役所まで来たのに、受付で何と言えばよいか分からない
財布には数千円しかなく、家賃の支払日も近づいている。
冷蔵庫の中身を数え、電気代の納付書を何度も見直して、ようやく役所まで来た。それでも受付の前に立つと、言葉が出なくなります。
「生活費に困っています」と言えばよいのだろうか。
何にいくら使ったか、細かく責められるのではないか。貯金が少し残っていれば、追い返されるのではないか。家族へ頼れと言われるだけではないか。
後ろには人が待っていて、家計のことを聞かれるのも恥ずかしい。結局、「窓口を間違えました」と言って帰りたくなることがあります。
けれど、相談の最初から事情を順序よく話せる人ばかりではありません。
相談員が最初に知りたいのは、完璧な家計簿でも、困窮したことへの反省文でもありません。今、何が払えず、いつ生活が立ち行かなくなるのかです。
受付では、この一言だけ伝えれば始められます
どの窓口へ行けばよいか分からない場合は、総合案内や福祉担当の受付で、次のように伝えてください。
「生活費が足りず、今月の家賃と食費を払えません。生活全体を相談できる窓口へつないでください」
電話なら、次の言い方で構いません。
「収入が減って生活費が足りません。何の制度を使えるか分からないので、現在の状況から相談したいです」
その日に特に困っていることがある場合は、最初に加えます。
| 現在の状態 | 最初に伝える言葉 |
|---|---|
| 今日食べるものがほとんどない | 「今日の食事を用意するお金がほとんどありません」 |
| 今夜泊まる場所がない | 「今夜過ごせる住まいがありません」 |
| 家賃の期限が迫っている | 「家賃が○円不足し、支払期限は○月○日です」 |
| 電気やガスが止まりそう | 「停止予定の通知があり、期限は○月○日です」 |
| 病気で働けず収入がない | 「病気で働けず、現在の月収は○円です」 |
| 借金返済後に生活費が残らない | 「返済すると家賃と食費が払えない状態です」 |
制度名を知っている必要はありません。
「住居確保給付金を申請したい」と決めて行くより、生活全体を話した方が、別の支援も含めて検討してもらいやすくなります。
相談員へ伝えるのは、四つの数字と一つの理由です
長い経緯を話す前に、次の五項目をメモしてください。
| 伝えること | 書き方の例 |
|---|---|
| 現在使えるお金 | 現金3,000円、預金1万2,000円 |
| 次に入る収入 | 8月15日に給与7万円の予定 |
| それまでの支払い | 家賃5万円、電気代8,000円、食費2万円 |
| 不足する金額 | 8月15日までに約6万3,000円不足 |
| 苦しくなった主な理由 | 勤務日数が減り、手取りが月6万円下がった |
正確な金額が分からなければ、おおよそでも構いません。
「家賃は5万円くらい」「カードの残高は確認できていない」と、分からないことをそのまま伝えてください。
数字を隠して制度を有利にしようとしたり、反対に自分を責めて支出を必要以上に大きく説明したりする必要はありません。
家計簿がなくても、封筒とスマートフォンを持って行けます
相談前に完璧な家計表を作ろうとすると、それだけで疲れて窓口へ行けなくなります。
手元にあるものを、そのまま袋へ入れて持参してください。
- 家賃、公共料金、税金、保険料などの納付書
- 督促状や供給停止の予告
- 給与明細、年金通知、給付金の通知
- 預金残高が分かる通帳やアプリ画面
- 借入先、残高、毎月の返済額が分かる書類
- 退職日や休業期間が分かる書類
- 医療費や薬代の領収書
- 本人確認に使えるもの
すべてそろっていなくても、まず相談できます。
厚生労働省の生活困窮者自立支援制度では、生活上の困り事を受け付け、状況に応じて仕事、住まい、家計などの支援へつなぐ仕組みが設けられています。家計改善支援では、収支の見える化、滞納の解消、給付制度の利用や債務相談へのつなぎなども行われます。
資料が足りなければ、「次回までに何を持ってくればよいですか」と聞けば構いません。
生活が苦しくなった経緯は、日付を三つだけ並べます
相談では、「なぜもっと早く節約しなかったのか」を説明するより、生活が変わった時期を伝える方が役立ちます。
| 時期 | 起きたこと | 家計への影響 |
|---|---|---|
