施設の請求書を開き、「来月からも払えるのか」と手が止まる
母が転倒してから、デイサービスと訪問介護を使い始めました。
最初は「介護保険があるから、何とかなる」と思っていました。
ところが、月末に届いた請求書には、サービス利用料のほか、食事代、送迎に関する費用、日用品代などが並んでいます。
病院の支払い、紙おむつ、実家へ通う交通費も重なりました。
母の年金だけでは足りず、自分の口座から三万円を出しました。今月は払えても、来月も同じ金額を出せるとは限りません。
きょうだいへ話すと、「介護を決めたのはそっちでしょう」と言われました。
「ケアマネジャーにお金の話までしてよいのだろうか」
「市役所では、何課へ行けばよいのか」
「施設へ払えないと言ったら、退所を求められないか」
「親に預金額を聞くのは、財産を探るようで言いにくい」
介護のお金が苦しくなると、制度を知らないことより、「誰にどこまで話してよいか分からない」ことが動けない理由になります。
介護費用の相談先は一か所ではありません。
サービスの組み方、制度の申請、施設の請求、家計全体では、担当する窓口が異なります。
最初の相談先は、担当ケアマネがいるかどうかで決まる
| 現在の状態 | 最初に連絡する相手 | 伝えること |
|---|---|---|
| 在宅サービスを利用中 | 担当のケアマネジャー | 毎月の請求額と、家計から出せる上限 |
| 施設へ入所中 | 施設の生活相談員・相談担当者 | 請求の内訳と、今後払えない可能性 |
| 入院中で退院後の介護費が心配 | 病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援担当 | 年金、住まい、退院後に出せる費用 |
| まだ要介護認定を受けていない | 親の住所地を担当する地域包括支援センター | 親の状態と、家族が負担できる範囲 |
| 制度の対象や申請方法を知りたい | 市区町村の介護保険担当窓口 | 所得、世帯、利用サービス、現在の自己負担額 |
| 介護費以外も含めて生活できない | 自治体の自立相談支援機関など | 家賃・食費・借入れを含む世帯全体の不足 |
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者の総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが、介護、医療、福祉、権利擁護を含む相談に対応しています。相談するのは、介護を受ける本人が住んでいる地域を担当するセンターです。
すでにケアマネジャーがいる場合は、制度を自分で探し始める前に、直近の請求書を見せてください。
ケアマネジャーは、本人の状態や暮らしに合わせてケアプランを作り、サービス事業者や関係機関との調整を行います。費用が続かないことも、サービスを組むうえで欠かせない情報です。
電話では「安くしたい」ではなく、不足する金額を伝える
介護費用が高いと感じても、何を相談したいか自分でも分からないことがあります。
最初の電話では、次のように伝えれば十分です。
「母の介護サービスに、今月は食事代などを含めて四万八千円かかりました。母の年金から介護へ回せるのは月三万円ほどで、毎月一万八千円不足します。このまま続けられるか、サービスの組み方と利用できる制度を一緒に見てほしいです」
まだ金額を把握できていない場合は、こう伝えます。
「介護関係の請求が複数あり、毎月いくらかかっているか分からなくなりました。請求書を持っていくので、介護保険分とそれ以外に分けて見ていただけますか」
施設へは、次のように話せます。
「今月分は支払えますが、来月以降は全額を期日どおり払えない可能性があります。請求の内訳と、利用できる軽減制度、支払いについて相談できる担当者を教えてください」
請求書を「介護サービス代」と一つにまとめない
介護にかかる費用には、介護保険の対象になるものと、対象外のものがあります。
ここを分けずに「介護保険を使っているのに高い」と考えると、見直す場所を見失います。
| 費用の種類 | 具体例 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 介護保険サービスの自己負担 | 訪問介護、通所介護、施設サービスなどの利用者負担 | ケアマネジャー、施設、市区町村 |
| 支給限度額を超えたサービス | 在宅サービスの利用上限を超えた部分 | ケアマネジャー |
| 食費・居住費 | 施設やショートステイの食事、部屋代 | 施設、市区町村 |
| 介護保険外の費用 | 日用品、理美容、特別な部屋、追加の生活支援など | 事業所・施設 |
| 医療費 | 診察、薬、訪問診療、入院費 | 医療機関、加入している医療保険 |
| 家族が負担する周辺費用 | 交通費、差し入れ、洗濯、仕事を休んだことによる減収 | 家族内で把握する |
