「今月も少しお願いできない?」という電話のあと、家計簿を開けなくなります
日曜の夜、離れて暮らす母親から電話がかかってきます。
「電気代が高くて、今月ちょっと足りないの。三万円だけ送ってもらえない?」
三万円なら、今月は何とか出せる。
そう思って振り込んだのは、これが初めてではありません。
先月は給湯器の修理、その前は通院のタクシー代。いつの間にか、毎月のように何か理由が増えています。
自分の家にも、住宅ローンや子どもの教育費があります。老後資金も十分とはいえません。配偶者からは、「いつまで続けるの」と聞かれています。
それでも、親へ「もう出せない」とは言いにくいものです。
「育ててもらったのだから、助けるのは当然ではないか」
「お金の使い方を聞いたら、親を疑っているように思われそう」
「兄弟へ話したら、押し付け合いになるかもしれない」
「断ったせいで、食事や薬を減らすことになったらどうしよう」
こうした迷いがあると、必要額を確かめないまま、頼まれるたびに送金しやすくなります。
しかし、毎月足りない家計へ、その都度お金を足すだけでは、不足がいつ終わるのか分かりません。
親を助けることと、子どもの家計が崩れるまで送り続けることは同じではありません。
最初に聞くのは「いくら必要?」ではなく「何が足りない?」です
親から生活費を頼まれたときは、不足の種類を分けます。
| 不足の種類 | よくある状況 | 援助前に見たいこと |
|---|---|---|
| 毎月の収入不足 | 年金だけでは家賃・食費・光熱費を賄えない | 毎月いくら不足し、今後も続くのか |
| 一時的な大きな支出 | 家電故障、住宅修繕、入院、冠婚葬祭 | 今回だけの費用か、今後も発生するか |
| 支払時期のずれ | 年金振込日前に税金や保険料の支払いが重なった | 不足ではなく、口座や支払日の管理で改善できないか |
| 固定費が重い | 高い家賃、保険料、通信費、車の維持費 | 契約や暮らし方を変える余地があるか |
| 家族への支出 | ほかの子や孫へ援助している | 子どもの仕送りが別の援助へ回っていないか |
| 借金・滞納 | カード、ローン、税金、公共料金の未払い | 残高、支払期限、延滞の有無 |
| 契約・詐欺被害 | 通販、定期購入、投資、訪問販売へ支払っている | 最近増えた引き落としや振込先 |
| 金銭管理の変化 | 同じ請求を何度も払う、現金の行方が分からない | 物忘れや判断力低下が関係していないか |
一時的な不足なら、一回の援助で落ち着くことがあります。
毎月の赤字なら、仕送り額を決める前に、親の暮らし全体を見直す必要があります。
通帳を見せてと言いにくいときは、自分の家計から話します
親子でも、お金の話には抵抗があります。
「通帳を見せて」と突然言えば、親は管理されるように感じるかもしれません。
まず、子ども側の事情と、知りたい理由を伝えます。
助けたくないわけではないよ。
ただ、うちにも毎月の支払いがあるから、頼まれるたびに金額を決めるのが難しくなってきたんだ。
これからも必要なら続けられる形にしたいので、年金と毎月の支出を一度だけ一緒に見せてもらえないかな。
親が「お金がない」と言ったことを責めるのではなく、今後も支えられる方法を考えるためだと伝えます。
一度にすべての資産を聞く必要はありません。最初は、毎月入るお金と、毎月出ていくお金から始めます。
親の一か月を、できるだけ実際の数字で書きます
「年金が少ない」「物価が高い」という言葉だけでは、いくら不足しているか分かりません。
| 毎月入るお金 | 金額 |
|---|---|
| 老齢・遺族・障害年金 | 通帳への実際の振込額を月額へ直す |
| 年金生活者支援給付金 | 受給していれば月額を記入する |
| 給与・事業収入 | 手取り額を記入する |
| 家賃収入など | 税金や管理費を差し引いた額を見る |
| ほかの家族からの援助 | 誰から、毎月いくら受け取っているか |
