結婚式の招待状が届いた翌日に、訃報の電話が入りました
年金が振り込まれたばかりの週、親戚から孫の結婚式への招待状が届きます。
遠方なので、夫婦で出席すればご祝儀だけでなく、新幹線代や宿泊費も必要です。久しぶりに礼服を出してみると、体形が変わって着られません。
どうしようかと話していた翌日、今度は以前親しくしていた知人が亡くなったという連絡が入ります。
香典、供花、移動費。今月は固定資産税の支払いもあります。
通帳の残高を見ながら、胸の中でいくつもの気持ちがぶつかります。
「お祝い事をお金がないという理由で断るのは申し訳ない」
「昔お世話になった人なのに、葬儀へ行かないのは薄情ではないか」
「こちらのときにも包んでもらったから、同じ額を返さなければいけない」
「これから先も続くなら、生活費が足りなくなるのではないか」
冠婚葬祭費が苦しいのは、金額が大きいからだけではありません。
人との関係、これまでの付き合い、世間体、感謝、寂しさまで一つの封筒へ入っているように感じるからです。
だからこそ、その場の罪悪感だけで決めず、暮らしを守る順番を先に作ります。
ご祝儀や香典より先に、来月も必要になるお金を残します
冠婚葬祭は大切な付き合いですが、食費や薬代を削ってまで同じ金額を包み続ける必要はありません。
支出の優先順位は、次のように考えます。
| 優先順位 | 先に確保するもの | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 食費、住居費、光熱費 | 毎日の生活を維持するため |
| 2 | 医療費、介護費、薬代 | 後回しにすると健康や暮らしへ影響するため |
| 3 | 税金、保険料、ローン等 | 期限や契約があり、未払いの影響があるため |
| 4 | 急な入院・修繕に備えるお金 | 予想外の支出を借金で補わないため |
| 5 | 近い家族の冠婚葬祭 | 本人との関係や家族内での役割が大きいため |
| 6 | 親戚、友人、近所、元同僚等の付き合い | 関係の深さと家計の余裕に応じて調整できるため |
内閣府の令和6年度調査でも、高齢者が今後優先的にお金を使いたいものとして、本人や配偶者の医療・介護費が47.5%、食費が43.2%となり、友人等との交際費20.2%を上回っています。人付き合いを軽く扱うという意味ではなく、日々の生活と健康を先に守る考え方は、決して身勝手ではありません。
封筒へ入れる金額だけで、出席できるかを決めないようにします
結婚式や葬儀にかかるお金は、ご祝儀や香典だけではありません。
| 費用 | 具体例 |
|---|---|
| 包むお金 | ご祝儀、香典、供花、供物 |
| 移動 | 電車、飛行機、タクシー、ガソリン、高速道路 |
| 宿泊 | 前泊、後泊、付き添う家族の宿泊 |
| 衣服 | 礼服、靴、バッグ、クリーニング、着付け |
| 身支度 | 美容院、理髪、化粧品等 |
| 留守中の費用 | ペット、家族の食事、介護サービス等 |
| 体への負担 | 長時間移動、階段、待ち時間、翌日の疲労 |
ご祝儀三万円なら出せると思っても、交通費と宿泊を合わせると十万円を超えることがあります。
反対に、式へ出席しなくても、心ばかりのお祝いと手紙を送ることで、総額を抑えながら気持ちを伝えられます。
判断するときは、封筒の中身ではなく、家を出て戻るまでに必要な費用を合計してください。
冠婚葬祭費は、連絡が来てから考えるのではなく一年分を先に取ります
冠婚葬祭は突然重なるため、その月の年金だけで払おうとすると家計が乱れます。
まず、過去二、三年を思い出します。
- 結婚式へ何回出席したか
- 葬儀や法要へ何回参列したか
- 遠方への移動が何回あったか
- 親戚の子や孫への入学・結婚祝いがあったか
- 礼服や靴の買替えがあったか
そこから、一年間に無理なく出せる冠婚葬祭費を決めます。
| 年間予算の例 | 金額 |
|---|---|
| 近い家族の行事 | 60,000円 |
| 親戚・友人・近所の慶弔 | 30,000円 |
| 交通・衣服・予備費 | 30,000円 |
| 年間合計 | 120,000円 |
| 毎月の積立額 | 10,000円 |
これは金額の基準ではなく、家計管理の例です。
月一万円が難しければ月三千円でも構いません。大切なのは、年金が入った口座からその都度出すのではなく、使える上限を見える形にすることです。
優先する相手は、「親戚か友人か」だけでは決められません
同じ親戚でも、普段ほとんど会わない人と、日頃から助け合っている人がいます。
