電気料金の督促状が届いた。親御さんは一人暮らしを続けたいと言うが、最近は通帳や請求書の管理も心配になってきた。
市役所へ電話したところ、「社会福祉協議会にも聞いてみてください」と言われたものの、名前を聞いただけでは何をしている場所なのか分かりません。
お金を貸してくれるところなのか。高齢者だけが行くところなのか。それとも、生活に困っていることを最初から全部説明しなければならないのか。
電話番号を調べたまま、かけられずにいる方もいるでしょう。
社会福祉協議会は、困りごとを一つの制度へ無理に当てはめる場所ではありません。地域の福祉サービスや公的な支援、民生委員、ボランティアなどとつながりながら、暮らしを立て直す方法を一緒に探す地域の窓口です。
社会福祉協議会は役所の一部署ではありません
社会福祉協議会は、「社協」と呼ばれることがあります。
市役所の中に窓口があったり、自治体から事業を委託されていたりするため、行政機関のように見えることがありますが、社会福祉活動を進めることを目的とした民間の非営利組織です。
市区町村ごと、都道府県ごとに社会福祉協議会があり、地域住民、民生委員・児童委員、福祉施設、医療・教育関係者などと協力しながら活動しています。
市区町村の社会福祉協議会では、地域の生活相談、福祉サービス、配食や見守り、ボランティア活動の支援などが行われています。ただし、取り扱う事業や利用条件は地域によって異なります。
社会福祉協議会は、すべての手続きをその場で決める窓口ではありません。「この困りごとはどこに話せばよいか分からない」という段階でも、地域の相談先を探す入口になります。
社協へ持ち込まれるのは、お金の問題だけではありません
「社会福祉協議会は生活費を借りる場所」という印象を持つ方もいます。
実際には、暮らしの中で起きるさまざまな問題が対象になります。
| 抱えている困りごと | 社協で考えられる支援 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 収入が減り、生活費や支払いが足りない | 生活状況の聞き取り、生活福祉資金の案内、自立相談支援機関などへの接続 | 貸付には条件と審査があり、すぐ現金を受け取れる制度ではありません |
| 高齢の親御さんの食事や見守りが心配 | 配食、見守り、サロン、地域活動、利用できる福祉サービスの案内 | 実施しているサービスは地域によって異なります |
| 障害や病気があり、手続きや日常生活が難しい | 地域の障害福祉サービスや関係機関への接続、生活支援に関する相談 | 医療上の診断や行政サービスの決定は別の機関が行います |
| 請求書の支払いや通帳管理が難しくなってきた | 日常生活自立支援事業の案内、福祉サービス利用の援助 | 利用には本人との契約や一定の条件があります |
| 福祉サービスの対応に納得できない | 事業者との話し合い方の案内、都道府県社協の運営適正化委員会への接続 | 契約や損害賠償などの法律判断は弁護士等の分野になる場合があります |
| 地域で人とつながりたい、誰かを手伝いたい | ボランティア活動、地域サロン、市民活動の案内 | 参加できる活動や募集時期は地域ごとに違います |
一つの家庭に、複数の問題が重なっていることもあります。
たとえば、親御さんの年金だけでは生活費が足りず、請求書の管理も難しくなり、ご家族は遠方に住んでいる。これは「お金」「高齢者」「家族」「金銭管理」が別々の問題ではなく、同時に起きている状態です。
社協は、こうした暮らし全体を聞いたうえで、自分たちの事業で対応するのか、別の窓口へつなぐのかを考える役割を持っています。
生活費に困っていても、誰でもすぐ借りられるわけではありません
社会福祉協議会が関わる代表的な制度に「生活福祉資金貸付制度」があります。
低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯などを対象として、生活や就学、介護サービスの利用などに必要な資金を貸し付ける制度です。資金には総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金などがあります。
ただし、これは生活に困っている方へ無条件で現金を配る制度ではありません。
- 世帯の収入や資産
- 何のために資金が必要なのか
- ほかの制度を利用できないか
- 今後、返済できる見込みがあるか
- 世帯全体をどのように立て直すか
こうした事情を確認したうえで、貸付の可否が判断されます。
すでに借金の返済が苦しく、その返済を別の借入で補いたい場合や、今日明日の食費がない場合などは、生活福祉資金だけで対応できないことがあります。
電話では、最初から制度名を指定しなくても構いません。
「収入が減り、家賃と生活費の支払いが難しくなっています。貸付を受けられるかだけでなく、生活全体について使える制度を教えてほしいです」
この伝え方なら、生活福祉資金だけでなく、自立相談支援機関、家計改善支援、住居に関する支援など、状況に合う窓口を検討してもらえます。
