家賃の督促状と電気の停止予告、どちらから手を付けるか分からない
家賃の支払期限を過ぎ、電気料金の停止予告も届いている。通帳を見ると、次の年金日や給料日まで使えるお金は数千円しかない。
仕事を探さなければと思っても、親御さんの介護や自分の体調があり、すぐに働ける状態ではない。きょうだいへ頼るのも難しい。
一つずつなら自分で何とかできたかもしれません。けれど、家賃、光熱費、借金、仕事、介護が同時に重なると、どこへ相談しても「それは別の窓口です」と言われそうで、電話をかけられなくなります。
生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関は、このように問題が一つへ分けられないときの入口です。
最初から制度名を知っている必要はありません。
「家賃と電気料金が払えず、仕事もすぐには始められません。何から手を付ければよいか分からないです」
この言い方で構いません。支援員が生活の状況を聞き、期限の近い問題から順に扱います。
自立相談支援機関は、現金を受け取るだけの窓口ではありません
制度名に「自立」とあるため、仕事を探す人だけの制度だと思われることがあります。
しかし、ここでいう支援は、すぐに就職することだけを目的にしていません。
家賃を払える状態を保つ。家計を立て直す。昼夜逆転した生活を整える。介護や病気と両立できる働き方を探す。家族以外とのつながりを作る。こうした生活の土台も含めて考えます。
一方で、相談へ行けば、その日に生活費が支給されるとは限りません。
自立相談支援機関は、現在の状態を見たうえで、利用できる給付や支援、別の公的窓口を組み合わせる場所です。住居確保給付金など、金銭の支給を伴う制度には、収入、資産、離職や減収の状況などの要件があります。
自分が対象かどうかを、相談前に決める必要はありません。相談する段階と、個別制度の審査を受ける段階は別です。
「どの制度を申請するか分からないから相談できない」のではなく、どの制度が合うか分からない状態だからこそ、自立相談支援機関を入口にできます。
家賃・仕事・借金だけでなく、生活の絡まった部分をまとめて話せます
| 今困っていること | 窓口で一緒に考えられること | その場で約束されるわけではないこと |
|---|---|---|
| 家賃を滞納している、退去を求められそう | 住居確保給付金の対象確認、貸主への連絡順序、住まいに関する別の支援 | 滞納家賃が必ず全額支給されること |
| 収入が減り、生活費が足りない | 利用できる給付、家計改善、福祉事務所や社会福祉協議会などへの接続 | 相談当日に現金を受け取れること |
| 借金や税金、公共料金の滞納がある | 家計表の作成、支払いの優先順位、債務相談や各支払先へのつなぎ | 借金や滞納が自動的に免除されること |
| 働きたいが、体調や対人関係が心配 | 生活リズムづくり、就労準備、就労体験、ハローワーク等との連携 | すぐ一般就労を始めるよう強制されること |
| 住む場所がない、友人宅やネットカフェを転々としている | 一時的な宿泊場所や衣食、今後の住まいと就労に向けた支援 | 希望する住宅へすぐ入居できること |
| 子どもの学習や進学、生活習慣が心配 | 学習支援、居場所、進学や中退防止、保護者を含めた生活支援 | すべての自治体で同じ事業を利用できること |
地域によって実施している事業や名称は異なります。
たとえば、自治体の「くらしの相談窓口」「生活支援センター」「自立相談支援窓口」、社会福祉協議会などが自立相談支援機関になっていることがあります。
窓口名が分からない場合は、市区町村の代表電話へ次のように聞いてください。
「生活困窮者自立支援制度の相談を受ける、自立相談支援機関につないでください」
今日を越せない状態は、最初の一言で伝えます
困っている内容だけでなく、いつまで待てるかによって対応の順番が変わります。
数週間から数か月かけて立て直せる状態
収入は減っているが、今日の食事と寝る場所はある。来月以降の家賃や返済が心配。この場合は、収入、支出、今後の働き方を含む支援計画を考えられます。
一人で支払先と交渉するのが難しい状態
家賃の督促、公共料金の停止予告、税金の催告、借金の返済日など、期限が迫っている場合です。
封筒を全部説明しようとせず、最も近い日付を伝えてください。
「電気が三日後に止まるという通知と、家賃の督促があります。手元のお金では両方払えません」
支援員が、どの相手へ先に連絡するか、別の窓口が必要かを一緒に分けます。
今日の食事や寝る場所がない状態
食べるものがない。今夜泊まる場所がない。屋外や車内で過ごしている。必要な薬を買えない。
この場合は、「生活が苦しい」とだけ言わず、今日必要なものを最初に伝えます。
「今日食べるものがなく、今夜泊まる場所もありません。今日中に利用できる支援があるか教えてください」
地域の居住支援、福祉事務所、食料支援などへつながる可能性があります。ただし、利用条件や受入状況は地域によって異なります。
暴力から逃げている、誰かに追われている、命や身体に危険がある場合は、一般的な生活相談より安全確保を優先します。差し迫った危険があれば110番、急病やけがであれば119番へ連絡してください。
最初の相談で、生活のすべてを説明する必要はありません
初回の相談では、支援員が現在の住まい、収入、仕事、家族、健康状態、滞納などを尋ねることがあります。
質問が多いと、責められているように感じるかもしれません。けれど、家賃だけを解決しても、収入や介護の問題が残れば、再び払えなくなる可能性があります。
生活全体を聞くのは、どこから直せば負担が減るかを考えるためです。
