深夜の電話に出るたび、「まだ家で大丈夫」と言い聞かせている
夜中の2時、枕元のスマートフォンが鳴ります。
母から「玄関の鍵が開かない」と言われ、急いで実家へ向かう。着いてみると、母は外出しようとしていたわけではなく、朝だと思って着替えていました。
翌朝には仕事があります。それでも母を寝かせ、ガスの元栓と薬を見て、自宅へ戻るころには空が明るくなっています。
別の日には、デイサービスから発熱の連絡が入る。冷蔵庫には同じ総菜が何日分も残り、薬の数も合いません。
けれど、本人は言います。
「私は一人で暮らせる」
「施設なんて絶対に嫌」
「子どもが少し手伝えば済むでしょう」
家族も、すぐに決められません。
「施設へ入れたら、親を見捨てたことにならないか」
「もっと家で頑張れたのではと後悔しそう」
「本人が嫌がるのに、家族の都合で決めてよいのか」
その一方で、眠れない日が増え、仕事の欠勤や早退も続いています。親からの電話が鳴るだけで動悸がするようになっているかもしれません。
施設入所を考えることは、親を手放すことではありません。
今の家と今の支援方法で、安全な暮らしを続けられるかを見直すことです。
判断の目安は、要介護度より「家族が埋めている時間」です
要介護3になったら施設、歩けなくなったら施設、と一つの基準で決められるものではありません。
同じ要介護度でも、一人暮らしか夫婦暮らしか、夜間に支援者がいるか、医療的な処置が必要かによって、在宅生活の続けやすさは変わります。
見るべきなのは、本人ができることだけではありません。
その生活が、誰のどのような手助けによって成り立っているかです。
| 生活の場面 | 表面上はできていること | 家族が埋めている支援 |
|---|---|---|
| 食事 | 自分で食べている | 家族が作り置きをし、毎日電話で食べたか確かめている |
| 服薬 | 自分で薬を飲んでいる | 家族が一包ずつ分け、朝夕に飲んだか連絡している |
| 入浴 | 一人で風呂へ入っている | 家族が浴槽を準備し、扉の外で転倒を見守っている |
| 通院 | 定期的に受診できている | 家族が予約、送迎、診察の説明、薬の受け取りを担っている |
| 夜間 | 一人で寝ている | 電話があれば家族が深夜でも駆けつけている |
| 家事 | 自宅で暮らしている | 週末に家族が掃除、洗濯、ごみ出し、買い物をまとめている |
「家族が行けば何とかなる」という状態は、本人だけで在宅生活が成り立っている状態とは違います。
家族の訪問や電話を外したときに、食事、服薬、安全が保てないなら、在宅介護の組み立てを変える時期に来ています。
施設探しを始めたいサインを、危険度ごとに分ける
次の項目に一つ当てはまったから、すぐ入所しなければならないわけではありません。
ただし、複数の項目が重なり、外部支援を増やしても改善しない場合は、施設を具体的に探し始める目安になります。
| 状態 | 見られる変化 | 次の動き |
|---|---|---|
| 今すぐ安全確保を優先したい | 火の消し忘れ、外出して戻れない、転倒後に起きられない、服薬の重複が続く | 一人にしない方法を作り、医療機関やケアマネジャーへ早めに連絡する |
| 数週間以内に住まい方を見直したい | 夜間対応が増えた、排せつ介助が必要、食事や水分が取れない、介護者が眠れない | 在宅サービスを増やす案と施設入所案を並行して検討する |
| 今のうちに施設見学を始めたい | 家族の欠勤が増えた、通院や家事を家族がほぼ代行している、本人が孤立している | 本人の希望を聞き、利用できる施設の種類と費用を調べる |
| 在宅支援を試す余地がある | 昼間だけ一人になる、入浴や食事の一部だけ支援が必要 | 通所、訪問、配食、短期宿泊などを組み合わせて変化を見る |
本人の状態だけでなく、介護する家族の状態も判断材料です。
- 睡眠不足が続いている
- 介護のために欠勤や早退が増えた
- 腰痛などで身体介助が難しくなった
- 親へ怒鳴ることが増えた
- 配偶者や子どもの生活へ影響が出ている
- 介護者自身の通院や休息を後回しにしている
- 「いなくなってくれたら」と考える自分に苦しんでいる
家族が限界に近づいていることは、わがままではありません。
現在の支援方法では、本人と介護者の双方を守れなくなっているサインです。
一人暮らしだけでなく、老老介護にも見えにくい限界があります
親が夫婦で暮らしていると、「二人いるから大丈夫」と思われやすくなります。
しかし、実際には高齢の父が母の着替えや排せつを手伝い、母が転ぶと父も一緒に倒れそうになっていることがあります。
介護している親自身が、次のような状態になっていないかを見ます。
- 介助する側にも持病や歩行の不安がある