生活福祉資金より先に、家計や仕事の支援を案内されることもあります
生活に困ったとき、「お金を借りればひとまず乗り切れる」と考えることがあります。
けれども、毎月5万円不足している家計へ一度だけ資金を入れても、数か月後には同じ状態に戻る可能性があります。
そのため、地域によっては生活福祉資金の相談とあわせて、生活困窮者自立支援制度の窓口を案内されます。
自立相談支援機関では、家計、仕事、住まいなどの困りごとを聞き、本人の状況に合わせた支援計画を考えます。家計改善支援や就労支援、住居確保給付金などへつながる場合もありますが、事業の実施状況や利用条件は地域によって異なります。
社会福祉協議会が自立相談支援機関を運営している地域もあれば、自治体や別の法人が担当している地域もあります。
「別の窓口を案内されたから断られた」とは限りません。問題に合う担当者へつなぐことも、社協の役割の一つです。
請求書や通帳の管理が難しいときは、日常生活自立支援事業があります
最近、親御さんが公共料金の支払いを忘れるようになった。通帳をどこへ置いたか分からなくなり、必要のない商品を何度も買っている。
ご家族が心配しても、「通帳を預かる」と言えば、親御さんは生活を取り上げられるように感じるかもしれません。
こうした場合に、社会福祉協議会が関わる制度として「日常生活自立支援事業」があります。
認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が十分ではない方が、地域で生活を続けられるよう、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理などを、本人との契約に基づいて支援する事業です。
支援の例には、次のようなものがあります。
- 福祉サービスを利用するための手続きの援助
- 公共料金や家賃など、日常的な支払いの援助
- 年金や福祉手当を受け取るための手続きの援助
- 通帳や印鑑などの預かりに関する支援
何でも代わりに決めてもらえる制度ではありません。原則として本人が利用契約の内容を理解し、契約できることが前提になります。
ご本人の判断能力が大きく低下していて契約が難しい場合は、成年後見制度など別の仕組みを検討することがあります。家族だけで判断せず、まず市区町村社協へ現在の様子を伝えてください。
「母は一人暮らしです。請求書の支払い忘れが増えていますが、会話はでき、自分で暮らしたいと言っています。日常生活自立支援事業の対象になる可能性があるか知りたいです」
この程度の説明から始められます。
「社協と地域包括支援センターのどちらか」で迷う必要はありません
高齢の親御さんについて調べていると、社会福祉協議会のほかに、地域包括支援センター、福祉事務所、自立相談支援機関などが出てきます。
それぞれの主な役割は異なります。
| 窓口 | 主に扱うこと | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 市区町村社会福祉協議会 | 地域福祉、生活福祉資金、見守り、金銭管理支援、ボランティアなど | 生活上の困りごとが複数あり、どこへ話せばよいか分からない |
| 地域包括支援センター | 高齢者の介護、健康、権利擁護、介護予防、家族介護 | 高齢の親御さんの生活、認知症、介護、虐待などが心配 |
| 自立相談支援機関 | 生活困窮、仕事、家計、住まいの立て直し | 収入減、失業、家賃滞納などが重なっている |
| 福祉事務所 | 生活保護を含む行政上の福祉手続き | 収入や資産では最低限の生活を維持できず、生活保護を申請したい |
| 市役所・区役所の担当課 | 介護保険、障害福祉、子育て、国民健康保険、税などの行政手続き | 利用したい制度や必要な申請がはっきりしている |
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防などを支える機関です。生活保護の申請先は、お住まいの地域を担当する福祉事務所になります。
窓口を一度で正しく選べなくても問題ありません。
「高齢の母の金銭管理と生活費の両方が心配です」と社協へ伝えれば、地域包括支援センターや福祉事務所などと連携した方がよいかを考えてもらえます。
社協へ電話するときは、制度名より「今起きていること」を伝えます
社会福祉協議会へ電話するとき、詳しい事情を全部説明する必要はありません。
最初の一言は、次のような形で十分です。
「そちらで扱う内容か分からないのですが、生活について困っていることがあります。担当の方へ相談できますか」
担当者につながったら、次の順番で話します。
- 誰のことで困っているか
- 今、何が起きているか
- いつまでに対応が必要か
- 収入や家族の状況
- 何を知りたいか
たとえば、生活費についてなら、こう伝えられます。
「私と夫の二人暮らしです。夫が入院して収入が減り、来月の家賃が払えない可能性があります。利用できる貸付や生活相談があるか知りたいです」
親御さんについてなら、次のようになります。
