病院へ連れて行っただけなのに、一日が終わってしまいます
朝8時に実家へ迎えに行き、母の保険証と診察券を探す。
病院へ着いて受付を済ませ、検査室と診察室の間を移動し、会計を待つ。処方箋を持って薬局へ行き、帰りに昼食を買って実家へ送る。
自宅へ戻るころには夕方です。
その夜、遠方に住む弟からメッセージが届きます。
「今日の診察、どうだった?」
悪気のない一言だと分かっていても、返事を書く気力が残っていません。
「どうして毎回、私が連れて行く前提なの?」
「近くに住んでいるというだけで、仕事を休むのも当然なの?」
「報告を待つだけなら、弟は何もしていないのと同じでは?」
一方、弟には弟の言い分があるかもしれません。
「遠くに住んでいて平日の付き添いは難しい」
「何をすればよいか、姉から具体的に言われていない」
「口を出すと、普段を知らないのにと言われそう」
通院付き添いの負担が偏るのは、きょうだいの思いやりが足りないからだけではありません。
「病院へ連れて行く」という一つの仕事に見えて、実際には細かな役割がいくつも含まれているためです。
まず、付き添った回数ではなく、誰がどの作業を担っているかを見える形にします。
通院付き添いには、病院へ行く前後の仕事まで含まれています
「今月は姉が3回、弟が1回付き添った」という回数だけでは、実際の負担は分かりません。
| 通院に含まれる仕事 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 予約 | 病院へ電話する、複数の診療科の日程を調整する |
| 事前準備 | 保険証、診察券、紹介状、お薬手帳、質問メモをそろえる |
| 親への連絡 | 日時を何度か伝え、着替えや食事、服薬を促す |
| 送迎 | 実家へ迎えに行き、車・タクシー・公共交通で移動する |
| 院内の付き添い | 受付、検査室への移動、待ち時間、トイレを支える |
| 診察同席 | 症状を補足し、医師の説明や次の方針を聞く |
| 会計・薬 | 支払い、処方箋の提出、薬の受け取りを行う |
| 帰宅後 | 薬を分ける、次回予約を書く、食事や休息を見届ける |
| 家族への共有 | 診察結果、薬の変更、次回予定をきょうだいへ伝える |
| 継続対応 | 検査予約、別の病院への連絡、体調変化の見守りを行う |
診察時間が10分でも、付き添う家族は半日以上を使うことがあります。
きょうだいへ負担を伝えるときは、「私ばかり病院へ行っている」ではなく、予約から報告までの仕事を一つずつ示します。
最初の一か月は、担当表を作る前に実際の負担を記録します
感情がたまってから家族会議を開くと、「私の方が大変」「そちらは近いでしょう」という言い合いになりやすくなります。
まず、直近一か月の通院を一枚にします。
| 記録する項目 | 記入例 |
|---|---|
| 受診日・診療科 | 7月10日・整形外科 |
| 家を出てから戻るまで | 午前8時~午後3時 |
| 付き添った人 | 長女 |
| 事前に行ったこと | 予約変更、母へ前日と当日に電話 |
| 受診後に行ったこと | 薬局、昼食購入、弟へ診察結果を連絡 |
| 立て替えた費用 | 駐車場800円、ガソリン代、昼食代 |
| 仕事・家庭への影響 | 有給休暇を半日取得 |
| 次に必要なこと | 来週までにMRI予約、薬の残数確認 |
記録は、誰かを責める証拠ではありません。
「付き添い以外に何を分けられるか」を見つける資料です。
平等に一回ずつではなく、負担の種類を分けます
きょうだい全員が同じ距離に住み、同じ働き方をしているとは限りません。
月4回の受診を2回ずつにすれば平等に見えますが、遠方の家族が往復に半日かかる一方、近くの家族には毎回の連絡や薬の管理が残ることもあります。
| きょうだいの状況 | 担当しやすい役割の例 |
|---|---|
| 親の近くに住んでいる | 急な受診、実家から病院までの送迎 |
| 遠方に住んでいる | 予約、情報整理、費用管理、土日の受診 |