介護保険サービスの利用者負担は原則として費用の一割で、一定以上の所得がある人は二割または三割です。施設では、このほかに食費、居住費、日常生活費などがかかります。
在宅サービスには、要介護度ごとに介護保険を利用できる一か月の支給限度額があります。その範囲を超えて利用した部分は、原則として全額自己負担になるため、請求が急に増えた場合は超過分がないかをケアマネジャーへ聞いてください。
一枚の請求書だけでなく、三か月分を並べる
一月だけ高かったのか、毎月不足するのかによって、対応は変わります。
直近三か月分を、次のように並べてください。
| 項目 | 4月 | 5月 | 6月 |
|---|---|---|---|
| 介護サービス自己負担 | 18,000円 | 21,000円 | 25,000円 |
| 食費・居住費 | 0円 | 0円 | 12,000円 |
| 医療・薬 | 8,000円 | 6,000円 | 9,000円 |
| おむつ・日用品 | 4,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
| 家族の交通費 | 6,000円 | 6,000円 | 8,000円 |
| 合計 | 36,000円 | 38,000円 | 59,000円 |
介護保険の請求だけでなく、家族が立て替えた費用も書きます。
ただし、差し入れや交通費まで介護保険の軽減制度で戻るわけではありません。制度の対象になる費用と、家族内で見直す費用を分けるために記録します。
請求書で分からない項目は、遠慮せず一行ずつ聞く
請求書に「加算」「日常生活費」「その他費用」などの項目があると、介護の知識がなければ判断できません。
分からないまま払わず、次のように聞いてください。
- 「この費用は介護保険の自己負担ですか」
- 「支給限度額を超えた全額自己負担は含まれていますか」
- 「食費と居住費はいくらですか」
- 「本人や家族が希望して追加したサービスはどれですか」
- 「利用しなくても毎月かかる費用はありますか」
- 「今月だけ増えた項目はどれですか」
説明を受けたら、やめられる費用と、本人の安全や生活を守るために必要な費用を分けます。
金額が高いからといって、入浴、服薬、食事、見守りなどの支援を家族の判断だけで急に減らさないでください。
月々の介護サービス負担が高いときは、市区町村へ上限制度を聞く
一か月に支払った介護保険サービスの利用者負担が、所得区分に応じた上限を超えた場合、超えた分が支給される「高額介護サービス費」があります。
対象となるのは介護保険サービスの利用者負担で、食費、居住費、福祉用具購入費など、上限計算に含まれない費用があります。支給を受けるには市区町村への申請が必要です。
市区町村の介護保険窓口では、次のように聞いてください。
「母が介護サービスを利用しており、今月の自己負担が二万五千円でした。高額介護サービス費の対象になるか、申請済みかを調べたいです」
通知が届いていても、開封せずに保管されていることがあります。
親の郵便物に、市区町村からの申請案内や支給決定通知がないかも見てください。
施設の食費と部屋代が重いときは、負担限度額認定を確かめる
介護保険施設やショートステイでは、介護サービスの自己負担とは別に、食費や居住費・滞在費がかかります。
所得や預貯金などの要件を満たす人には、対象となる施設で食費・居住費の負担を軽くする「介護保険負担限度額認定」の仕組みがあります。
この制度は、すべての高齢者やすべての高齢者向け住宅に同じように適用されるものではありません。対象施設、所得区分、資産要件、申請方法は、市区町村へ最新の内容を確かめてください。食費・居住費の負担限度額は制度改定が行われることがあります。
施設の相談員と市区町村へ、次のように聞きます。
「母は市町村民税非課税世帯です。この施設の食費・居住費は、負担限度額認定の対象になりますか。現在の認定証があるかも確認したいです」
以前は対象外でも、収入や世帯の状況が変わっている場合があります。過去の結果だけで決めず、更新時期も含めて聞いてください。
医療費と介護費が同時に高い世帯には、合算する制度があります
親が通院や入院を繰り返しながら介護サービスも利用していると、医療費と介護費を別々に見ただけでは、世帯全体の負担が分かりません。
同じ医療保険の世帯内で、毎年8月から翌年7月までの医療保険と介護保険の自己負担を合計し、所得・年齢に応じた基準額を超えた場合に、超過分が支給される「高額医療・高額介護合算療養費制度」があります。申請先や具体的な計算は、加入している医療保険と介護保険の窓口へ確認します。
市区町村や加入している医療保険へ、次のように伝えてください。
「母は介護サービスに加えて通院と入院が続いています。医療費と介護費を合算する制度の対象になるか、申請状況を確認したいです」
領収書や支給決定通知は、医療と介護で袋を分けて残しておくと相談しやすくなります。