「遠方で一人暮らしをしている父が、請求書をためるようになりました。家族が毎週通うのは難しいため、地域で利用できる見守りや金銭管理の支援があるか聞きたいです」
途中で話がまとまらなくなっても構いません。
「何を相談したらよいか自分でも分かっていません」
この言葉も、立派な相談の入口です。
電話の前に、手元へ置くものは多くありません
最初の問い合わせで、すべての書類をそろえる必要はありません。
次のものが分かると、担当窓口を案内してもらいやすくなります。
- 住んでいる市区町村
- 本人と家族の人数、年齢
- 収入の種類と、おおよその金額
- 家賃、光熱費、借入返済など、急いでいる支払い
- 督促状や停止予告に書かれた期限
- 介護認定や障害者手帳などの有無
- これまで相談した役所や機関
分からない項目は空いたままで大丈夫です。
貸付や福祉サービスの利用へ進む場合は、後から収入、資産、世帯状況、本人確認などの書類を求められることがあります。必要書類は制度と地域によって違うため、最初から自己判断で大量にコピーするより、担当者に聞いてからそろえる方が確実です。
ご家族だけで相談してもよい場合があります
親御さんが相談を嫌がる、遠方に住んでいる、電話で説明することが難しい。こうした場合、ご家族から社協へ問い合わせることはできます。
ただし、制度の申請や契約、個人情報の開示まで家族だけで進められるとは限りません。本人の同意や意思確認を求められることがあります。
親御さんへ話すときは、「困っている人として届け出る」という言い方より、生活を続けるための情報を聞くという伝え方が受け入れられやすくなります。
「お金を管理したいわけではないよ。今の家で暮らし続けるために、地域で頼めることがあるか聞いてみたい」
本人が拒否していても、食事を取れていない、電気や水道が止まりそう、虐待や財産被害の疑いがあるなど、安全や生活維持に関わる状況なら、ご家族だけで地域包括支援センターや自治体へ状況を伝えることも検討します。
社協の通常相談を待たない方がよい状態もあります
社会福祉協議会は地域の身近な相談先ですが、緊急通報や医療機関の代わりではありません。
次のような場合は、通常の開所時間を待たず、状況に合う窓口を優先してください。
- 暴力、脅迫、虐待があり、今すぐ身の危険がある
- 意識障害、呼吸困難、重いけがなど、急いで医療が必要
- 食べるものや寝る場所がなく、今日の生活を維持できない
- 電気、ガス、水道の停止日や退去期限が目前に迫っている
- 裁判所から期限のある書類が届いている
- 詐欺の相手へ送金しようとしている
命や身体に差し迫った危険があれば110番または119番を優先します。
生活保護を申請したい場合は福祉事務所、裁判や法的な期限がある場合は弁護士など、社協とは別の担当機関へ早く連絡した方がよいこともあります。
どこへ連絡するか迷ったまま時間だけが過ぎそうなら、社協へ電話して「今日中の対応が必要かもしれない」と最初に伝えてください。
相談した後、すぐ支援が決まらなくても話は止まっていません
社会福祉協議会へ相談すると、最初に現在の暮らし、収入、家族、健康状態、困っている期限などを聞かれます。
その後の流れは、状況によって変わります。
- 社協が行う事業を案内される
- 必要な書類や利用条件を説明される
- 自立相談支援機関や地域包括支援センターへつながる
- 自治体の担当課、福祉事務所、医療機関などを紹介される
- 複数の機関で情報を共有しながら支援方法を考える
「今日は話を聞くだけでした」と感じることもあります。
しかし、複数の問題が重なっている場合、最初から一つの制度へ決めるより、使える制度と使えない制度を分ける時間が必要です。
相談の終わりには、次のように尋ねてください。
「私が次にすることは何ですか。いつまでに、どこへ連絡すればよいですか」
担当者の名前、次の連絡先、用意する書類を控えておけば、別の窓口へ移っても最初から説明し直す負担を減らせます。
今日は、お住まいの地域の社協名と電話番号だけ確かめます
社会福祉協議会を探すときは、「市区町村名 社会福祉協議会」と検索します。
全国社会福祉協議会の案内から、各地域の社会福祉協議会を探すこともできます。ホームページがない地域もあるため、見つからない場合は市役所や区役所の代表窓口へ「地域の社会福祉協議会の連絡先を知りたい」と尋ねてください。
今夜のうちに、制度をすべて理解する必要はありません。
確かめるのは、次の三つだけです。
- お住まいの地域を担当する社会福祉協議会の名称
- 電話番号と受付時間
- 予約が必要かどうか
その下に、電話で伝える一文を残します。
「そちらで扱う内容か分かりませんが、〇〇について困っています。利用できる支援か、次に連絡する窓口を教えてください」
社協へ電話することは、貸付やサービスを申し込む決断ではありません。
今の困りごとを、どこへ持って行けばよいのか確かめるための連絡です。まず入口の場所が分かれば、抱えている問題を全部一度に解決しなくても、次の一手は見えやすくなります。