| 平日に休みやすい | 定期受診、検査、役所・病院の手続き |
| 医療の説明を聞くのが得意 | 重要な診察への同席、質問メモの作成 |
| 車の運転が難しい | 会計、薬、家族への報告、タクシー手配 |
| 家計や事務作業が得意 | 医療費・交通費の記録、領収書管理 |
| 子育てや持病で外出が難しい | 電話連絡、次回予定の共有、外部サービス探し |
近くに住む人が現地対応を多く担うなら、遠方のきょうだいは、予約や記録、費用、サービス探しを引き受けられます。
同じ回数にするのではなく、使う時間・仕事への影響・精神的な負担を含めて分けます。
一回の通院を、八つの役割に切り分けます
| 役割 | 担当する内容 |
|---|---|
| 予定管理 | 予約日、検査前の注意、次回予定を共有カレンダーへ入れる |
| 親への連絡 | 前日と当日に時間、食事制限、持ち物を伝える |
| 送迎 | 車、タクシー、公共交通等で病院まで移動を支える |
| 院内支援 | 受付、移動、待ち時間、トイレ等を支える |
| 診察内容の整理 | 医師へ聞くことをまとめ、説明を記録する |
| 薬の管理 | 処方変更、残薬、飲み方を一覧へ反映する |
| 費用管理 | 医療費、交通費、駐車場代、立替金を記録する |
| 家族への共有 | 診断、次の方針、注意する症状を短く伝える |
一人が八つ全部を担う必要はありません。
たとえば、姉が送迎と診察同席、弟が予約と診察前の質問整理、妹が薬と費用の記録を担当できます。
「病院へ行けないなら何もできない」という状態をなくすことが、分担の第一歩です。
受診の種類によって、家族が同席する必要性は違います
すべての通院へ同じ付き添いを付けようとすると、家族が疲れ切ってしまいます。
| 受診の種類 | 付き添いの考え方 |
|---|---|
| 状態が安定した定期受診 | 本人だけで安全に行けるか、送迎だけでよいかを検討する |
| 検査結果や治療方針の説明 | 本人の希望を聞き、家族の同席を検討する |
| 新しい症状の初診 | 症状の経過を説明できる人が同席すると情報を伝えやすい |
| 薬が大きく変わる診察 | 服用方法や注意点を一緒に聞ける人を決める |
| 手術・処置前の説明 | 病院から求められる家族同席や手続きを事前に聞く |
| 認知機能や聴力に心配がある | 本人の理解を助け、普段の様子を補足できる人を考える |
| 急な体調悪化 | 定期の担当表より、医療上の緊急性を優先する |
家族の同席が必要か、電話での説明や後日の情報共有が可能かは、本人の状態や医療機関の方針によって異なります。
本人の同意を得たうえで、予約時に医療機関へ尋ねてください。
親が話せるうちに、「誰へ何を伝えてよいか」を決めます
きょうだい全員が病院へ連絡すると、医療機関側も誰へ説明すればよいか分からなくなります。
親本人を中心に、主な連絡役と予備の連絡役を決めます。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 主な連絡先 | 病院からの連絡は長女が受ける |
| 予備の連絡先 | 長女につながらない場合は次男へ連絡する |
| 診察同席者 | 通常は交代、重要な説明は本人が希望する人 |
| 家族への共有範囲 | 病名、治療方針、次回予定、生活上の注意 |
| 共有してほしくない内容 | 本人が家族全員へ伝えたくない情報 |
親が「長女にだけ聞いてほしい」と希望するなら、その気持ちも尊重します。
ただし、長女がすべてを抱え込まないよう、診察内容を家族へ伝える作業は別の人に任せるなど、本人の希望を守りながら負担を減らします。
診察前の質問メモは、付き添わないきょうだいも作れます
診察室へ入ると、聞こうと思っていたことを忘れることがあります。
受診前日までに、家族で質問を三つほどに絞ります。
| 医師へ伝えること | 具体例 |
|---|---|
