冷蔵庫を開けると、いつもの冷気が感じられない。
牛乳はぬるく、冷凍庫の氷も少し溶けています。電源を入れ直しても、低い音がするだけで冷えません。
年金が入るのは来週です。
通帳には多少の蓄えがあるものの、来月は固定資産税と通院費の支払いもある。買わなければ生活できない。でも、十万円を超える買い物をその日に決めるのは怖い。
家電が壊れたときに難しいのは、機種選びだけではありません。
修理を待てるのか。最安商品でよいのか。処分費はいくらか。貯金から出すのか、分割にするのか。いくつもの判断を、生活が止まった状態で求められます。
だからこそ、最初から商品を探すのではなく、今日止めなければならない危険と、数日考えられる買い物を分けます。
焦げたにおい・煙・異常な熱があれば、値段を調べる前に使用を止めます
家電が動かないだけで、発煙や異臭がなく、電源コードにも異常が見られない場合は、取扱説明書に沿って電源や設定を確かめる余地があります。
一方、次の状態では、何度も電源を入れ直さないでください。
- 焦げたようなにおいがする
- 煙、火花、異常な音が出ている
- 電源プラグやコードが熱い、変色している
- 家電本体やコンセント周辺が異常に熱い
- 洗濯機や冷蔵庫から漏れた水が電源付近まで達している
- エアコンが意図せず止まり、異音や水漏れも起きている
安全に触れられる状態なら電源を切り、プラグを抜きます。煙や火が出ている、コンセントへ近づくこと自体が危険な場合は、無理に触らず119番を優先してください。
延長コードの使用や、電源コードを自分でつなぎ直す修理も避けます。特にエアコンは消費電力が大きく、不適切な配線や延長コードが発熱・発火につながることがあります。
「とりあえず動けば使い続ける」ではなく、異臭・煙・異常発熱があれば使用中止です。修理費を惜しんで火災や漏電の危険を抱えないようにします。
冷蔵庫・エアコン・洗濯機では、待てる時間が違います
壊れた家電によって、今日中に必要な対応は変わります。
冷蔵庫が冷えない場合
扉の開閉を減らし、肉、魚、乳製品、作り置きなど温度管理が必要な食品を、保冷剤入りのクーラーボックスや家族宅の冷蔵庫へ移します。
食品は、見た目やにおいだけで安全を判断できないことがあります。十分に冷えていたか分からない生ものや調理済み食品を、「もったいないから」と無理に食べないでください。
真夏にエアコンが動かない場合
高齢者は屋内でも熱中症になることがあります。暑さが強い日に冷房が使えないなら、修理業者を待つ間も、家族宅、公共施設、商業施設など涼しい場所へ移動します。
頭痛、吐き気、強いだるさ、意識がはっきりしない状態があれば、買い替え手続きより救急対応を優先してください。
洗濯機が使えない場合
水漏れがなければ、数日間はコインランドリーや家族の洗濯機を利用し、修理と買い替えを比較できます。水漏れがある場合は蛇口を閉め、床や電源周辺の安全を先に確保します。
同じ故障でも、代わりの手段があるかによって、考えられる時間は変わります。
修理か買い替えかは、使用年数だけで決めません
「十年使ったら買い替え」と一律に決める必要はありません。
修理できるかどうかは、故障箇所、部品の在庫、メーカーの対応状況によって異なります。補修用部品の保有期間は製品やメーカーごとに決められ、一般に製造終了時から数えます。
購入店またはメーカーへ連絡するときは、家電に貼られた表示を見て、次の内容を伝えてください。
- メーカー名
- 型番
- 製造年または購入年
- 現在の症状
- 表示されているエラー番号
- 異音、異臭、水漏れの有無
- 保証書や長期保証の有無
そのうえで、四つの数字を聞きます。
- 出張料と見積料
- 修理した場合の総額
- 修理できるまでの日数
- 修理をしなかった場合にも発生する費用
「修理するか買い替えるか決めていません。出張料、見積料、部品代を含む概算総額と、修理しない場合に支払う金額を教えてください」
購入から数年で、保証が残り、修理費も小さいなら修理が現実的です。