相手との関係を、次の四つで考えます。
| 見ること | 問いかけ |
|---|---|
| 関係の近さ | 日頃どの程度連絡を取り、行き来しているか |
| 自分の役割 | 親、祖父母、きょうだい、世話役など、欠席の影響が大きい立場か |
| 相手から受けた支え | 病気、介護、子育てなどで助けてもらった関係か |
| 出席しない場合の代替 | 手紙、電話、後日の訪問などで気持ちを伝えられるか |
血縁が遠くても、長年支え合った友人を優先することがあります。
反対に、親戚というだけで何十年も交流のない相手の行事へ、生活費を削ってまで出席する必要があるかは考え直せます。
結婚式は、本人との関係と「出席に必要な総額」で分けます
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 自分の子・孫の結婚 | 家族内での役割が大きいため、早めに予算を話し合う |
| きょうだい・親しい親族 | 出席を基本にしつつ、夫婦両方が行く必要があるか考える |
| 甥・姪などの結婚 | 日頃の関係、過去の付き合い、移動費を含めて判断する |
| 友人・元同僚の家族 | 本人との交流が続いているかを基準にする |
| 遠方で宿泊が必要 | ご祝儀、交通、宿泊を合計し、欠席して祝う方法とも比べる |
| 体調や介護の都合がある | 無理に出席せず、早めに事情を伝える |
招待されたことはうれしくても、出席しなければ気持ちが伝わらないわけではありません。
欠席するなら、返事を先延ばしにせず、早めに伝えます。
ご結婚、本当におめでとうございます。
ぜひ伺いたかったのですが、現在は長距離の移動が難しく、今回は欠席させてください。
お二人の門出を心からお祝いしています。ささやかですが、別にお祝いを送らせてください。
「年金生活でお金がない」と詳しく説明しなくても、健康、移動、家庭の事情として簡潔に伝えられます。
夫婦で招かれても、二人とも出席するかは別に考えます
夫婦で招待された場合、二人そろって出るのが当然だと思うことがあります。
しかし、移動や宿泊を含めると負担が大きくなるなら、親族間の事情を確かめたうえで、一人だけ出席する方法もあります。
- 本人との関係が深い方だけが出席する
- 体調のよい方が代表して参列する
- 一人が出席し、もう一人からの気持ちも一緒に伝える
- 夫婦とも欠席し、お祝いと手紙を送る
招待状へ返事をする前に、相手方へ人数変更が可能かを丁寧に尋ねてください。
葬儀は、故人との関係だけでなく遺族とのつながりも見ます
訃報を聞くと、「行かなければ後悔するかもしれない」と感じます。
葬儀では、故人との関係に加え、残された家族と今後も付き合いが続くかを考えます。
| 状況 | 取り得る方法 |
|---|---|
| 親・子・配偶者・きょうだい | 家族内で役割と費用を早めに共有する |
| 日頃から行き来する親族 | 可能なら参列し、難しければ代表者を立てる |
| 長年親しかった友人 | 体調と移動を見て、参列・弔電・後日の訪問を選ぶ |
| 疎遠になった知人・元同僚 | 現在の関係を踏まえ、香典やお悔やみの連絡だけにする |
| 遠方で移動が難しい | 遺族へ事情を伝え、弔電や手紙を送る |
| 家族葬で参列案内がない | 遺族の意向を尊重し、訪問や供物を急がない |
訃報を受けたからといって、すべての葬儀へ行く必要はありません。
体力や家計を考えて参列できないときは、電話、手紙、弔電などで気持ちを伝えられます。
ご逝去の知らせに接し、心よりお悔やみ申し上げます。
遠方で体調にも不安があり、葬儀へ伺うことができません。
失礼をお許しください。ご家族の皆さまがどうかお身体を大切に過ごされますよう、お祈りしております。
家族葬では、「何かしなければ」と先回りしないようにします
家族葬と聞くと、せめて香典や供花を送ろうと考えるかもしれません。
ただし、遺族が香典や供物を辞退している場合もあります。
まず案内の内容を読み、分からない場合は近い親族へ一度だけ尋ねます。
- 参列は近親者だけか
- 香典を受け付けているか
- 供花・供物を辞退していないか
- 後日の弔問を希望しているか
- 遺族へ直接連絡してよい時期か
故人を大切に思う気持ちがあっても、遺族の希望と異なる形で物やお金を送れば、返礼などの負担を増やすことがあります。
「以前もらった金額」と同額を返すことだけが礼儀ではありません
自分の子どもの結婚時に五万円をいただいたから、相手の子どもの結婚にも五万円を包まなければならない。
