週に一度デイサービスを使いたいだけなのに、「施設へ追い出すのか」と言われます
母親は一人で入浴するのが難しくなり、同居する長女が毎回手伝っています。
浴槽から立ち上がるときに足が滑り、二人とも転びそうになったこともありました。
ケアマネジャーから、週に一度デイサービスで入浴する方法を提案されます。
ところが、離れて暮らす兄へ話すと、すぐに反対されました。
「まだそこまで弱っていない」
「知らない人の中へ行かせたら、母さんがかわいそうだ」
「家族が見れば済む話だろう」
兄が実家へ来るのは、月に一度ほどです。
その日は母親も張り切って着替え、食事も自分で取ります。夜中に何度もトイレへ行くことも、薬を飲み忘れることも、兄の前では見えません。
長女は言い返したくなります。
「毎日見ていないのに、どうして決めるの」
「家族が見ればいいと言うなら、あなたが来て」
けれど、きょうだい関係を壊したくなくて言葉を飲み込みます。
その結果、介護サービスの話は止まり、入浴介助を続ける人だけが疲れていきます。
こうしたすれ違いは、親を思う気持ちの強さだけで起きているわけではありません。
見えている親の姿、負担している作業、介護サービスへのイメージが、きょうだいごとに違うのです。
反対の言葉だけでなく、その後ろにある心配を分けます
| きょうだいの言葉 | 隠れているかもしれない心配 | 次に聞きたいこと |
|---|---|---|
| まだサービスは早い | 親を高齢者扱いすることへの抵抗 | どの状態になれば必要だと考える? |
| 他人を家へ入れたくない | 盗難、プライバシー、親の拒否が心配 | 訪問と通所のどちらなら試せそう? |
| 家族で介護すればよい | 家族介護の実際の作業量を知らない | 誰が何曜日に何を担当できる? |
| お金がもったいない | 料金や介護保険の仕組みが分からない | 実際の見積もりを一緒に見ない? |
| 本人が嫌がっている | 親の希望を守りたい | 何を嫌がり、どの方法ならよいと言っている? |
| 一度使うと施設へ入れられる | 在宅生活が終わることへの恐れ | 自宅で暮らすための利用だと説明できる? |
「反対するなんて無責任だ」と責めても、相手は自分だけが親を守っているように感じ、さらに態度を固くすることがあります。
まず、何を避けたいのかを具体的に聞きます。
費用が心配なのか、親の拒否が心配なのか、サービスの内容を誤解しているのかによって、必要な情報が変わります。
きょうだいで争う前に、四つの欄へ事実を分けます
| 欄 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 親に起きていること | 推測ではなく具体的な出来事 | 入浴時に2回転びそうになった |
| 親の希望 | 本人が続けたいこと、嫌なこと | 自宅で暮らしたい、大人数の場は苦手 |
| 家族がしていること | 曜日、時間、回数を含む介護作業 | 長女が毎日服薬確認、週2回入浴介助 |
| 現在困っていること | このままでは続かない部分 | 仕事を早退しないと通院へ付き添えない |
「母はもう何もできない」「姉が大げさに騒いでいる」といった評価は、事実と分けてください。
きょうだいが同じ紙を見るだけでも、電話口の印象ではなく、親の暮らし全体について話しやすくなります。
この一か月で、入浴中に2回転びそうになりました。
私は毎回介助していますが、一人で支えるのが難しくなっています。
母は家で暮らし続けたいと言っています。
そのために、週1回だけデイサービスで入浴する案を試したいです。
介護サービスは、きょうだいの多数決だけで決めるものではありません
介護サービスを利用する本人が内容を理解し、意思を伝えられる場合は、本人の希望が中心になります。
居宅サービスのケアプランは利用者の希望を基礎に作成され、原案の内容は利用者または家族へ説明したうえで、文書による利用者本人の同意を得る仕組みです。家族の状況や意見も支援を組み立てる重要な情報ですが、きょうだいの多数決だけで決めるものではありません。
| 立場 | 話す内容 |
|---|---|
| 親本人 | 続けたい生活、困っていること、受けたくない支援 |
| 主に介護する家族 | 現在の作業、限界に近い場面、継続できる範囲 |
| 離れて暮らすきょうだい | 心配していること、実際に担える役割 |
| ケアマネジャー | 本人の状態、選択肢、費用、サービスを使わない場合の見通し |
本人が判断しにくい状態にある場合でも、本人のこれまでの生活や言葉、表情を手掛かりにしながら、家族と専門職が支援方法を考えます。
「本人が分からないから、家族だけで決める」と急がず、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ状況を伝えてください。
「家族で介護する」と言うなら、誰が何を担うかまで決めます
家族介護という言葉は、一見やさしく聞こえます。
しかし、実際の介護は「時々様子を見る」だけではありません。
| 介護に必要なこと | 現在の担当 | 反対する人が担えること |
|---|---|---|
| 朝夕の服薬確認 | 同居する長女 | 週末の電話確認を担当する |
| 入浴介助 | 長女が週2回 | 日曜日の介助を担当する |
| 通院付き添い | 長女が仕事を休む | 月1回は兄が付き添う |
| 買い物・食事 | 長女 | 食材宅配の手配と費用を担う |
| 夜間の呼出し | 長女 | 代われないため外部支援を検討する |
| ケアマネとの連絡 | 長女 | 家族会議へ参加し情報を共有する |
ここでの目的は、「反対するなら全部やって」と仕返しをすることではありません。
家族だけで介護する案が、実際に続けられるのかを確かめることです。
家族で見る案も選択肢に入れていいと思う。
その場合は、入浴、通院、服薬、買い物を誰が何曜日に担当するか決めたい。
続けられない部分だけ、サービスを使う形にしない?