反対に、長期間使用しており、主要部品の交換が必要で、修理費が新品購入額に近い場合は、修理後に別の部品が故障する可能性も含めて買い替えを考えます。
店頭価格ではなく、設置して使えるまでの総額を聞きます
広告で「冷蔵庫7万9,800円」と表示されていても、その金額だけで自宅へ設置できるとは限りません。
購入前に、次の費用を含む総額を出してもらいます。
- 家電本体の価格
- 配送料
- 設置料
- 階段作業や吊り上げなどの追加料金
- エアコンの標準工事費と追加工事費
- 部品、ホース、専用コンセントなどの費用
- 古い家電の収集運搬料金
- 家電リサイクル料金
- 延長保証を付ける場合の費用
「古い家電の引き取りと設置まで含め、当日追加になり得る費用も入れた支払総額を書いてください」
エアコンでは、配管の長さ、室外機の置き場所、専用コンセントの有無などにより、標準工事以外の費用が発生することがあります。
訪問後に金額が上がる可能性があるなら、何が追加料金になるのかを先に聞いてください。
年金生活の買い替え予算は、貯金残高から直接決めません
貯金が100万円あるから、20万円の家電を買っても大丈夫とは限りません。
その100万円の中には、次の年金支給日までの生活費、税金、医療費、住宅修繕費が含まれているかもしれないからです。
家電へ使える上限は、次の順番で出します。
現在の預貯金 - 三か月分の最低生活費 - 一年以内の大きな支払い - 病気や住まいの予備費 = 家電へ使える上限
たとえば、預貯金が120万円あるとします。
- 三か月分の最低生活費:45万円
- 税金、保険、車検など:18万円
- 医療や住宅の予備費:30万円
この場合、家電へ使える上限は27万円です。
必ず27万円まで使ってよいという意味ではありません。生活に必要なお金を残したうえで、どの価格帯まで比較できるかを知るための数字です。
家電を購入した結果、家賃、食費、薬代が足りなくなるなら、その商品は予算内とはいえません。
安い機種と省エネ機種は「購入額+数年分の電気代」で比べます
年金生活では、購入時に数万円安い商品へ目が向きます。
ただし、冷蔵庫やエアコンは長時間使うため、購入価格だけでなく電気代も続きます。
店頭や通販ページにある統一省エネラベルでは、省エネ性能、年間消費電力量、年間の目安電気料金などを比べられます。
同じ大きさ、同じ使用目的の商品同士で、次の式を使います。
本体・設置・処分の総額 + 年間目安電気料金×使う予定年数
年間電気料金が4,000円低い商品でも、本体価格が8万円高いなら、電気代だけで短期間に差額を取り戻せるわけではありません。
反対に、本体価格の差が小さく、毎日長時間使う家電なら、省エネ性能の高い機種が家計に合う場合があります。
電気料金の表示は一定の条件で算出された目安です。住んでいる地域、部屋の広さ、設定温度、使う時間などで実際の金額は変わります。
高機能より、毎日迷わず使えることを優先します
販売員から「せっかく買い替えるなら上位機種を」と勧められることがあります。
しかし、使わない機能へ費用を払う必要はありません。
年金生活や高齢者世帯では、次の点も比べてください。
- ボタンや表示が見やすいか
- 複雑な設定なしで使えるか
- 冷蔵庫の棚へ無理なく手が届くか
- 洗濯物を腰へ負担なく出し入れできるか
- エアコンのリモコンを一人で操作できるか
- フィルターやごみ取り部分を掃除できるか
- 故障時に近くの店やメーカーへ頼めるか
冷蔵庫は、外形寸法だけでなく、玄関、廊下、階段、台所の入口を通れるかを測ります。扉を開ける向きや、放熱に必要なすき間も必要です。
「大は小を兼ねる」と考えて必要以上に大きな機種を買うと、価格だけでなく設置や日々の使い勝手で困ることがあります。
分割払いは、月額ではなく支払総額と終了月を見ます
手元の現金を残すため、分割払いを使う方法もあります。