| 毎月出ていくお金 | 書き出す内容 |
|---|---|
| 住居費 | 家賃、住宅ローン、管理費、固定資産税の月割額 |
| 食費・日用品 | 現金だけでなくカードや宅配も含める |
| 光熱費 | 電気、ガス、水道の一年平均 |
| 通信費 | 携帯電話、固定電話、インターネット |
| 医療・薬 | 通院交通費、市販薬、歯科等も含める |
| 介護 | サービス利用料、食費、紙おむつ、送迎等 |
| 保険料 | 生命・医療・火災・自動車保険等 |
| 車 | ガソリン、駐車場、保険、車検、税金の月割額 |
| 交際・趣味 | 冠婚葬祭、習い事、贈り物等 |
| 借入返済 | ローン、分割払い、リボ払い等 |
年払いの税金や保険料は、支払った月だけの出費にせず、12か月で割ります。
一か月分だけでは季節差が大きいため、可能なら過去半年から一年の通帳、請求書、カード明細を使います。
年金の額は、本人の記憶ではなく振込通知や通帳で見ます
親が年金額を正確に把握していないこともあります。
年金は通常、複数月分がまとめて振り込まれるため、振込額をそのまま一か月の収入と考えないようにします。
所得が一定基準以下の年金受給者には、年金へ上乗せして年金生活者支援給付金が支給される場合があります。受給には要件があり、対象となる場合は請求手続きが必要です。
- 年金振込通知書
- 年金額改定通知書
- 年金生活者支援給付金の通知
- 通帳の振込記録
- 企業年金や個人年金の通知
届いている書類を一か所へ集め、未請求の給付がないか、年金事務所や自治体の窓口へ尋ねます。
食費を削る前に、毎月自動で引かれている固定費を見ます
高齢の親へ家計の見直しを頼むと、「もう十分節約している」と言われることがあります。
実際に、食事や冷暖房を我慢している場合もあります。
まず、生活に直結する食費や光熱費をさらに削るのではなく、契約による固定費を見ます。
| 固定費 | 見直す視点 |
|---|---|
| 携帯電話 | 使っていない端末、オプション、複数回線がないか |
| 固定電話 | 携帯電話と両方必要か |
| 有料放送・動画 | 見ていない契約が継続していないか |
| 新聞・通販 | 複数契約や定期購入がないか |
| 保険 | 同じ保障の重複、更新で上がった保険料 |
| 車 | 生活に必要か、維持費に見合っているか |
| 住まい | 家賃・管理費・修繕費を今後も負担できるか |
| 会費 | 利用していない団体、施設、サービスがないか |
子どもの仕送りで、使っていない契約を払い続ける状態になっていないかを見てください。
医療費と介護費は、請求額の前に使える制度を見ます
親の医療費が増えたことを理由に仕送りを求められた場合、領収書を見て実際の負担を確かめます。
公的医療保険には、同じ月の保険診療にかかる自己負担が所得・年齢別の上限を超えた場合に、超過分を支給する高額療養費制度があります。2026年8月以降は上限額などの見直しが予定されているため、加入する保険者へ最新の区分を尋ねてください。
介護保険サービスは、原則として費用の1割、一定以上の所得がある人は2割または3割を負担します。利用額が高額になった場合や所得が低い場合には、負担軽減の仕組みがあります。施設では、サービス利用料のほかに食費・居住費・日常生活費がかかる点も分けて考えます。
| 費用が増えた場面 | 尋ねる窓口 |
|---|---|
| 通院・入院費が高い | 加入する健康保険、病院の医療相談窓口 |
| 介護サービス費が高い | 市区町村の介護保険窓口、ケアマネジャー |
| 医療と介護の両方が重い | 医療保険者、市区町村の介護保険窓口 |
| 施設の食費・居住費が重い | 施設、市区町村の介護保険窓口 |
| 通院交通費が重い | 地域包括支援センター、自治体の高齢者支援窓口 |
制度の対象外となる費用もありますが、仕送りで全額を補う前に、軽減できる部分を分けます。