| 前回からの変化 | 歩く速度が遅くなり、今月2回転びそうになった |
| 本人が困っていること | 薬を飲むと午前中に眠くなる |
| 家族が気づいたこと | 食事量が減り、体重が2キロ減った |
| 薬の状況 | 飲み忘れが週2回あり、残薬がある |
| 次回までに知りたいこと | 受診を急ぐ症状、生活上の注意、次の検査 |
遠方のきょうだいが質問をまとめ、当日の付き添い役が診察室で確認する形でも構いません。
質問を多く詰め込まず、親自身が医師へ聞きたいことを先に入れます。
診察後の報告は、長文ではなく同じ書式にします
付き添いから戻った人へ、家族全員が別々に電話をかけると、同じ説明を何度もすることになります。
共有する内容を固定します。
受診日:7月25日
診療科:内科
医師へ伝えたこと:食欲低下、朝のふらつき
医師の説明:血液検査を行い、次回結果説明
薬の変更:血圧の薬を朝から夜へ変更
生活上の注意:立ち上がるときはゆっくり動く
次回:8月8日午前10時
次回までの担当:次男が検査結果の質問をまとめる
医師の説明を推測で補わず、「分からなかった」「次回聞く」と書いて構いません。
共有先は、家族のグループメッセージ、共有ノート、クラウド上の文書など、全員が無理なく使える一つへ絞ります。
薬の情報は、紙か電子版のどちらか一つへ集めます
複数の病院にかかっていると、誰がどの薬を処方したのか分からなくなることがあります。
- お薬手帳を受診のたびに持参する
- 薬が変わったら、家族の共有記録も更新する
- 飲み忘れや残薬を次回の診察・薬局で伝える
- 市販薬やサプリメントを使っている場合も記載する
- 薬を変更・中止する判断は、家族だけで行わない
厚生労働省は、お薬手帳を薬の服用歴や健康情報を管理し、医師・薬剤師と共有するための道具として案内しています。電子版には、薬の情報に加え、血圧や血糖値などを記録できるものもあります。本人が使いやすい方法を選んでください。
スマートフォンを使わない親であれば、紙のお薬手帳を定位置へ置き、付き添う人が変わっても持参できる形の方が続くこともあります。
遠方のきょうだいには、「来られないならお金」だけを求めません
遠方のきょうだいへ費用負担だけを求めると、「お金を払えばよいのか」「介護に参加できていない」と互いにわだかまりが残ることがあります。
現地へ行かなくても担える仕事はあります。
| 遠方でもできること | 具体的な担当 |
|---|---|
| 予約 | 病院、検査、タクシー等の日程を調整する |
| 情報整理 | 質問メモ、病歴、薬、受診結果を更新する |
| 費用管理 | 領収書を集計し、立替金を精算する |
| 外部支援探し | 介護タクシー、訪問介護、地域の移送支援を調べる |
| 休日の付き添い | 検査日を調整し、帰省時に担当する |
| 親への連絡 | 受診前日の確認や、診察後の体調を電話で聞く |
| 現地担当者の休息 | 一定期間帰省し、近くのきょうだいが休める日を作る |
「何かできることがあれば言って」では、現地の人が仕事を考えて頼む負担まで背負います。
遠方側から、「次回予約と領収書の集計を担当する」「月に一度は自分が帰って付き添う」と具体的に提案します。
通院にかかったお金は、その場で払った人の負担にしません
付き添う人は、駐車場、ガソリン、タクシー、食事、薬などを少しずつ立て替えがちです。
一回は少額でも、長く続けば不公平感につながります。
| 記録する費用 | 考え方 |
|---|---|
| 医療費・薬代 | 原則として親本人の費用として記録する |
| タクシー・公共交通 | 親の通院に必要な移動費として扱う |
| 駐車場・有料道路 | 付き添いに必要だった実費を残す |
| ガソリン代 | 実費または家族で決めた一回当たりの額で精算する |
| 付き添い役の食事 | 各自負担か、長時間時のみ親の費用とするか決める |
| 仕事を休んだ損失 | 金銭精算するか、別の役割で調整するか話し合う |