サービスを減らす前に、「何を減らすと誰の負担が増えるか」を見る
介護費を下げるため、デイサービスを週三回から一回へ減らそうと考えることがあります。
しかし、サービスを減らした時間を家族が埋めるなら、介護費は減っても、家族の交通費、欠勤、疲労が増えるかもしれません。
| 見直し案 | 減る可能性がある費用 | 代わりに増える可能性がある負担 |
|---|---|---|
| デイサービスの回数を減らす | サービス自己負担、食費 | 日中の見守り、入浴、家族の訪問 |
| 訪問介護を減らす | サービス自己負担 | 掃除、調理、買い物、服薬支援 |
| ショートステイをやめる | 利用料、食費、滞在費 | 家族の夜間介護、休息不足 |
| 福祉用具を返却する | レンタル料 | 転倒、移動介助、家族の身体的負担 |
| 施設を安い所へ変える | 月額費用 | 転居費、通院、家族の移動、本人の環境変化 |
ケアマネジャーには、「月一万円下げたい」と具体的に伝えます。
「安全を落とさずに減らせる項目」と「減らすと在宅生活が難しくなる項目」を一緒に分けてください。
施設費が払えないときは、滞納する前に相談員へ伝える
施設からの請求を払えそうにないと、退所を求められるのが怖くて連絡を避けたくなります。
けれど、支払日を過ぎてから黙ったままにするより、見通しが分かった段階で伝えた方が話を進めやすくなります。
「今月の請求額は十二万円ですが、母の年金と預金から用意できるのは九万円です。三万円不足します。負担軽減制度の対象と、支払いについて相談できる方法を教えてください」
次の点を聞きます。
- 請求額のうち、介護保険分はいくらか
- 食費・居住費・日用品費はいくらか
- 任意で外せる費用があるか
- 負担限度額認定などの申請状況
- 支払期日や分割について協議できるか
- 今後の月額見込みはいくらか
支払いの延期や分割ができるかは、施設の契約や個別事情によって異なります。
「年金が入れば何とかします」と曖昧にせず、支払える金額と日を伝えてください。
親の預金が分からないまま、子どもが払い続けない
親にお金の話をすると、「財産を狙っているのか」と思われそうで聞きにくいことがあります。
そのため、子どもが自分の口座から立て替え続け、限界になってから家族内で問題になります。
まず必要なのは、財産の全額を聞き出すことではありません。
介護に回せる月額を知ることです。
| 最初に知りたいこと | 理由 |
|---|---|
| 毎月の年金・収入 | 継続して払える介護費を考えるため |
| 家賃・住宅費 | 介護以外に必ず残す金額を知るため |
| 食費・光熱費・医療費 | 生活費を削りすぎないため |
| 預貯金から使える範囲 | 一時費用と長期費用を分けるため |
| 借入れや滞納 | 見えていない支払いを把握するため |
親には、次のように伝えられます。
「預金を私が管理したいわけではないよ。今の介護を続けると毎月四万円かかるから、生活費を残していくらまで出せるか一緒に考えたい」
家族が立て替える場合は、金額、日付、用途を記録します。
贈与なのか、親から後で返してもらうお金なのかも、家族内で曖昧にしないでください。
きょうだいとは「公平に三等分」より、負担の全体を見せる
介護にかかる負担は、請求書の金額だけではありません。
近くに住む子どもは通院や手続きに時間を使い、遠方のきょうだいはその負担を見ていないことがあります。
| 負担の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 直接支払ったお金 | 施設費、日用品、医療費の立替え |
| 移動費 | 交通費、ガソリン、高速代、駐車場 |
| 時間 | 通院同行、面談、買い物、役所手続き |
| 仕事への影響 | 欠勤、早退、勤務時間の短縮 |
| 自宅で担う介護 | 食事、排泄、服薬、夜間対応 |
話し合いでは、「誰が悪いか」より、今後の月額を示します。
「母の収入から出せるのは月三万円で、介護には月五万円かかる。毎月二万円不足する。私が通院同行を担う代わりに、費用をどう分けるか相談したい」
全員が同じ金額を出せない場合は、費用、訪問、手続きなどを組み合わせて役割を決めます。
親が請求や通帳を管理できないときは、買い物だけの問題にしない
介護サービスの請求書を何度もなくす、同じ費用を二重に払う、通帳や印鑑の場所が分からない。
このような変化がある場合は、家族がその都度立て替えるだけでは解決しません。
- 公共料金や税金も滞納していないか
- 不要な契約や高額な買い物が増えていないか
- 年金が入る口座を本人が把握しているか
- 暗証番号を他人へ教えていないか
- 服薬や食事など、金銭以外の管理にも変化がないか
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談だけでなく、権利擁護に関する支援も担っています。本人の判断力や生活状況に応じて、市区町村、社会福祉協議会、医療機関などにつないでもらえます。