子ども側にも、援助してよい上限があります
親の家計を見たら、次は子ども自身の家計です。
「余ったら送る」ではなく、送った後も自分の生活が続く金額を出します。
| 仕送り前に残すお金 | 考える内容 |
|---|---|
| 毎月の生活費 | 食費、住居、光熱、通信、保険等 |
| 緊急予備費 | 病気、失業、家電故障等に備える現金 |
| 子どもの費用 | 教育、進学、独立支援等 |
| 住宅費 | ローン、修繕、固定資産税等 |
| 本人夫婦の老後資金 | 退職後の生活費や介護への備え |
| ほかの家族への負担 | 配偶者側の親、子ども、きょうだい等への援助 |
親への仕送りのために、カードローンを使う、子どもの教育資金を取り崩す、自分の年金保険料を払えなくなるのであれば、続けられる援助とはいえません。
一回だけなら出せる金額と、毎月出せる金額を分けてください。
援助額は、「親の不足額」と「子どもの上限」の小さい方から考えます
親の毎月の不足が四万円でも、子ども側が無理なく出せるのが一万円なら、四万円を全額負担する必要はありません。
親の毎月の不足額:4万円
子どもが無理なく出せる上限:1万円
残る不足:3万円
残りは、固定費の見直し、兄弟分担、公的制度、住まいの変更などを組み合わせて考える。
援助額を決めるときは、次の四つをセットにします。
- 月額はいくらか
- 何の費用へ使うか
- いつまで続けるか
- いつ見直すか
「とりあえず毎月三万円」ではなく、「電気・ガス代の不足分として、半年間は月一万円。三か月後に明細を見て見直す」と決めます。
現金の仕送りだけが、親を支える方法ではありません
| 援助方法 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 毎月定額を送金する | 不足額が安定し、親が自分で管理できる | 使い道が見えにくく、金額が固定化しやすい |
| 公共料金等を直接払う | 住居や光熱費を確実に支えたい | 名義や支払方法を本人の同意なく変えない |
| 医療・介護費だけ負担する | 生活費は足りるが、特定の費用が重い | 領収書や制度利用後の負担額を見る |
| 食品や日用品を届ける | 食事を減らしている、買い物が難しい | 本人が必要とする品を選ぶ |
| 一時的に貸す | 入金時期のずれなどで返済の見込みがある | 贈与か貸付けか、返済方法を曖昧にしない |
| 手続きや見直しを手伝う | 収入不足より、契約・管理に問題がある | 親の意思を尊重し、勝手に契約を変更しない |
現金を増やしても、親が何へ使ったか分からず、翌月も同じ不足が起きることがあります。
不足の原因に合う方法を選んでください。
親の自由まで奪わないよう、見る範囲を決めます
仕送りを始めると、「こちらがお金を出しているのだから、支出を全部説明してほしい」と感じることがあります。
一方、親にも、自分で使い道を決めたい気持ちがあります。
| 共有したい範囲 | 細かく管理しすぎない範囲 |
|---|---|
| 住居費、光熱費、医療・介護費 | 少額の趣味や交際費 |
| ローン、滞納、定期購入 | 毎日の食材を一品ずつ説明すること |
| 毎月の収入と総支出 | 現金の使い道を一円単位で追及すること |
| 大きな契約・送金 | 本人が無理なく使える小遣い |
親が自分で管理できているなら、「仕送り分が生活費へ使われているか」が分かる程度で十分な場合もあります。
小さな楽しみまで削ることを条件にすると、話し合いそのものを拒まれやすくなります。
兄弟姉妹では、同じ金額より続けられる役割を分けます
親への仕送りを一人で始めると、ほかの兄弟姉妹へ言い出す時期を失うことがあります。
後から負担が重くなって伝えると、「勝手に始めたことだ」と言われるかもしれません。
| 分担できる役割 | 具体例 |
|---|---|
| 毎月の送金 | 収入に応じて無理のない額を負担する |