分割払いそのものが悪いわけではありませんが、「月々3,000円なら払える」だけで決めないでください。
購入前に、次の内容を書面で見ます。
- 現金価格
- 分割手数料
- 支払総額
- 毎月の支払額
- 支払回数と終了月
- 途中で一括返済できるか
クレジットカードのリボ払いは、新しい買い物を重ねると支払残高が増え、支払期間が長くなることがあります。
「これは分割払いですか、リボ払いですか。手数料を含めた総額と、支払いが終わる年月を教えてください」
年金の手取りから、家賃、食費、医療費などを引いた後に毎月いくら残るかを見て、無理なく支払える金額か判断します。
自治体の補助制度は、購入する前に調べます
自治体によっては、省エネ性能の高い冷蔵庫やエアコンなどの購入費に対し、補助金やポイントを出していることがあります。
ただし、対象者、対象機種、購入店舗、申請期間、予算上限は地域ごとに違います。
購入後の申請が認められない制度もあるため、先に調べてください。
市区町村の窓口へは、次のように尋ねます。
「年金生活で冷蔵庫の買い替えが必要です。現在利用できる省エネ家電の補助制度はありますか。購入前の申請が必要かも教えてください」
補助制度が見つからず、冷蔵庫やエアコンを買うと食費、家賃、医療費が払えない場合は、自治体の自立相談支援機関へ生活全体の収支を伝えます。
相談したからといって、家電購入費が必ず支給されるわけではありません。それでも、家計改善、利用できる給付、貸付制度などを含め、今の状況で使える支援を一緒に確認できます。
急いでいるときほど、検索広告の格安修理を即決しません
真夏にエアコンが壊れると、「即日対応」「修理1,500円から」といった広告へ電話したくなります。
しかし、訪問後に高額な修理代を請求された、作業をしたのに直らなかった、業者と連絡が取れなくなったという相談があります。
まず購入店、メーカーの修理窓口、保証会社へ連絡してください。
別の業者へ頼む場合も、作業前に次の内容を聞きます。
- 会社名と所在地
- 出張料と見積料
- 故障原因
- 行う作業
- 修理総額
- 直らなかった場合の料金
- 保証と再修理の条件
金額の説明をせず作業を始めようとした場合は、「総額を聞くまで作業は依頼しません」と伝えて構いません。
説明のない高額請求や、直っていない修理代で困った場合は、契約書、広告画面、領収書を残し、消費者ホットライン188へ連絡します。
冷蔵庫・エアコン・洗濯機は、処分費も購入予算へ入れます
家庭用のエアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機は、家電リサイクル法の対象です。
買い替えの場合は、原則として新しい商品を購入する販売店へ古い家電の引き取りを依頼できます。
処分時には、メーカーなどにより異なるリサイクル料金と、販売店ごとに異なる収集運搬料金がかかります。
「無料回収」をうたう巡回業者へ安易に渡さず、購入店または自治体が案内する方法を使ってください。
配送当日に引き取ってもらえず、後から別料金で処分することにならないよう、購入時に古い家電のメーカー、種類、容量を伝えておきます。
今夜は、壊れた家電の型番と設置場所を撮影します
今夜、購入する機種まで決める必要はありません。
まず、家電に貼られているラベルを撮影してください。メーカー名、型番、製造年が読めるように残します。
次に、設置場所の幅、奥行き、高さと、玄関から設置場所までの最も狭い部分を測ります。
その情報を使い、購入店またはメーカーへ次のように連絡します。
「型番は〇〇、購入から約〇年です。症状は〇〇です。修理した場合の総額と日数、同程度の商品へ買い替えた場合の設置・処分込み総額を比べたいです」
一社目の金額を聞いただけで契約しなくて構いません。
安全を確保し、修理総額と買い替え総額を並べる。生活費を残したうえで使える上限を出す。そこまで進めば、急な故障でも、年金生活を崩さない選び方ができます。


