- 夜間に何度も起こされ、日中眠っている
- 薬や食事の管理を間違えることが増えた
- 入浴や排せつ介助を一人ではできない
- 外出や通院を諦め、自宅へ閉じこもっている
- 助けを求めず、「自分がやる」と抱え込んでいる
介護する配偶者が倒れると、二人分の生活支援を一度に考えなければならなくなります。
今は何とか暮らせているように見えても、支える側の体調が崩れた場合に代わる人がいないなら、早めに次の住まい方を考えておく必要があります。
入所を決める前に、在宅介護の「すき間」を一度だけ見直す
施設へ移るしかないと思っていても、在宅サービスを組み替えることで、自宅生活を続けられる場合があります。
反対に、サービスを増やしても家族の負担が変わらなければ、入所を考える根拠がよりはっきりします。
| 困っている時間 | 検討できる支援 | 見たい変化 |
|---|---|---|
| 日中一人になる | 通所介護、訪問介護、見守り、配食 | 食事、入浴、孤立への心配が減るか |
| 朝夕の服薬・排せつ | 訪問介護、定期巡回型の支援 | 家族の毎日の訪問を減らせるか |
| 夜間の呼び出し | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護、宿泊を含むサービス | 家族が夜間に駆けつける回数が減るか |
| 介護者が休めない | 短期入所生活介護(ショートステイ) | 家族が眠り、通院や仕事を続けられるか |
| 状態に波がある | 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護 | 通い、訪問、宿泊を柔軟に組み合わせられるか |
ショートステイは、本人の生活機能を支えるだけでなく、家族の身体的・精神的負担を軽くする目的でも利用されるサービスです。
地域によっては、24時間365日の定期訪問や随時通報へ対応するサービス、通い・訪問・宿泊を組み合わせるサービスもあります。対象となる要介護度や提供地域、空き状況は事業所ごとに異なります。
ケアマネジャーには、次のように伝えます。
「施設に入れるべきか迷っています。家族が夜間に週3回対応し、仕事も休んでいます。在宅を続けるなら何を増やせるか、それでも難しい場合はどの施設が候補になるか、両方を考えたいです」
施設を探すことと、今すぐ入所を決めることは別です
家族が施設名を口にしただけで、親が「追い出すつもりだ」と怒ることがあります。
家族自身も、見学へ行けば入所を決めなければならないように感じるかもしれません。
けれど、施設探しの最初の目的は、契約ではありません。
- どのような暮らし方があるか知る
- 本人の状態に合う施設の種類を知る
- 費用を払える範囲を知る
- 空室や待機状況を知る
- 本人が嫌だと感じる理由を具体的にする
- 急な退院や介護者の入院に備えて候補を持つ
体調が大きく崩れてからでは、空いている施設の中から急いで選ぶことになりがちです。
本人が自分の希望を伝えられ、家族にも比較する余力がある時期に情報を集める方が、暮らし方を選びやすくなります。
施設の種類は、名前ではなく「何を支えてほしいか」で選ぶ
老人ホーム、特養、老健、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、似た言葉が並ぶと違いが分からなくなります。
施設名から選ぶのではなく、親に必要な支援から候補を絞ります。
| 施設・住まい | 主な役割 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 常時介護が必要な人の生活を支える介護保険施設 | 新規入所は原則として要介護3以上。要介護1・2は、やむを得ない事情がある場合に限られる |
| 介護老人保健施設 | リハビリや医療・介護を受けながら在宅復帰を目指す | 長く住み続けることを前提とする施設とは役割が異なる |
| 介護医療院 | 長期療養に必要な医療と日常生活の介護を一体的に提供する | 必要な医療処置、看取りへの対応、居室環境 |
| 認知症グループホーム | 認知症の人が少人数で共同生活を送りながら支援を受ける | 要支援2以上などの条件、原則として施設のある市区町村の住民が対象 |
| 介護付き有料老人ホーム | 施設の職員から包括的な介護保険サービスを受ける | 介護量が増えた場合や医療が必要になった場合の対応 |
| 住宅型有料老人ホーム | 住まいと生活支援を利用し、必要な介護は外部事業者と契約する | 介護サービスを増やした場合の費用と夜間体制 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | バリアフリーの住まいで、安否確認と生活相談を受ける | 介護、医療、食事、夜間対応は住宅ごとに内容が異なる |