| 4月 | 体調を崩して勤務日数が減った | 手取りが月6万円減った |
| 6月 | 貯金を家賃と医療費へ使った | 預金残高が2万円になった |
| 7月 | 電気代と国保料の納期限が重なった | 家賃を全額用意できなくなった |
話すときは、次のようにまとめられます。
「4月に病気で仕事を休み、収入が月6万円減りました。貯金で補ってきましたが、7月に医療費と保険料が重なり、今月は家賃が3万円不足しています」
長く苦しい生活をすべて一度に説明しなくても、この三段階があれば状況をつかんでもらえます。
支払いごとに、窓口で伝える内容を変えます
| 困っている支払い | 窓口で伝えること | 同時に連絡したい相手 |
|---|---|---|
| 家賃 | 不足額、滞納月数、退去通知の有無 | 家主・管理会社 |
| 電気・ガス・水道 | 停止予定日、未払い額、現在払える額 | 各事業者 |
| 税金・保険料 | 収入が減った時期、納付書の金額 | 自治体の担当窓口 |
| 医療費 | 治療を続けたいこと、今回払えない額 | 病院の会計・相談窓口、健康保険 |
| 借金・カード | 借入先、残高、月の返済額、滞納状況 | 多重債務や法律の相談窓口 |
| 食費 | 次の収入日、家族人数、手元の現金 | 地域の支援団体などを窓口で尋ねる |
自立相談支援機関が、家主や電力会社の支払いを必ず代わりに行うわけではありません。
それでも、どの窓口へ先に連絡するか、家計全体のどこを立て直すかを一緒に考えてもらえます。
「今月だけ」と「毎月足りない」は、はっきり分けて話します
| 不足の形 | 相談で伝えること | 考えたい対応 |
|---|---|---|
| 今月だけ不足する | 不足が生じた一時的な理由と次の収入日 | 支払日の調整、一時的な貸付、給付の対象確認 |
| 数か月だけ収入が減る | 減収が続く見込みと回復予定 | 家賃・保険料などの負担軽減、就労・休業中の支援 |
| 毎月赤字になる | 月の収入と最低限の支出、毎月の不足額 | 家計改善、住居費、働き方、利用できる制度の見直し |
| 借金返済で赤字になる | 借入総額と返済後に残る生活費 | 新たな借入ではなく債務相談との連携 |
毎月4万円不足している状態で、今月分だけ4万円を借りても、翌月に同じ問題が戻ります。
「今月の家賃をどうするか」と「来月以降の赤字をどう減らすか」を、別々に話してください。
窓口で聞かれたくないことほど、先に伝えた方が話しやすい場合があります
相談では、収入、預貯金、家族、住まい、借入などを尋ねられることがあります。
責めるためではなく、利用できる制度や支援の条件を見るための質問です。
答えにくいときは、黙り込まずに理由を伝えてください。
「家族との関係が悪く、援助を頼むことはできません」
「配偶者に借金を知られると暴力が心配なので、連絡方法に配慮してほしいです」
「通帳を持ってきていません。必要なら次回持参します」
「借入総額をまだ把握できていません。一緒に調べる方法を教えてください」
家族へ頼れない事情があるなら、「家族がいる」ことだけで説明を終えず、実際の関係を伝えます。
家賃が危ないときは、住まいを失う前に日付を伝えます
離職や大幅な減収などで家賃を払えない場合、一定の収入・資産・求職活動などの要件を満たせば、住居確保給付金の対象になる可能性があります。
制度には、家賃相当額の支給に加え、家計改善のためにより家賃の低い住宅へ移る必要がある方を対象とした転居費用の支援もあります。要件や支給額は地域や世帯状況によって異なります。
相談では次のように伝えます。
「離職して家賃5万円を払えません。今月分は3万円不足し、まだ滞納はありません。住居確保給付金を含め、住まいを失わないために使える支援を知りたいです」
すでに滞納している場合は、月数と金額、家主から届いた通知も伝えてください。
給付の結果を待つだけでなく、家主や管理会社にも、現在の状況と相談中であることを早めに連絡します。
貸付制度は、今日必ずお金を受け取れる制度ではありません
社会福祉協議会で扱う生活福祉資金貸付制度には、低所得世帯などを対象とした資金があります。
ただし、資金の目的や世帯状況に応じた条件があり、申し込めば必ず借りられるわけではありません。返済の見込みを含む審査があり、決定や入金まで時間を要する場合もあります。