| 医療・介護費 | 領収書を見て臨時費用を分担する |
| 家計の記録 | 通帳や請求書を親と一緒に見る |
| 契約の見直し | 携帯電話、保険、定期購入等を調べる |
| 買い物・通院 | 近くに住む人が移動を支える |
| 制度の調査 | 遠方の人が自治体や年金事務所へ問い合わせる |
| 緊急費の負担 | 住宅修繕や入院時だけ分担する |
全員が同額を負担する必要はありません。
収入、子育て、住宅ローン、健康、親との距離が違うため、金額と作業を組み合わせます。
母の生活費が毎月二万円ほど足りていないようです。
私が全額を出し続けるのは難しいので、一度きょうだいで話したいです。
送金できる額だけでなく、固定費の見直しや役所への問い合わせも含め、できる役割を一つずつ出してもらえないでしょうか。
仕送りを始めた人だけが、税金の扶養控除を受けられるとは限りません
別居している親でも、常に生活費や療養費を送金しているなど「生計を一にする」と認められ、親の所得などの要件を満たす場合は、扶養控除の対象となる可能性があります。
国税庁は、別居する親への送金事実を、銀行振込の記録や現金書留の写しなどで確かめることを勧めています。
兄弟姉妹が共同で仕送りしていても、同じ親を複数人が重複して扶養控除の対象にすることはできず、対象にできるのは一人です。
- 誰が扶養控除の申告をするか
- 親の年金・給与などの所得はいくらか
- ほかの人の扶養親族になっていないか
- 送金記録を残しているか
- 親と「生計を一にする」状態といえるか
税制改正や親の収入によって扱いが変わるため、年末調整や確定申告の前に勤務先、税務署、税理士等へ個別にご確認ください。
親へ送った生活費には、贈与税がかからない場合があります
親子など扶養義務者の間で、通常必要と認められる生活費を、必要な都度その費用へ充てるために渡した場合は、原則として贈与税がかかりません。
一方、数年分を一括して渡し、生活費に使われず預貯金や投資等として残った部分には、贈与税がかかる場合があります。
| 渡し方 | 注意点 |
|---|---|
| 毎月必要な生活費を送る | 送金日、金額、目的を記録する |
| 医療費を直接払う | 領収書を保管する |
| 家賃・光熱費を負担する | 契約名義と支払内容を残す |
| 数年分をまとめて渡す | 未使用分が贈与として扱われる可能性を確認する |
| 返してもらう前提で渡す | 貸付条件と返済記録を残す |
日常生活に必要な範囲かどうかは、親の必要性や子どもの資力などを含めて判断されます。
大きな金額をまとめて渡す場合や、住宅購入・借金返済へ使う場合は、送金前に税務の窓口へ尋ねてください。
毎月の仕送りは、記録がないと兄弟にも自分にも説明できなくなります
送金を始めたら、難しい帳簿を作る必要はありません。
| 記録すること | 例 |
|---|---|
| 送金日 | 毎月25日 |
| 金額 | 10,000円 |
| 目的 | 食費・光熱費の不足分 |
| 臨時援助 | 給湯器修理として50,000円 |
| 親の収入変化 | 年金改定、給付開始、家賃収入等 |
| 次回見直し日 | 10月末 |
現金を手渡す場合も、日付と金額をメモします。
記録は親を責めるためではなく、子どもがいくら負担しているか、同じ援助を続けられるかを判断するためのものです。
突然必要額が増えたら、生活費以外の問題も考えます
これまで月一万円で足りていたのに、急に五万円、十万円と頼まれるようになった場合は、理由を急いで確かめます。
- 同じ商品を何度も注文している
- 知らない会社から引き落としがある
- ATMで頻繁に現金を下ろしている
- 投資や副業のために振り込んでいる
- 訪問販売の契約書が増えている
- 公共料金や税金を二重に払っている
- 通帳や印鑑の場所が分からなくなっている
- お金を渡したこと自体を覚えていない