特別養護老人ホームは常時介護が必要な人の生活施設で、新規入所は原則として要介護3以上です。介護老人保健施設は在宅復帰を目指してリハビリなどを提供し、介護医療院は長期療養に必要な医療と生活上の介護を提供します。
認知症グループホームは、認知症の人を対象とする少人数の共同生活で、要支援2または要介護認定などの条件があります。地域密着型サービスのため、原則として本人が住む市区町村内の事業所を利用します。
有料老人ホームは、介護付きか住宅型かによって介護保険サービスの利用方法が異なります。サービス付き高齢者向け住宅では安否確認と生活相談が必須ですが、介護・医療・食事などの内容は住宅ごとに違います。
親の状態に合う施設名を家族だけで判断せず、ケアマネジャー、地域包括支援センター、病院の医療ソーシャルワーカーなどへ候補を聞いてください。
施設のパンフレットを見る前に、親の一日を書いておく
「評判がよい施設」を探しても、親が必要とする支援と合わなければ暮らしにくくなります。
まず、現在の一日を時間帯ごとに書きます。
| 時間・場面 | 現在の様子 | 施設へ確認すること |
|---|---|---|
| 起床 | 声をかけないと起きない、着替えに介助が必要 | 起床時間や着替えを個別に支援できるか |
| 食事 | むせる、食事量が少ない、好き嫌いが強い | 食事形態、見守り、体重減少への対応 |
| 排せつ | 夜間に何度もトイレへ行く、失敗がある | 夜間の職員体制、排せつ介助の方法 |
| 服薬 | 飲み忘れや二重服用がある | 薬の管理方法、医療機関や薬局との連携 |
| 入浴 | 浴槽をまたげない、入浴を嫌がる | 入浴回数、個浴・機械浴、拒否時の対応 |
| 日中 | 一人でテレビを見る、散歩や園芸が好き | 自由時間、外出、趣味を続けられるか |
| 夜間 | 昼夜逆転、何度も起きる、外へ出ようとする | 夜間の見守り人数、離床・外出時の対応 |
| 医療 | 定期通院、インスリン、吸引などが必要 | 対応できる医療、通院、急変・入院時の扱い |
本人ができないことだけでなく、好きなことも書いてください。
朝は遅く起きたい。新聞を毎日読みたい。食後にコーヒーを飲みたい。園芸を続けたい。
その人らしい生活をどこまで残せるかも、施設選びの条件です。
費用は「月額○万円」だけで判断しない
施設の案内に書かれた月額費用だけを見て入所すると、医療費や介護用品、個別サービスなどが加わり、予想より負担が大きくなることがあります。
| 費用の項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 入居時費用 | 入居一時金、敷金、保証金、償却方法、退去時の返還 |
| 居住費 | 家賃、居室代、管理費、共益費 |
| 食費 | 1日または月額の金額、欠食時の扱い、特別食 |
| 介護サービス費 | 介護保険の自己負担額、加算、自費サービス |
| 医療費 | 診察、薬、通院、訪問診療、付き添い |
| 日用品 | おむつ、洗濯、理美容、消耗品、レクリエーション |
| 個別対応 | 買い物、外出、通院同行、居室への配膳 |
| 退去時 | 原状回復、居室清掃、荷物運搬、解約予告期間 |
特養、老健、介護医療院などの介護保険施設でも、施設サービス費のほかに、居住費、食費、日常生活費などが必要です。
親本人の年金や預貯金から何年間払えるかを見ます。
家族が援助する場合は、「足りない分を何となく出す」のではなく、月額と期間の上限を夫婦や兄弟で決めてください。
見学では、きれいな共有スペースより夜と退去条件を聞く
施設見学では、明るい食堂や季節の飾りに目が向きます。
もちろん雰囲気も必要ですが、暮らし始めたあとに困りやすい部分を具体的に聞いてください。
- 夜間は何人の職員が、何人の入居者を見ているか
- 転倒や外出があったとき、どのように対応するか
- 認知症の症状が強くなった場合も住み続けられるか
- 胃ろう、吸引、インスリンなどに対応できるか
- 通院時に家族の付き添いが必要か
- 救急搬送や入院時に、家族は何を求められるか
- 入院中も居室代や管理費がかかるか
- 介護量が増えた場合の追加料金
- 看取りに対応しているか
- どのような状態になると退去を求められるか
- 苦情や事故があった場合の窓口
- 契約解除や退去の予告期間
有料老人ホームでは、サービス内容や費用、契約条件などを記した重要事項説明書を、契約前に十分な時間を取って説明することが求められています。見学当日に申込金や契約を急がず、重要事項説明書と契約書を持ち帰って読みます。