役割を具体化すると、反対していたきょうだいが初めて、同居家族の負担量へ気づくことがあります。
親の前では元気に見える日だけで判断しません
離れて暮らすきょうだいが来る日は、親も緊張し、普段よりしっかり振る舞うことがあります。
一方、毎日介護している人は、夜間の排泄、食事を残す日、同じ質問の繰り返しなどを見ています。
| 離れて暮らす家族が見やすい姿 | 日常で起きていること |
|---|---|
| 来客時には着替えている | 普段は同じ服を数日着ている |
| 会話ができている | 電話の後、話した内容を忘れる |
| 自分で歩いている | 夜間はふらつき、トイレで転びかける |
| 昼食を食べている | 一人の日は菓子パンだけで済ませる |
| 「困っていない」と答える | 失敗を知られたくなくて家族へ隠している |
どちらか一方の見方が嘘ということではありません。
親には、できる日と難しい日があります。サービスの必要性は、最も元気な一日だけでも、最も悪かった一日だけでもなく、一定期間の暮らしから考えます。
サービスを使う目的を「家族を楽にするため」だけにしません
介護する家族の負担を減らすことは重要です。
ただ、親には「自分が重荷だからサービスへ預けられる」と聞こえることがあります。
本人の生活にとって何が変わるかも伝えます。
| サービス | 本人にとっての目的 | 家族にとっての目的 |
|---|---|---|
| 訪問介護 | 自宅でできることを続けながら、入浴や家事の支援を受ける | 家族だけに集中した介助を分ける |
| デイサービス | 入浴、食事、運動、人との交流の機会を持つ | 日中の介護時間を確保する |
| ショートステイ | 短期間、介護を受けながら別の場所で過ごす | 出張、入院、休息時の介護を確保する |
| 福祉用具 | 立ち上がりや移動を自分で行いやすくする | 抱き起こしなどの身体的負担を減らす |
| 訪問看護 | 自宅で体調や医療面の支援を受ける | 家族だけで健康状態を判断しなくて済む |
介護サービスには、自宅を訪問するもの、施設へ通うもの、短期間宿泊するもの、福祉用具を利用するものなどがあります。一つのサービスですべてを任せるのではなく、本人の生活に必要な部分を組み合わせます。
訪問介護では、本人の食事・排泄・入浴などの身体介護や、本人の日常生活に必要な掃除・洗濯・買い物・調理などを支援します。家族の部屋の掃除や大掃除など、本人の援助に直接当たらないことは対象外です。
費用への反対には、月額の見積もりを出して話します
「介護サービスは高い」という印象だけで反対している場合があります。
要介護度、負担割合、利用回数、加算、食事代、交通費などによって実際の負担は変わります。
| 確認する費用 | 例 |
|---|---|
| 介護保険の自己負担 | 負担割合と利用回数を反映した金額 |
| 保険外の費用 | 食事、日用品、送迎範囲外の費用など |
| 家族介護を続ける費用 | 交通費、仕事を休む損失、宅配、介護用品 |
| 事故が起きた後の負担 | 通院、入院、急な介護体制の変更 |
高そうだからやめるのではなく、週1回利用した場合の自己負担と食費を出してもらおう。
今、家族が払っている交通費や仕事を休む回数も一緒に比べたい。
費用は、ケアマネジャーやサービス事業所へ本人の負担割合を伝え、利用予定に沿って試算してもらいます。
見積もりを見た後で回数を減らしたり、別のサービスを選んだりすることもできます。
介護認定を受けることと、サービスを全部使うことは別です
きょうだいから、「認定を受けたら重い介護状態だと決められる」「すぐ施設へ入れられる」と心配されることがあります。
要介護認定は、本人がどの程度の介護・支援を必要とする状態かを市町村が判定し、利用できる介護保険給付の範囲につなげる手続きです。認定を受けたからといって、示されたサービスをすべて利用しなければならないわけではありません。
まず認定を申請し、その後に本人の希望と生活状況を見ながら、必要なサービスだけを選ぶことができます。
最初から半年契約のつもりで話さず、短期間試します
反対するきょうだいや本人には、介護サービスを始めることが、生活をすべて変える決定に見えることがあります。