親のお金から支払う場合は、本人の意向を聞き、領収書と記録を残します。
きょうだいの一人が親の通帳を管理していても、立替金と家族自身の支出を混ぜないようにしてください。
働いている人は、年次有給休暇だけで回さない方法があります
通院のたびに有給休暇を使い、残り日数が少なくなっている人もいるでしょう。
育児・介護休業法の介護休暇は、一定の要件を満たす労働者が、家族の通院付き添いや介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの短時間の打ち合わせなどに使える制度です。対象家族が一人の場合は年5日、二人以上の場合は年10日まで、原則として一日または時間単位で取得できます。有給か無給かは勤務先の規定によります。
| 勤務先へ確かめること | 具体例 |
|---|---|
| 介護休暇 | 通院の付き添いに時間単位で使えるか |
| 勤務時間の調整 | 時差出勤、短時間勤務、在宅勤務等が利用できるか |
| 休暇の賃金 | 有給か無給か、社内独自の休暇があるか |
| 申請方法 | 誰へ、いつまでに、どの書類で申し出るか |
| 長期化した場合 | 仕事と介護の体制を整えるため介護休業を使えるか |
介護休業は、対象家族一人につき3回、通算93日まで取得でき、本人がすべての介護を行う期間というより、地域包括支援センターへの相談、サービスの手配、家族の分担づくりなど、仕事と介護を両立する体制を整える期間として案内されています。
勤務先によって社内制度や申請手順が異なるため、就業規則や人事担当へ早めに確認してください。
家族の送迎が難しい日は、通院をやめる前に移動と院内支援を分けます
付き添う家族がいないと、親の受診そのものを延期してしまうことがあります。
まず、何に手助けが必要なのかを分けます。
| 困っていること | 考えられる方法 |
|---|---|
| 自宅から病院まで移動できない | 一般タクシー、介護タクシー、地域の移送支援等を調べる |
| 車への乗り降りが難しい | 介助に対応する事業者へ身体状況を伝える |
| 受付や院内移動が難しい | 家族、訪問介護、保険外の付き添いサービス等を検討する |
| 医師の説明を理解しにくい | 家族の同席や説明方法を医療機関へ事前に相談する |
| 薬の受け取りだけが負担 | 薬局の対応や、利用できる支援をケアマネジャー等へ聞く |
介護保険の訪問介護では、事業所によって、通院を目的とした乗車・移送・降車の介助を提供する場合があります。利用には要介護度やケアプランへの位置付けなどの条件があり、運賃やサービス範囲も事業所によって異なります。
診察室での長時間の付き添いなど、院内支援の一部が介護保険の対象外となり、別契約・別料金になる場合もあります。介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせる場合は、内容、時間、料金を分けて説明し、本人の同意を得ることが求められています。
「介護タクシーを頼めば、診察から薬まで全部任せられる」と思い込まず、次の範囲を一つずつ尋ねてください。
- 家の中から車まで支えてもらえるか
- 車いすや歩行器に対応できるか
- 病院の受付までか、診察終了までか
- 院内の待ち時間も付き添うか
- 運賃と介助料はいくらか
- 介護保険分と自費分はどこで分かれるか
- キャンセル料や待機料はあるか
介護認定がなくても、地域包括支援センターへ家族から話せます
「通院だけの困り事で相談してよいのだろうか」と迷うかもしれません。
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者の総合相談窓口です。介護保険サービスだけでなく、介護予防、地域の支援、家族介護者の負担についても相談できます。
相談するときは、次のように具体的に伝えます。
母には月3回の通院があります。
現在は近くに住む長女が、予約・送迎・診察・薬をすべて担当しています。
