診断書を先に頼むより、最初に年金事務所へ予約します
朝になると体が動かず、欠勤が増えている。会社から今後の働き方を聞かれているのに、自分でも復職できるのか分からない。
収入がなくなる怖さから障害年金を調べると、「初診日」「障害認定日」「納付要件」といった言葉が並びます。病院へ診断書を頼めばよいのか、役所へ行けばよいのか、それとも社会保険労務士へ依頼すべきなのか。調べるほど入口が見えなくなることがあります。
この段階では、診断書を先に作ってもらわない方がよい場合があります。
障害年金の診断書には傷病に応じた所定の様式があり、請求方法によって、医師に証明してもらう時点も変わるためです。先に作成を依頼すると、期間や様式が合わず、取り直しになる可能性があります。
最初は、近くの年金事務所または街角の年金相談センターへ連絡します。
「病気で仕事を続けることが難しく、障害年金を請求できるか相談したいです。初診日と必要書類から確認したいです」
この一言で予約できます。申請すると決めていなくても、制度の対象となる可能性や、どの証明を集めるかを聞けます。
相談先は、初診日に加入していた年金制度で変わります
障害年金には、主に障害基礎年金と障害厚生年金があります。
どちらになるかは、現在の働き方ではなく、障害の原因となった病気やけがで初めて医師または歯科医師の診療を受けた日に、どの年金制度へ加入していたかで判断します。
| 初診日の状況 | 主に考えられる年金 | 主な相談・提出先 |
|---|---|---|
| 自営業、学生、無職などで国民年金に加入していた | 障害基礎年金 | 住所地の市区町村窓口。事前相談は年金事務所等でも可能 |
| 20歳になる前に初診日があった | 障害基礎年金 | 住所地の市区町村窓口 |
| 会社員として厚生年金に加入していた | 障害厚生年金 | 年金事務所または街角の年金相談センター |
| 会社員や公務員の配偶者として第3号被保険者だった | 障害基礎年金 | 年金事務所または街角の年金相談センター |
| 共済組合の加入期間中だった | 加入状況に応じた障害年金 | 年金事務所または加入していた共済組合等へ確認 |
初診日に何へ加入していたか分からない場合でも、自分で決める必要はありません。年金記録と医療機関の受診歴をもとに、年金事務所で確認できます。
障害年金の種類を決めるのは、現在の勤務先ではなく「その病気やけがで最初に受診した日の加入制度」です。
「初診日」は、現在の病院へ通い始めた日とは限りません
初診日は、現在の診断名がついた日や、症状が重くなった日とは限りません。
たとえば、うつ病で精神科へ通っていても、その前に不眠や動悸で内科を受診し、現在の病気との関連が認められる場合、その内科の受診日が初診日となる可能性があります。
腰の痛みで整形外科を受診した後、別の病院で神経の病気が分かった場合も、どの受診が現在の障害につながる初診日なのかを確かめる必要があります。
相談前には、正確な日付まで分からなくても構いません。次の順番で受診歴を思い出します。
- 最初に症状が出た時期
- 初めて行った病院や診療科
- 紹介された病院
- 入院や休職を始めた時期
- 現在通っている病院
お薬手帳、診察券、健康保険の医療費通知、会社へ提出した診断書、紹介状の控えなども手掛かりになります。
初診時と現在の医療機関が異なる場合は、初診日の証明として「受診状況等証明書」が必要になるのが一般的です。
受けられるかどうかは、三つの条件を分けて見ます
障害年金は、病名があるだけでも、仕事を休んでいるだけでも自動的に支給される制度ではありません。
主に、次の三点から判断されます。
初診日の条件
初診日に国民年金、厚生年金などの対象となる期間にいたかを見ます。20歳前の受診など、加入前でも対象となる場合があります。
保険料の納付条件
初診日前の年金保険料について、一定の納付・免除期間が必要です。20歳前に初診日がある場合は、原則としてこの納付要件はありません。
未納があるから絶対に無理だと自分で判断せず、初診日の前日時点の記録を年金事務所で見てもらいます。
障害状態の条件