説明で分からない項目には、その場で丸を付けてください。
あとでケアマネジャーや家族と読み直し、「パンフレットに書かれているサービス」と「追加料金で頼むサービス」を分けます。
親が施設を嫌がるときは、「入るかどうか」から話さない
親にとって施設は、自由を奪われ、家族と離される場所に見えているかもしれません。
「施設へ入って」と結論から話すと、拒否されやすくなります。
まず、本人が今困っている一場面から話します。
| 避けたい言い方 | 話し始める言葉 |
|---|---|
| 「もう一人暮らしは無理だよ」 | 「夜に転んだとき、一人で起きられなかったのが心配なんだ」 |
| 「施設へ入ってもらうしかない」 | 「夜も人がいる住まいを、一度見てみない?」 |
| 「私たちも限界だから」 | 「これからも会いに来たり通院を手伝ったりできる形に変えたい」 |
| 「みんな施設へ入っているよ」 | 「お母さんが続けたいことをできる場所か、一緒に確かめたい」 |
| 「見学だけだから黙って来て」 | 「嫌なところも含めて、見た感想を聞かせてほしい」 |
本人が嫌がっている理由も分けます。
- 家へ二度と戻れないと思っている
- 家族に捨てられるように感じている
- 知らない人との共同生活が怖い
- お金が足りなくなると心配している
- 仏壇、ペット、庭、荷物を残せないと思っている
- 食事や入浴の時間を決められるのが嫌
- 施設で何をするのか分からない
理由が分かれば、「入所を説得する」以外の話ができます。
家の処分は後で考える。仏壇の扱いを一緒に決める。個室を探す。外出しやすい施設を見る。ショートステイで数日だけ過ごしてみる。
本人が選べる部分を残してください。
もの忘れがあっても、本人を話し合いから外さない
認知症があると、家族だけで施設を決めようとすることがあります。
しかし、すべての判断が一律にできなくなるわけではありません。
複雑な契約内容は理解しにくくても、次のような希望を伝えられる場合があります。
- 静かな場所がよい
- 一人の部屋がよい
- 今の病院へ通いたい
- 毎日散歩をしたい
- 家族の近くで暮らしたい
- 男性・女性の介助について希望がある
- 持っていきたい家具や写真がある
「家と施設、どちらがいい?」と大きな選択を迫らず、写真や見学を通じて、具体的な場面ごとに聞きます。
本人がこれまで大事にしてきた暮らし方も、家族や支援者で共有してください。
兄弟の意見が割れたら、「親思いかどうか」を争わない
近くで介護する子どもは「もう施設を考えたい」と言い、遠方の兄弟は「まだ家で大丈夫」と言う。
この違いは、愛情の差ではなく、見ている生活の差かもしれません。
| 曖昧な言い方 | 共有したい事実 |
|---|---|
| 「もう家では無理」 | 「夜間に週3回電話があり、今月は2回実家へ駆けつけた」 |
| 「まだ元気そう」 | 「一人で歩けるが、服薬と食事は家族が毎日確認している」 |
| 「施設はかわいそう」 | 「家では昼間に8時間一人になり、外出は月1回だけ」 |
| 「近くにいる人が見ればいい」 | 「介護者は月4回仕事を休み、夜間の睡眠も取れていない」 |
兄弟には、賛成か反対かだけでなく、次の役割も割り振ります。
- 候補施設を調べる
- 見学へ参加する
- 親の費用を整理する
- 重要事項説明書を読む
- 親へ電話して希望を聞く
- 在宅を続ける場合に定期的な介護を担当する
在宅を希望する人がいるなら、その案を続けるために必要な時間と役割まで出してもらいます。
「家で見たい」という気持ちと、「誰が毎日支えるか」は同じ話ではありません。
退院が迫っているときは、空いている施設だけで決めない
骨折や脳卒中などで入院し、病院から退院日を示されて、突然施設を探すことがあります。
自宅へ戻すのが難しいと感じたら、退院直前まで家族だけで探さず、早い段階で病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援担当者へ伝えます。
伝えたいのは、次の内容です。
- 退院後に一人になる時間
- 家族ができる介助と、できない介助
- 自宅の階段、浴室、トイレなどの環境
- 認知症や夜間の行動
- 必要な医療処置
- 本人が希望する暮らし
- 家族が負担できる費用
リハビリを受けながら在宅復帰を目指すのか、長期的な生活施設を探すのか、医療と介護を継続できる場所が必要なのかで、候補は変わります。
「自宅は無理なので老人ホームを探してください」だけではなく、退院後に必要な支援を具体的に共有します。
入所後の家族の役割も、契約前に聞いておく
施設へ入れば、家族の負担がすべてなくなると思うことがあります。
実際には、施設によって家族に求める役割が異なります。