仕事を休むことが増え、続けるのが難しくなっています。
送迎だけ、院内付き添いだけなど、地域で利用できる支援を教えてください。
すでに要介護認定を受け、ケアマネジャーがいる場合は、家族の負担も含めてケアプランの見直しを依頼します。
きょうだいへ頼むときは、「もっと手伝って」ではなく選べる仕事を出します
負担が限界に近づくと、「少しは手伝って」「私だけに押しつけないで」と言いたくなります。
気持ちは正しくても、相手は何をすればよいか分からず、防御的になることがあります。
| 伝わりにくい頼み方 | 具体的な頼み方 |
|---|---|
| 「もっと手伝って」 | 「8月8日の内科へ付き添うか、次回予約と薬の一覧更新を担当してほしい」 |
| 「私ばかり休んでいる」 | 「この3か月で有給を4日使った。来月から月1回は交代したい」 |
| 「遠くても家族でしょう」 | 「現地へ来られない月は、予約と費用精算をお願いしたい」 |
| 「何でもいいからやって」 | 「送迎、予約、記録、費用の四つから担当できるものを選んでほしい」 |
| 「今すぐ返事して」 | 「勤務先もあると思うので、日曜までにできる役割を返事してほしい」 |
責めたいのではなく、このまま私一人では続けられないので相談したい。
今は、予約、送迎、診察同席、薬、家族への報告を私が行っている。
来月から、送迎を月一回担当するか、予約と記録を引き受けるか、どちらかお願いできないかな。
「近くに住んでいるのだから当然」と言われたら、距離以外の負担を伝えます
親の近くに住むきょうだいは、急な呼び出しや日常の小さな対応まで担いがちです。
遠方のきょうだいからは、その負担が見えません。
次のように、時間と回数で伝えます。
- 月3回の通院で、合計18時間かかっている
- 通院以外に週2回、薬と食料を届けている
- 急な電話対応が月5回ある
- 仕事を休んだ日がこの半年で6日ある
- 自分の通院や家族行事を延期している
近くに住む人が現地対応を多く担うことはあっても、すべてを無期限に背負う理由にはなりません。
距離で分けられない部分は、事務、費用、帰省時の交代、外部サービスの手配で調整します。
親が「あなたでないと嫌」と言っても、一人だけの担当を固定しません
親が、慣れている長女以外の付き添いを嫌がることがあります。
「弟には病気のことを知られたくない」「知らない人の車には乗れない」と言われれば、長女も断りにくいでしょう。
| 親の言葉 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 「あなたが来て」 | 「次回は弟と一緒に行って、流れを覚えてもらいたい」 |
| 「ほかの子には言わないで」 | 「伝えてよい範囲を決めよう。全部を話す必要はないよ」 |
| 「タクシーは嫌」 | 「一度だけ、私も一緒に乗って使い方を試そう」 |
| 「知らない人は嫌」 | 「担当者と先に家で会えるか聞いてみよう」 |
| 「家族が連れて行くものだ」 | 「家族だけで続けるためにも、できる部分は外へ頼りたい」 |
いきなり担当を交代せず、最初は二人で付き添い、病院の場所や親の様子を共有します。
本人の安心を守りながら、特定の一人しか対応できない状態を少しずつ変えます。
きょうだいが動かない場合は、できない理由と代替案を分けます
頼んでも「仕事が忙しい」「遠いから無理」と言われることがあります。
その事情が本当でも、現地の人がすべてを引き受ける結論にはしません。
| 相手が難しいこと | 代わりに求める役割 |
|---|---|
| 平日の付き添い | 休日受診、予約、診察前の質問整理 |
| 車の運転 | タクシー手配、交通費負担、院内付き添い |
| 頻繁な帰省 | 月一回のまとまった交代、外部支援探し |
| 医療説明を聞くこと | 費用管理、家族への連絡、書類整理 |
| 金銭的な負担 | 定期的な電話、予約、記録更新 |
すべてを拒まれた場合は、返事を待ち続けるより、現在できる家族と外部の支援で続く仕組みを作ります。