認知機能の変化、消費者被害、親族による金銭の持ち出しなどが疑われる場合は、仕送りだけを増やさないようにします。
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、生活、福祉、介護、権利擁護などの相談を受け、必要な制度や機関へつなぐ役割があります。親の住む地域を担当するセンターへ、家族から相談することもできます。
親が家計を見せてくれないときは、無制限に送らない方法を選びます
「親のお金に口を出すな」と拒まれることもあります。
親が自分で暮らしを管理できているなら、その意思は尊重します。
ただし、子どもにも、事情が分からないまま希望額を送り続けない選択があります。
細かい支出まで知りたいわけではないよ。
でも、毎月いくら足りないのかが分からないまま送金を増やすことはできないんだ。
家計を一緒に見るのが嫌なら、今月は電気代だけこちらで払う形にしたい。
親が資料を見せない場合は、次のように範囲を限定できます。
- 現金ではなく、公共料金だけを負担する
- 食料や日用品を届ける
- 一回の援助上限を決める
- 次回の援助まで一定期間を空ける
- 自治体の相談窓口へ一緒に行くことを条件にする
緊急の食事や医療を放置する必要はありませんが、資料を見せないたびに送金額を増やす形にはしないようにします。
仕送りだけで生活が成り立たないなら、家族の外へつなげます
親の収入が少なく、固定費を見直しても毎月の不足が大きい場合は、子どもの送金だけで支えるのが難しくなります。
生活困窮者自立支援制度では、地域の窓口で生活全般の相談を受け、家計の立て直し、住まい、仕事など、本人の状況に応じた支援を行っています。
| 困っていること | つながる先の例 |
|---|---|
| 毎月の家計が赤字 | 自治体の生活困窮者自立相談支援窓口 |
| 年金や給付を調べたい | 年金事務所、市区町村の年金窓口 |
| 高齢者の暮らし全般 | 地域包括支援センター |
| 家賃や住まいが重い | 自治体の福祉・住宅相談窓口 |
| 医療費が重い | 加入する健康保険、病院の相談窓口 |
| 介護費が重い | 市区町村の介護保険窓口、ケアマネジャー |
| 借金や滞納がある | 自治体の多重債務相談、法的支援の窓口 |
子どもが窓口を調べ、予約を取り、親へ同行することも援助の一つです。
生活保護は、「子どもへ頼んでからでないと申請できない」制度ではありません
親の年金や資産だけでは最低限の生活を維持できず、子ども側も援助を続けられない場合、生活保護の相談をためらうことがあります。
生活保護では、利用できる資産、年金などほかの制度、親族から受けられる援助などを調べたうえで、世帯の収入が最低生活費に満たない場合に差額が支給されます。
一方、厚生労働省は、同居していない親族へ先に相談してからでなければ生活保護を申請できない、というものではないと案内しています。扶養義務者から扶養を受けていること自体も、申請の必須条件ではありません。
「子どもがいるから申請できない」と家族だけで結論を出さず、親の居住地を担当する福祉事務所へ現在の収入・資産・家族の援助可能額を伝えてください。
子どもには扶養義務がありますが、仕送り額が一律に決まるわけではありません
直系血族や兄弟姉妹には、法律上、相互に扶養義務があります。
ただし、親へ毎月いくら払うかが全国一律に決まっているわけではありません。話し合いがまとまらない場合の家庭裁判所の手続でも、親の必要性だけでなく、それぞれの扶養義務者の経済状況や生活状況、本人の意向などを踏まえて検討されます。
生活保護の運用でも、親子間の扶養の程度は、子ども側にふさわしい生活を損なわない限度を考慮する扱いが示されています。
「子どもなのだから、親の不足をすべて埋めなければならない」と考える必要はありません。
本人の暮らし、配偶者や子どもへの責任、自分の健康や老後も含め、実際に続けられる範囲を考えます。
夫婦の意見が違うときは、親への気持ちではなく家計の線を決めます