家族が本人の預金を自由に動かすのではなく、本人の意思を尊重しながら、必要な支援方法を考えてください。
介護費だけでなく生活費も足りないなら、家計全体の窓口へつなぐ
親の介護費を払うために、子どもの家賃、食費、教育費、借入れの返済が苦しくなっている場合があります。
その状態では、介護サービスを月数千円調整するだけで解決しないことがあります。
自治体の自立相談支援機関では、家計の見える化、滞納や債務の把握、利用できる制度や関係機関へのつなぎなど、生活全般の相談を受け付けています。
窓口では、次のように伝えます。
「親の介護費を毎月三万円立て替えており、自分の家賃とカード代も払えなくなりそうです。介護だけでなく、世帯の家計全体を見てほしいです」
親と子が別世帯の場合は、それぞれの収入・資産や契約状況を分けて話してください。
相談前には、完璧な家計簿より六つの資料を集める
すべてをきれいにまとめなくても、次の物があると相談しやすくなります。
- 直近三か月分の介護サービス利用料の請求書・領収書
- 施設の請求書と料金表
- 介護保険負担割合証
- 介護保険被保険者証や認定結果
- 年金額や収入が分かる物
- 医療費、日用品、家族の立替額を書いたメモ
持っていない資料があっても、相談を延期する必要はありません。
電話で、「今あるのは施設の請求書だけです。ほかに何を持参すればよいですか」と聞いてください。
窓口で話せなくなったら、このメモを渡す
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 介護を受ける人 | 母・82歳・一人暮らし |
| 現在の介護 | 要介護2、デイ週3回、訪問介護週2回 |
| 介護関係の月額 | 約48,000円 |
| 本人が出せる額 | 月30,000円 |
| 不足する額 | 毎月約18,000円 |
| 家族の状態 | 娘が立替中。来月から継続が難しい |
| 知りたいこと | 使える軽減制度と、サービスの見直し |
メモの上には、次の一文を書いてください。
「介護費用が毎月不足しています。何を減らすかではなく、安全に介護を続ける方法を一緒に考えてほしいです」
相談しても金額が下がらないときは、次の行動を聞いて帰る
制度の所得要件に該当しない、サービスを減らすと在宅生活が難しいなど、すぐ費用を下げられない場合もあります。
そこで話を終わらせず、次を聞いてください。
- 今後三か月の費用見込みはいくらか
- 状態が変わったら、どの時点でケアプランを見直すか
- 使っていない制度や未申請の給付はないか
- 施設を比較する場合、総額のどこを見るか
- 家計全体について、どの窓口へつながるか
- 次回はいつ、誰へ連絡するか
その場で結論が出なくても、「次に確認する人と日」が決まれば、相談は前へ進んでいます。
今日するのは、介護をやめるか決めることではありません
まず、直近の請求書を一枚出してください。
そこへ、三つの印を付けます。
- 介護保険サービスの自己負担
- 食費・居住費・日用品などの別料金
- 何の費用か分からない項目
次に、親の年金や収入から、介護へ毎月いくらなら出せるかを書きます。
そして、担当ケアマネジャーか施設の相談員へ、次の一文を伝えてください。
「介護に毎月○円かかりますが、本人の収入から出せるのは○円で、毎月○円不足します。請求の内訳と、利用できる制度、サービスの組み方を一緒に見てほしいです」
介護のお金の相談は、「安くしてください」と頼むことではありません。本人の生活を守りながら、家族も続けられる金額へ近づけるために、費用の中身と制度を一緒に見直すことです。
家族が払えなくなるまで我慢してから話す必要はありません。
今月は何とか払えても、三か月後が見えないなら、すでに相談してよい段階です。
今日は制度をすべて覚えなくても構いません。請求書を一枚持ち、「毎月いくら不足する」と伝えるところから始めてください。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」:地域包括支援センターの役割と高齢者の総合相談に関する確認先。
- 厚生労働省「家族介護に直面している方への支援」:家族が介護について最初に相談する地域包括支援センターに関する確認先。
- 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」:一割から三割の利用者負担、高額介護サービス費、施設の食費・居住費などに関する確認先。
- 厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度」:医療保険と介護保険の自己負担を合算する制度に関する確認先。
- 介護サービス情報公表システム:地域包括支援センターや全国の介護サービス事業所を探す際の確認先。