病気やけがによって、日常生活や仕事がどの程度制限されているかを、診断書や申立書などから判断します。
障害基礎年金には1級と2級、障害厚生年金には1級から3級があり、制度上の基準は身体障害者手帳などの等級とは別です。
そのため、障害者手帳を持っていないことだけで、障害年金の対象外とは決まりません。反対に、手帳を持っていても障害年金が必ず支給されるわけではありません。
まだ働いていても、相談を先延ばしにする必要はありません
障害年金と聞くと、完全に退職し、まったく働けなくなった人だけの制度に思えるかもしれません。
しかし、働いている事実だけで、相談や請求の可能性がなくなるとは限りません。
短時間勤務に変えている、仕事内容を軽くしてもらっている、同僚の援助がなければ続けられない、欠勤が多いなど、実際の就労状況も含めて見られます。
相談時には、勤務しているかどうかだけでなく、次の事実を伝えてください。
- 週または月に何日働いているか
- 一日の勤務時間
- 休職、遅刻、早退、欠勤の回数
- 勤務先から受けている配慮
- 以前はできたが、現在は外してもらっている業務
- 帰宅後や休日にどの程度休養が必要か
- 家族の送迎、服薬管理、食事の用意などの援助
たとえば、「週五日働いています」だけでは、勤務の実態が伝わりません。
「週五日出勤していますが、一日四時間勤務です。電話対応は外してもらい、週に一、二回は体調不良で休みます。帰宅後は食事や入浴ができず、家族に手伝ってもらっています」
このように、働くために受けている配慮と、生活でできなくなったことまで伝えます。
最初の相談には、完璧な書類より受診と仕事の経過を持っていきます
年金事務所へ最初に行く段階では、診断書やすべての証明書がそろっていなくても構いません。
手元にあれば、次のものを持参します。
- 基礎年金番号が分かる書類
- 本人確認書類
- 病院の診察券やお薬手帳
- 最初に受診した医療機関と時期のメモ
- 転院した順番が分かるメモ
- 休職、退職、勤務変更の時期
- 障害者手帳や療育手帳など、持っている場合はその書類
- 家族が付き添う場合は、必要に応じて委任状
相談員へは、最初から病歴をきれいな文章で説明する必要はありません。
「最初の病院がどこになるか分かりません。受診した病院を古い順に確認したいです」
「現在も短時間だけ働いていますが、家ではほとんど動けません。どのように書類へ伝えればよいか聞きたいです」
分からない部分を具体的に示すと、次に集める書類を絞れます。
診断書は、主治医へ「働けないので書いて」だけでは伝わりません
主治医は病気や治療経過を把握していても、家での生活をすべて見ているわけではありません。
診察では、「変わりません」「何とか過ごしています」と短く答えていても、実際には家族が食事を作り、請求書を管理し、通院へ付き添っている場合があります。
診断書を依頼する前後には、次のような生活上の事実を伝えてください。
- 一人で食事を用意できるか
- 入浴、着替え、掃除をどの程度できるか
- 薬やお金を自分で管理できるか
- 一人で外出や通院ができるか
- 人と話した後、どの程度体調を崩すか
- 家族が何を代わりに行っているか
主治医へは、次のように伝えられます。
「診察では仕事へ行けていると話していますが、短時間勤務で、帰宅後の食事と服薬は家族に支えてもらっています。障害年金の診断書をお願いする前に、生活の実態をお伝えしたいです」
医師が書けるのは医学的に確認できる内容です。年金が受けられるかどうかを医師が決定するわけではありません。
最初の病院が閉院していても、そこで諦めないでください
初診が十年以上前で、病院が閉院している。カルテの保存期間が過ぎ、証明書を出せないと言われた。
このような場合でも、直ちに請求できないと決まるわけではありません。
初診時の医療機関から証明を得られない事情に応じて、別の医療機関の記録、健康保険の給付記録、お薬手帳、診察券、第三者の申立書などを組み合わせて初診日を確認できる場合があります。
ただし、どの資料が使えるかは個別に異なります。自分の判断で証拠を一つに絞らず、年金事務所へ次のように伝えてください。