- 通院への付き添い
- 衣類や日用品の補充
- 金銭管理
- 急変・救急搬送時の対応
- 治療方針の話し合い
- 入院時の手続きや洗濯
- 季節ごとの衣替え
- 施設からの連絡への対応
家族が遠方に住んでいる、平日は仕事で動けない、身寄りが少ない場合は、その事情を契約前に伝えてください。
「家族ができない部分を、どのような有料サービスや外部支援で補えるか」まで聞いておきます。
迷っている間は、一週間だけ「家族がしている介護」を記録する
施設入所を考えるほどなのか、自分でも分からなくなることがあります。
一週間だけ、家族の介護を次の形で記録してください。
| 日時 | 親に起きたこと | 家族がしたこと | かかった時間 | 家族への影響 |
|---|---|---|---|---|
| 月曜7時 | 薬を飲んだか分からない | 電話し、薬の残りを確認 | 20分 | 出勤が遅れた |
| 火曜23時 | 転んで起きられない | 実家へ行き、けがを確認 | 2時間 | 翌日寝不足 |
| 木曜12時 | デイサービスで発熱 | 迎えに行き受診 | 4時間 | 仕事を早退 |
| 土曜 | 食品と洗濯物がたまる | 買い物、掃除、洗濯 | 5時間 | 自分の通院を延期 |
記録には、「親ができなかったこと」だけでなく、「家族が仕事や睡眠をどれだけ動かしたか」も書きます。
この一枚をケアマネジャーへ見せれば、在宅支援を増やすべき時間と、施設入所を検討する理由を共有しやすくなります。
今日決めるのは、入所ではなく「見直す日」です
親を施設へ入れるかどうかを、今日決断しなくても構いません。
今日は、次の三つを決めてください。
- 今の在宅介護で、最も危ない時間帯はいつか
- 家族が今後も続けられない介護は何か
- いつまでに在宅支援と施設候補を比べるか
たとえば、次のように決められます。
「夜間の外出があるため、今週中にケアマネジャーへ連絡する」
「一か月間ショートステイを組み合わせ、家族の睡眠が改善するかを見る」
「来月末までに二つの施設を見学し、本人にも感想を聞く」
「次に転倒して救急搬送された場合は、在宅のまま戻す前に支援体制を再検討する」
担当ケアマネジャーがいなければ、親の住所地を担当する地域包括支援センターへ家族から連絡できます。
地域包括支援センターは市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、介護や生活上の困りごとを聞き、必要な制度やサービスへつなぎます。家族介護者への支援も役割に含まれています。
電話では、こう伝えてください。
「母の施設入所を考える時期か迷っています。本人は自宅を希望していますが、夜間の電話と転倒が増え、家族も仕事を休んでいます。在宅で増やせる支援と、候補になる施設の両方を整理したいです」
施設入所の適切な時期は、家族が完全に倒れた日でも、親が何もできなくなった日でもありません。今の支援方法では、本人の安全と家族の生活を同時に守りにくくなったと気づいたときです。
施設を見学しても、自宅での支援を増やしても、途中で考えを変えられます。
早めに調べることは、親を急いで家から出すことではありません。
親が大事にしている暮らしを聞き、家族が続けられる介護を見極め、急な出来事が起きても選べる道を残しておくことです。
今日は入所を決める日ではなく、一人で抱えた判断を、ケアマネジャーや地域包括支援センターと分ける日にしてください。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム・地域包括支援センターについて」:高齢者の総合相談、家族介護者支援、地域の支援体制に関する確認先。
- 介護サービス情報公表システム「短期入所生活介護」:ショートステイの役割、家族介護者の負担軽減に関する確認先。
- 介護サービス情報公表システム「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院」:各介護保険施設の役割と利用条件に関する確認先。
- 介護サービス情報公表システム「認知症対応型共同生活介護」:グループホームの対象者、少人数での共同生活、地域密着型サービスに関する確認先。
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」:重要事項説明書、契約前の説明、費用・サービス内容の確認に関する確認先。
- 国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」:安否確認・生活相談サービスと、住宅ごとに異なる介護・医療・生活支援に関する確認先。
