以前はそう考えていても、当時は現役で、今は年金生活ということがあります。
過去の金額は参考になりますが、現在の収入を超えてまで同額を用意する必要があるかは別に考えます。
| 過去との違い | 今の判断へ入れること |
|---|---|
| 現役から年金生活になった | 毎月自由に使える額が減っている |
| 夫婦二人から一人暮らしになった | 収入と生活費の構造が変わっている |
| 医療・介護費が増えた | 日常生活を守る費用が優先される |
| 交流が少なくなった | 現在の関係に合う形へ変えられる |
| 遠方へ移った | 交通・宿泊の負担が以前より大きい |
いただいたことへの感謝は、金額だけで返すものではありません。
お祝いの手紙、電話、後日の訪問などを添え、現在できる範囲で気持ちを伝えます。
地域や家ごとの慣習は、一人の親戚にだけ聞きます
冠婚葬祭の金額や対応には、地域、宗教、親族内の慣習があります。
何人にも聞くと、違う答えが返ってきて、かえって迷います。
親族の事情をよく知り、金額を広めない人を一人選びます。
今は年金生活なので、これまでと同じ付き合い方を続けるのが難しくなっています。
今回、親族内では夫婦で出席することになっていますか。代表で一人だけ伺う形でも失礼にならないでしょうか。
相場を聞くときも、「皆はいくら包むのか」だけでなく、「欠席する場合はどのようにしているか」まで尋ねます。
付き合いを続ける方法は、お金を多く包むことだけではありません
| 出席・参列以外の方法 | 伝えられること |
|---|---|
| 手紙を書く | 相手との思い出や感謝を言葉にできる |
| 電話をする | 直接お祝い・お悔やみを伝えられる |
| 後日訪問する | 大人数の場を避け、落ち着いて会える |
| 小さな品を送る | 家計に合う範囲で気持ちを表せる |
| 家族の代表者へ託す | 移動費を減らしながら親族として気持ちを届けられる |
| 近況を伝え続ける | 行事のときだけではない関係を保てる |
高い金額を包んでも、その後まったく連絡を取らない関係もあります。
金額を抑えたとしても、相手を思って言葉を届け、その後も交流を続ける方が、関係を残せることがあります。
生活費を削る前に、出席の形と人数を変えます
冠婚葬祭費を減らすと聞くと、包む金額だけを下げようとしがちです。
その前に、総額を下げる方法があります。
| 負担が大きい部分 | 見直せること |
|---|---|
| 夫婦二人分の交通費 | 一人が代表で出席する |
| 宿泊費 | 日帰り、親族宅、会場近くの安い宿を検討する |
| 新しい礼服 | 手持ちの調整、レンタル、家族から借りる |
| 美容・着付け | 自宅で整えられる範囲にする |
| 供花・供物 | 香典と重ねる必要があるかを確かめる |
| 二次会・会食 | 本式だけ参加して早めに帰る |
相手との関係を保ちながら、周辺費用を小さくできる場合があります。
祝儀や香典のために借りないことを、家族のルールにします
手元の現金がないとき、カードのキャッシングやリボ払いを使えば、その場は乗り切れるかもしれません。
しかし、冠婚葬祭の付き合いは一度で終わるとは限りません。返済中に次の連絡が来れば、負担が重なります。
- 香典やご祝儀のために借入れをしない
- 生活費口座が不足する金額は出さない
- 医療用・介護用の貯蓄を取り崩さない
- 高額な支出は夫婦で一晩置いて決める
- 年間予算を超えたら、出席方法を変える
「今回だけ」と借りるより、欠席して事情を伝える方が、その後の暮らしを守れます。
行事が同じ月に重なったら、関係と生活への影響を表にします
結婚式、葬儀、法要、入学祝いなどが同時期に重なることがあります。
頭の中だけで考えると、すべて断れないように感じます。
| 予定 | 関係 | 総額 | 出席の必要性 | 代わりの方法 |
|---|---|---|---|---|
| 孫の結婚式 | 近い家族 | ご祝儀・移動等を合計 | 高い | 夫婦の一人が代表出席 |
| いとこの法要 | 年に一度会う | 香典・移動等を合計 | 中程度 | 欠席して親族へ託す |
| 元同僚の葬儀 | 退職後は交流が少ない | 香典・交通等を合計 | 低め | 弔電や手紙を送る |
| 近所の方の葬儀 | 日頃助け合っている | 香典・移動等を合計 | 関係次第 | 通夜のみ参列する |
優先順位が低いことは、相手の価値が低いという意味ではありません。
今の家計と体力の中で、どの形なら気持ちを届けられるかを選ぶための順番です。