親へ仕送りしたい本人と、家計を心配する配偶者が対立することがあります。
「親を見捨てろと言うのか」
「うちの家族より親を優先するのか」
この言い合いになる前に、援助の上限を数字で話します。
親を助けたい気持ちはある。
ただ、私たちの生活費や老後資金を崩してまで送るつもりはない。
まず半年間は月一万円を上限にして、その間に親の固定費と使える制度を調べたい。
臨時に大きな金額が必要なときは、送る前に二人で話そう。
| 夫婦で決めること | ルール例 |
|---|---|
| 毎月の上限 | 家計から月1万円まで |
| 臨時援助 | 3万円を超える場合は事前に話す |
| 使わないお金 | 教育資金、住宅修繕費、老後資金には手を付けない |
| 援助期間 | まず半年間 |
| 見直し | 親の収支と子ども側の家計を三か月ごとに見る |
親を支える気持ちを否定せず、夫婦の生活を守る境界も同時に作ります。
仕送りは、親が亡くなるまで同じ額を続ける約束にしません
援助を始めるときは、終了や変更の条件も伝えます。
| 見直す出来事 | 考えること |
|---|---|
| 年金や給付が増減した | 毎月の不足額を計算し直す |
| 固定費を減らせた | 仕送り額を減らせるか |
| 子ども側の収入が下がった | 一時停止や減額を伝える |
| 親が入院・施設入所した | 生活費と医療・介護費を分け直す |
| 兄弟の状況が変わった | 金額や役割の分担をやり直す |
| 住まいが変わった | 家賃・維持費・交通費を見直す |
| 不審な支出が見つかった | 送金を増やす前に、契約や金銭管理を調べる |
減額するときも、突然振込を止めるより、理由と時期を伝えます。
こちらの収入が変わったので、来月から今の金額は続けられなくなりました。
月一万円を五千円に減らし、その代わりに携帯電話と保険の見直しを一緒に進めたいです。
今日するのは送金額を決めることではなく、一か月分の不足を見つけることです
親から頼まれると、すぐ振り込むか断るかを決めなければならないように感じます。
今日は、次の三つだけを行ってください。
- 今回、何の支払いが足りないのかを聞く
- 年金の月額と、住居費・光熱費・医療費を書き出す
- 子ども側が半年間続けられる月額上限を決める
親の家計が分からない場合は、「通帳を全部見せて」ではなく、直近一か月の請求書と年金の振込額だけを一緒に見ます。
毎月の不足が分かれば、現金を送る、固定費を払う、兄弟へ役割を頼む、制度へつなぐという方法を比べられます。
仕送りを減らすことが、親を見捨てることではありません。
親が必要な暮らしを続けられ、子どもも自分の家族と老後を守れる形に変えることです。
まずは次の送金をする前に、「このお金で何を払い、来月も同じ不足が出るのか」を一つだけ聞いてみてください。
出典・確認先メモ
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金」:所得が一定基準以下の年金受給者への給付と請求手続き。
- 厚生労働省「高額療養費制度」:保険診療の自己負担上限と2026年8月以降の見直し。
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」:家計、住まい、仕事など生活全般への支援。
- 厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」:申請と扶養義務者に関する案内。
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」:地域包括支援センターによる総合相談と権利擁護。
- 国税庁「扶養控除」:別居する親への継続的な送金、送金記録、兄弟間の重複適用。
- 国税庁「贈与税がかからない場合」:扶養義務者間の通常必要な生活費と、一括贈与の扱い。


