そのうえで、「私は月1回まで担当する。それを超える分はタクシー等を利用し、費用は親の資産から支払う案で進める」と、自分が引き受けられる上限を伝えます。
付き添い担当者を決める前に、急な受診の連絡順を作ります
定期受診は分担できても、夜間や休日の体調悪化は予定どおりにいきません。
| 状況 | 連絡・行動の考え方 |
|---|---|
| 生命に関わる症状が疑われる | 家族への順番より、119番や救急相談を優先する |
| 当日中の受診を勧められた | 近くの連絡役から順に連絡し、無理なら移動支援を使う |
| 翌日でもよい症状 | 担当者と医療機関を決め、家族へ共有する |
| 本人だけでは説明が難しい | 普段の様子を知る人が電話等で情報を補えるか確認する |
| 受診後に一人で過ごせない | 帰宅後の見守り担当まで決める |
親の冷蔵庫や電話の近くへ、主な連絡先、かかりつけ医、服用薬、救急時に伝える情報を置いておくと、いつもと違う家族が対応するときにも役立ちます。
分担表は、一度決めたら固定せず三か月ごとに見直します
親の病状、通院回数、きょうだいの仕事や家庭の状況は変わります。
担当を永続的な約束にせず、三か月ごとに次の点を見ます。
- 通院回数や診療科が増えていないか
- 一人へ急な対応が集中していないか
- 付き添う人の仕事・体調に無理がないか
- 親が一人でできる部分を奪っていないか
- 外部へ頼める仕事が残っていないか
- 費用の立替や記録が滞っていないか
- 次の三か月で担当を交代できるか
通院回数が増え、付き添いだけで家族の生活が崩れ始めたなら、分担の工夫だけでは足りない段階かもしれません。
ケアマネジャーや地域包括支援センターへ、親本人の支援と家族の負担を合わせて伝えてください。
今日するのは、きょうだいを説得することではなく一回分の仕事を分解することです
通院付き添いが続くと、「次は誰が行くのか」ばかりを考えてしまいます。
今日は、直近の受診一回について、紙へ次の項目を書いてください。
- 予約した人
- 親へ連絡した人
- 送迎した人
- 診察へ同席した人
- 薬を受け取った人
- 家族へ報告した人
- 費用を立て替えた人
- 次回の準備をする人
一人の名前が何度も並んだら、その紙をきょうだいへ見せます。
そして、「付き添いを同じ回数にしたい」ではなく、こう伝えてください。
「この中から、あなたが継続して担当できる仕事を一つ選んでほしい」
親の通院は、一度だけ助けてもらえば終わる用事ではありません。
だからこそ、誰か一人の我慢ではなく、続けられる小さな役割へ分ける必要があります。
今すぐ完璧な分担表を作れなくても、次回予約を別のきょうだいが取るだけで、偏りは一つ減ります。
まずは次の受診一回を、今までと同じ人だけで抱えない形に変えるところから始めてください。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「介護休暇」:通院付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせへの利用、取得日数・単位。
- 厚生労働省「介護休業」:対象家族一人につき通算93日までの取得と、仕事と介護を両立する体制づくりへの活用。
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」:地域包括支援センターの総合相談と家族介護者支援。
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム・訪問介護」:通院を目的とした乗車・移送・降車の介助。
- 厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱い」:院内介助等の保険外サービス、契約・料金・同意の区分。
- 厚生労働省「電子版お薬手帳」:薬の服用歴や健康情報の記録・共有。
