そこで、試す期間と見る項目を先に決めます。
| 試し方 | 期間中に見ること |
|---|---|
| デイサービスを週1回利用する | 本人の疲れ、入浴後の様子、行きたくない理由 |
| 訪問介護を掃除だけから始める | 他人が家へ入ることを本人が受け入れられるか |
| 福祉用具を貸与で試す | 立ち上がりや移動が楽になるか |
| ショートステイを1泊利用する | 食事、睡眠、職員との関係、帰宅後の反応 |
| 配食を週2回使う | 食べられる量、受取り、安否確認の効果 |
ずっと続けると決めるのではなく、まず4週間だけ週1回試したいです。
母が強く嫌がる、体調が悪くなる、家での生活がかえって乱れる場合は内容を見直します。
入浴が安全になり、本人も慣れたなら続ける案を考えます。
「一度使ったらやめられない」という進め方にせず、本人の反応や家族の負担を見ながらケアプランを調整します。ケアマネジャーはサービス開始後も実施状況を把握し、必要に応じて計画の変更や事業者との連絡調整を行います。
本人が嫌がるときは、サービス名ではなく嫌な場面を聞きます
| 本人の言葉 | 嫌なのかもしれないこと | 変えられる方法 |
|---|---|---|
| デイサービスなんて行かない | 知らない集団へ入るのが不安 | 短時間見学、少人数、個別活動のある所を探す |
| 家へ他人を入れたくない | 物を見られる、盗られる不安 | 家族同席で顔合わせし、範囲を一部屋に絞る |
| 世話になるほど弱っていない | できない人だと思われたくない | できる動作を続けるための支援と説明する |
| お金を使いたくない | 将来の生活費が心配 | 月額を示し、回数や優先順位を本人と決める |
| 家族がすればいい | 家族の負担を知らない | 責めずに、現在の作業と続けられる限界を伝える |
本人の拒否を「わがまま」と片づけず、どの部分を変えれば受け入れられるかを探します。
見学だけ、体験利用だけ、同じ担当者に来てもらうなど、生活へ入る変化を小さくすると受け入れやすくなる場合があります。
きょうだいだけの電話会議では、同じ話を繰り返しやすくなります
意見が固まっている場合は、ケアマネジャーを交えた場を作ります。
| 家族会議の順番 | 話す内容 |
|---|---|
| 1. 本人の希望 | どこで、どのように暮らしたいか |
| 2. 現在の事実 | 転倒、服薬、入浴、食事などの出来事 |
| 3. 家族の負担 | 誰が何時間、どの作業をしているか |
| 4. 反対理由 | 費用、本人の拒否、サービスへの不信など |
| 5. 選択肢 | 利用する案、家族で担う案、組み合わせる案 |
| 6. 試す内容 | 期間、回数、費用、見直し日 |
きょうだいのどちらが正しいかを決める場ではなく、母が家で暮らすために必要な支えを決めたいです。
利用する案だけでなく、サービスを使わない場合に家族が必要な介護も説明してください。
ケアマネジャーには、本人と家族の状況に応じて継続的・計画的にサービスを組み立て、介護保険以外の医療・福祉・地域の支援も含めて検討する役割があります。
反対するきょうだいが会議へ出ないときは、決定事項を短く共有します
何度誘っても、「任せる」「勝手にすれば」と参加しないことがあります。
その場合も、長い説明で説得し続けるのではなく、次の項目を文書で共有します。
- 親に現在起きていること
- 親本人の希望
- ケアマネジャーからの提案
- 利用するサービスと期間
- 本人が負担する予定額
- 見直す日
- 緊急時の連絡先
母本人とケアマネジャーを交えて話し、8月から4週間、週1回デイサービスを試すことにしました。
目的は安全な入浴と、家での生活を続けることです。
8月末に本人の様子と費用を見て継続を決めます。意見があれば8月10日までに具体的な代案を教えてください。
説明した記録を残すことは、後で「何も聞いていない」という争いを減らす助けになります。
全員の賛成を待っている間に、介護する人が倒れそうなら先に助けを求めます
家族会議は必要ですが、介護する人の体調や親の安全が差し迫っているときまで、全員一致を待つ必要はありません。