夫婦で意見が違うときは、「失礼かどうか」から離れます
一方は、「これまでの付き合いがあるから、同じ額を出すべき」と考える。
もう一方は、「今の収入では無理だから、全部断りたい」と考える。
どちらが常識的かを争うと、話が進みません。
| 夫婦で決めること | ルール例 |
|---|---|
| 年間の上限 | 冠婚葬祭全体で年12万円まで |
| 一人で決められる額 | 一件1万円までは各自で判断する |
| 二人で話す額 | 交通費を含め3万円を超える場合 |
| 優先する関係 | 子・孫、きょうだい、現在交流のある相手 |
| 使わないお金 | 医療・介護用の予備費には手を付けない |
お付き合いを大事にしたい気持ちは私も同じです。
ただ、今月は医療費と税金もあるので、生活費を削って二人で出席するのは難しいです。
今回は一人が代表で出席し、年間予算の中で収める方法を考えませんか。
子どもが親の冠婚葬祭費を心配している場合は、金額を取り上げないようにします
高齢の親が香典やご祝儀へ多額を使い、子どもが心配することがあります。
ただ、「もう出さなくていい」「そんな付き合いはやめて」と言えば、親はこれまでの人間関係を否定されたように感じるかもしれません。
まず、行事一件の金額ではなく、一年間の総額を一緒に見ます。
- 昨年何件あったか
- 包んだ金額はいくらか
- 交通・宿泊費はいくらか
- 同じ親族へ夫婦で重ねて出していないか
- 親の生活費や医療費が不足していないか
付き合いをやめてほしいわけではないよ。
ただ、香典やお祝いを出した後に食費が足りなくなるのは心配なんだ。
誰を大事にしたいかはお母さんが決めて、その中で一年に使える額を一緒に考えない?
親本人が決められる部分を残しながら、借金や生活費不足につながる使い方だけを防ぎます。
年賀状のように、冠婚葬祭の付き合いも年齢に合わせて変えて構いません
現役時代は、会社、地域、親戚の行事へ広く参加していた人もいます。
退職後も同じ範囲を維持しようとすると、年金家計だけでなく、体力にも負担がかかります。
| これまでの付き合い | 年金生活での変え方 |
|---|---|
| 元同僚全員の葬儀へ参列 | 現在交流のある人を中心にする |
| 親戚の行事へ夫婦で出席 | 代表者一人にする |
| 遠方でも必ず出席 | 移動が難しい場合は手紙や弔電へ替える |
| 過去と同じ金額を包む | 現在の家計に合わせて調整する |
| 供花と香典を両方用意 | 遺族の意向を聞き、一つにする |
付き合いを狭くすることは、人を切り捨てることではありません。
これからも残したい関係へ、無理のない形で気持ちを届けるための見直しです。
年間予算を使い切っても、緊急の連絡は別枠で考えます
年間予算を決めても、近い家族の葬儀など、予定外でも対応したい出来事があります。
そのため、通常の冠婚葬祭予算とは別に、小さな予備枠を持ちます。
| 予算 | 使い道 |
|---|---|
| 通常枠 | 親戚、友人、近所、元同僚等の慶弔 |
| 近い家族枠 | 子、孫、きょうだい等の大きな行事 |
| 緊急予備枠 | 突然の遠方移動、宿泊、礼服等 |
予備枠まで使ったら、生活費から自動的に補充するのではなく、次の行事では欠席や代表出席を考えます。
今日するのは、ご祝儀や香典の相場を検索することではありません
金額の相場を調べ始めると、平均より少ないことが気になり、かえって無理をしやすくなります。
今日は、次の三つを紙へ書いてください。
- 食費、住居費、医療費を払った後に毎月残る金額
- 一年間で冠婚葬祭へ使っても生活が崩れない金額
- 出席を優先したい相手を三段階に分けた一覧
そのうえで、直近の行事について、包むお金、交通、宿泊、衣服を合計します。
年間予算を大きく超えるなら、金額を下げるだけでなく、一人で出席する、欠席して手紙を送る、後日訪問するという方法を比べてください。
冠婚葬祭で本当に伝えたいのは、「あなたの節目を喜んでいる」「亡くなった方を忘れていない」という気持ちです。
食事や薬を削り、後で生活に困るほど包むことが、その気持ちを強くするわけではありません。
まずは次の封筒を用意する前に、今年あといくら使えるかと、出席しなくても気持ちを伝えられる方法を一つ書いてみてください。
出典・確認先メモ
- 内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査」:高齢者が今後優先的にお金を使いたいもの、節約したいもの、葬儀や墓の準備状況等。


