窓口では、「緊急小口資金を貸してください」と制度を決めつけるより、次のように尋ねます。
「8月15日の収入までに食費と公共料金が4万円不足します。貸付を含め、現在の状況で利用できる方法があるか知りたいです」
返済の見込みがないのに、貸付だけで生活を延ばすと、後の負担になることがあります。
給付、減免、支払いの調整、家計改善と一緒に考えてもらってください。
生活保護が頭に浮かんでも、「まだそこまでではない」と隠さなくてよい
収入や資産だけでは最低限の生活を保てず、家賃、食費、医療費を用意できない状態なら、生活保護について尋ねても構いません。
「申請するかまだ決めていませんが、今の収入と資産で対象になり得るか、制度の説明を聞きたいです」と伝えられます。
厚生労働省は、必要な書類がすべてそろっていなくても申請できること、住む場所がない人も申請できること、同居していない親族へ相談してからでなければ申請できないわけではないことを案内しています。
申請を希望する場合は、曖昧にせず次のように伝えます。
「生活保護について説明を受けたうえで、申請を希望します」
制度を利用できるかは、世帯の収入、資産、生活状況などを踏まえて福祉事務所が判断します。
相談した日に支援が決まらなくても、聞くべきことがあります
初回相談では、追加書類が必要になったり、別の担当窓口へ案内されたりすることがあります。
帰る前に、次の五つを書き留めてください。
- 今日分かったこと
- 次に連絡する窓口
- 持ってくる書類
- 次回の日時
- 支払期限までに自分がすること
会話例は次のとおりです。
「今日は制度の対象がまだ決まらないとのことですが、家賃の期限は8月5日です。それまでに、私は誰へ何を伝えればよいですか」
「次回までに必要な書類を、紙に書いていただけますか」
「今日食べるものにも困っています。次の面談までの間に利用できる地域の支援はありますか」
分からないまま帰らず、次の一歩を一つ決めます。
家族が付き添うときは、本人の代わりに全部話さない
親や配偶者が説明を苦手としていると、付き添った家族が最初から最後まで話してしまうことがあります。
しかし、本人が何に困り、何を望んでいるかが分からなければ、支援の方向が家族の希望だけで決まってしまいます。
家族は、次の部分を手伝えます。
- 不足額や支払日をメモする
- 封筒や請求書を分ける
- 相談員の説明を書き留める
- 本人が話しにくい事情を補足する
- 次回の予定を一緒に管理する
最初は本人から、短くても話してもらいます。
「生活費が足りず困っています。詳しい金額は娘がまとめてくれたので、一緒に説明します」
本人が話せないほど体調が悪い、認知機能の低下がある、暴力を受けているなどの事情がある場合は、予約時にその状況を伝えてください。
今日作るのは、立派な家計簿ではなく五行の相談メモです
紙かスマートフォンへ、次の五行を書いてください。
- 現在使えるお金:
- 次の収入日と金額:
- 払えないもの・金額・期限:
- 苦しくなった理由:
- 今日一番聞きたいこと:
たとえば、次のようになります。
「現金と預金は合計1万5,000円。次の収入は8月15日に7万円。8月5日の家賃が3万円不足し、食費も足りない。病気で勤務日数が減った。家賃を失わず今月を過ごす方法を知りたい」
この五行を受付で見せても構いません。
泣いてしまっても、話が前後しても、制度名を知らなくても相談は始められます。
生活費が苦しいとき、最初の役目は、自分だけで解決策を決めることではありません。
今あるお金、次の収入、払えないものと期限を、窓口の人と同じ紙の上に置くことです。
まず明日は、「生活費が足りず、今月を越せません。生活全体を相談したいです」と伝えてください。その一言から、次に連絡する場所と、今日守るべき支払いを分けられます。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」
- 厚生労働省「各種相談窓口・融資・給付制度等」
- 厚生労働省「住居確保給付金」
- 厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」
- 厚生労働省「生活保護制度・生活保護を申請したい方へ」