- 介護者が眠れず、仕事や運転へ影響が出ている
- 腰痛や持病が悪化し、身体介助を続けられない
- 親子で怒鳴り合う、手が出そうになる
- 親を一人にできず、介護者が外出できない
- 食事、排泄、服薬など必要な介助を提供できない日がある
- 介護を理由に退職を考えている
地域包括支援センターは、高齢者本人だけでなく、家族介護者を含む総合相談を受ける市町村の窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが相談に応じ、必要な支援やケアマネジャーにつなぎます。
厚生労働省も、高齢者が地域で暮らすには、本人だけでなく家族介護者を社会全体で支える必要があるとしています。主に介護する人が限界であることは、家族の弱さではなく、支援を組み直す理由です。
仕事を辞める前に、サービスと職場の制度を同時に調べます
きょうだいが介護サービスへ反対する一方で、同居家族だけが早退や欠勤を繰り返していることがあります。
介護離職をすると時間は増えますが、収入、社会とのつながり、将来の年金などへ影響します。退職を先に決めず、介護サービスと職場の両立支援制度を同時に確認します。
- 介護休業
- 介護休暇
- 所定外労働の制限
- 時間外労働・深夜業の制限
- 短時間勤務などの措置
- 勤務先の相談窓口や独自制度
厚生労働省は、介護サービスの利用と働く環境の整備を両輪として、仕事と介護の両立を支援しています。2025年4月からは、介護離職防止に向けた個別周知や意向確認、雇用環境整備などが事業主に求められています。制度の利用条件は勤務先や雇用状況によって異なるため、会社の人事・労務担当へ早めに確認してください。
試した後は、本人・家族・安全の三方向から見直します
| 見る方向 | 質問 |
|---|---|
| 本人 | 嫌だったこと、楽だったこと、続けてもよいことは何か |
| 生活 | 入浴、食事、服薬、活動量はどう変わったか |
| 安全 | 転倒や介助中の危険は減ったか |
| 家族 | 介護時間、睡眠、仕事への影響は変わったか |
| 費用 | 実際の月額と、得られた支援は見合っているか |
| サービス側 | 本人に合わない原因を変更できるか |
本人が一度「行きたくない」と言っただけで中止するのでも、家族が楽になったから無理に続けるのでもありません。
送迎時間が長い、集団活動が苦手、担当者との相性が合わないなど、サービスの種類ではなく事業所や利用時間を変えれば解決することもあります。
今日するのは、反対するきょうだいを説得することではありません
今日は、紙を一枚用意して次の三つを書いてください。
- 親にこの一か月で起きた具体的な出来事
- 家族が現在行っている介護と所要時間
- 介護サービスで一つだけ減らしたい危険や負担
たとえば、「入浴中に転びそうになった」「毎回40分、長女が介助している」「週1回だけ安全に入浴できる場所を使いたい」と書きます。
その紙を、親本人、きょうだい、ケアマネジャーが同じように見られる形にします。
反対意見を押し切ることが目的ではありません。
親の暮らしを続けるために必要な介護を、誰か一人の我慢だけへ預けないことが目的です。
全員が完全に納得するまで待つのではなく、本人が受け入れられる小さな支援を、期限を決めて試すところから始めてください。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」:利用者の希望に基づくケアプラン、説明、本人の同意、利用開始後の見直し。
- 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」:利用者本人によるサービス選択と主体的な参加。
- 厚生労働省「要介護認定に係る制度の概要」:要介護・要支援認定の目的と判定の流れ。
- 介護サービス情報公表システム:訪問、通所、宿泊、福祉用具など介護サービスの種類と訪問介護の範囲。
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」:地域包括支援センターと家族介護者への支援。
- 厚生労働省「仕事と介護の両立」:介護離職防止と職場の両立支援制度。
















