収猶予制度」では、一定の要件に該当する場合、申請により1年以内の期間に限り徴収猶予が認められる場合があり、認められると新たな督促や差押え、換価などが行われないことなどが案内されています。
- 国税庁「納税の猶予の効果」では、猶予期間中の処分に関する考え方が示されています。地方税である固定資産税については、市区町村の案内を必ず確認してください。
- 固定資産税の納付方法、分割相談、猶予、延滞金、滞納処分の運用は自治体によって異なります。お手元の納税通知書・督促状に記載された担当窓口で最新情報を確認してください。


