「初診の病院が閉院し、受診状況等証明書を取れません。手元には診察券と当時のお薬手帳があります。ほかに何を探せばよいですか」
請求時期によって、受け取りが始まる月も変わります
障害年金には、主に「障害認定日による請求」と「事後重症による請求」があります。
障害認定日は、多くの場合、初診日から一年六か月を過ぎた日です。ただし、傷病や治療内容によって、それより前の日が認定日となることがあります。
障害認定日の時点で基準に該当していた場合は、その時点へさかのぼって請求できる可能性があります。ただし、時効により実際に受け取れるのは原則として過去五年分が上限です。
障害認定日には該当せず、その後に状態が重くなった場合は、事後重症として請求できる可能性があります。この場合は、原則として請求した日の翌月分から支給対象となるため、請求が遅れるほど受給開始も遅くなります。
事後重症による請求には年齢上の期限があるため、「落ち着いてから何年か後に考える」と先延ばしにせず、対象となりそうかだけでも早めに聞いてください。
家族が代わりに相談するときは、委任状の内容を具体的にします
本人が外出できない、電話で説明できない、書類を見ると体調を崩す。そのような場合は、家族が年金相談や手続きを代わりに行えることがあります。
代理人が個別の年金記録や請求について相談する場合は、原則として本人が作成した委任状と、代理人の本人確認書類が必要です。
委任状には、「年金について一任する」だけでなく、依頼する内容を具体的に書きます。
「障害年金の請求可否、加入記録、必要書類および請求手続きに関する相談を、長女に委任する」
病気やけがのため本人が委任状を作成できない場合には、別の取扱いがあります。家族だけで書類を作らず、年金事務所へ本人の状態と続柄を伝えてください。
社会保険労務士へ依頼するかは、公式相談を受けてから決めても遅くありません
障害年金を扱う社会保険労務士へ、書類作成や請求手続きの支援を依頼する方法もあります。
特に、初診日が古く証明が難しい、複数の病気が関係している、病歴が長い、以前に不支給となったなど、手続きが複雑な場合に検討できます。
ただし、社会保険労務士へ依頼すれば必ず受給できるわけではありません。着手金、成功報酬、診断書代、交通費など、何に費用がかかるかを契約前に見ます。
まず年金事務所で無料相談を受け、自分で進められる範囲を知ってから依頼を判断しても構いません。
契約前には、次のように尋ねてください。
「初診日の確認と病歴・就労状況等申立書の支援を依頼した場合、受給できなかったときも含めて、総額で何に費用がかかりますか」
障害年金の結果を待つ間の生活費は、別の制度で考えます
障害年金は、請求してすぐに支給される制度ではありません。審査の結果、支給されないこともあります。
そのため、来月の家賃や食費を障害年金だけでつなごうとしないでください。
会社の健康保険に加入し、病気やけがで休業して給与を十分に受けられない場合は、条件により傷病手当金を利用できることがあります。仕事中や通勤中のけがなどであれば、労災保険が関係する可能性があります。
収入が途絶え、家賃、食費、医療費を払えない場合は、地域の自立相談支援機関や福祉事務所へ、障害年金を準備中であることも伝えます。
「病気で働けず、障害年金の相談を始めましたが、来月までの生活費がありません。今利用できる制度を確認したいです」
障害年金の請求と、今日の生活を維持する支援は、同時に進めて構いません。
今日は「最初の受診先」と「今できないこと」を一文にします
今夜、申請書や診断書を用意する必要はありません。
最初に病院へ行ったおおよその時期と、その頃に加入していた年金制度を思い出せる範囲で確認します。
次に、現在の状態を一文にしてください。
「五年前に不眠で内科を受診し、現在は精神科へ通院しています。短時間勤務に変えましたが欠勤が多く、家事と服薬管理は家族の援助が必要です」
その一文を手元に置き、近くの年金事務所または街角の年金相談センターの予約窓口へ連絡します。
今決めるのは、退職するか、障害年金が受けられるかではありません。初診日と必要書類を公式窓口で確かめ、今の働き方と生活の実態を伝える予約を一つ取るところまでです。