分からないことは、分からないままで構いません。
「借金の正確な残高は、まだ見られていません」
「体調が悪い理由は分かりませんが、朝起きられず仕事を休んでいます」
「親の介護費と自分の生活費が混ざり、月にいくら必要なのか把握できていません」
この状態から、必要な事実を一つずつ確かめます。
継続的な支援が必要な場合は、本人の希望を聞きながら支援プランを作り、住まい、仕事、家計などの支援へつなぎます。利用後も状況を見直し、必要に応じて計画を変更します。
相談は無料です。相談内容の扱いや、他の機関へどの範囲まで伝わるかが気になる場合は、詳しい事情を話す前に尋ねられます。
「相談内容はどのように記録され、別の窓口へつなぐときは何が共有されますか」
書類が全部そろうまで、電話を延期しなくて構いません
給付金などを申請する段階では、本人確認、収入、預貯金、家賃、離職や減収を示す書類が必要になることがあります。
ただし、最初の相談前から、すべてを完璧に集める必要はありません。
手元にある場合は、次のものを一か所へ置いておくと話しやすくなります。
- 家賃や公共料金、税金、借金などの通知書
- 給与明細、年金の通知、離職票など収入が分かるもの
- 預貯金の残高が分かる通帳や画面
- 賃貸借契約書
- 本人確認書類
- 通院、介護、子育てなど、働き方に関係する書類
書類が見つからない場合も、そのことを伝えてください。
「通知が何通か届いていますが、開けていないものもあります。手元にある封筒だけ持って行ってもよいですか」
相談員が、先に開くもの、再発行が必要なもの、まだ用意しなくてよいものを分けられる場合があります。
家計改善支援は、節約を説教される場所ではありません
家計の相談と聞くと、「無駄遣いを責められる」「携帯電話や車をすぐ手放すよう言われる」と身構える方がいます。
家計改善支援では、収入と支出を見える形にし、なぜ毎月足りなくなるのかを一緒に確かめます。
問題が使い方だけとは限りません。
収入が少ない。医療費が続いている。家族の借金を立て替えている。年金や手当を申請していない。複数の返済日があり、毎月の流れが崩れている。
背景が分かれば、次のような対応を検討できます。
- 滞納している税金や公共料金の窓口へつなぐ
- 利用できる給付や減免を調べる
- 借金について法律相談などへつなぐ
- 毎月の返済日と生活費を分ける
- 必要に応じて公的な貸付制度の窓口を案内する
自立相談支援機関や家計改善支援の担当者が、借金を帳消しにしたり、金融機関に代わって契約を変更したりするわけではありません。
それでも、複数の支払先を一人で回るより、「どこから連絡するか」を一緒に決められることに意味があります。
住まいの相談では、滞納後だけでなく失う前にも話せます
住居確保給付金は、離職や廃業、本人の責任によらない収入減少などによって、住居を失った方や失うおそれがある方を対象とする支援です。
収入や預貯金、求職活動などの要件があり、相談した全員が受給できるわけではありません。
それでも、まだ退去を求められていない段階から相談できます。
「今月は払えますが、来月から家賃が足りない見込みです」
この時点で、対象要件や必要書類、貸主への連絡方法を確かめられます。
また、家賃が家計を圧迫しており、より低い家賃の住居へ移ることが生活再建に必要と認められる場合には、条件により転居費用の補助を検討できることもあります。
家賃補助と転居費用補助では要件や対象経費が異なるため、「住居確保給付金を使いたい」と決めてから相談するのではなく、現在の住まいを維持する方がよいのか、転居を考える状態なのかから話してください。
すぐ働けない理由があっても、仕事の相談から外されるわけではありません
家族の介護がある。長く家にいたため、人と話すのが怖い。体調を崩して退職し、朝起きるところから難しい。
その状態で、すぐ求人へ応募するよう言われても続きません。
就労準備支援では、生活リズムを整える、外出に慣れる、人と関わる練習をする、短い作業を体験するといった段階から始められる場合があります。
就労訓練では、一般の職場へ直ちに入ることが難しい方に、支援を受けながら働く機会を用意する仕組みもあります。
相談時には、できない理由を隠さず伝えてください。
「働く気持ちはありますが、母の介護で毎日決まった時間には出られません。今できる働き方と、介護の負担を減らす方法を一緒に考えたいです」
仕事だけでなく、介護保険、医療、家族の役割分担など、働けない背景へつなぐことも生活支援の一部です。
家族は本人を連れて行けなくても、先に話を聞けます
親御さんが家賃を滞納している。成人した子どもが仕事を辞め、部屋から出なくなった。配偶者が借金の通知を隠している。
本人が窓口へ行くことを拒んでいても、ご家族や周囲の方から相談を始められます。
ただし、本人の収入、借入状況、支援歴などの個別情報については、家族でも教えてもらえない場合があります。
家族からは、見聞きした事実と、今起きそうなことを伝えてください。
「離れて暮らす父の家に家賃の督促状がありました。本人は大丈夫と言いますが、電話も止まりそうです。家族が先にできることと、本人への声のかけ方を聞きたいです」
本人を説得して連れて行く方法だけでなく、訪問や別機関との連携が可能か、どの程度の切迫性があるかを相談できます。
家族も生活費を出し続けて苦しくなっている場合は、その負担を隠さないでください。
「助けたいのですが、私の家庭でもこれ以上の仕送りはできません」
家族が限界を超えて支え続けることを前提にせず、本人と家族の生活を分けて考えます。
食事・住まい・医療を保てない状態では、生活保護も同時に考えます
生活困窮者自立支援制度は、生活保護を受ける前の段階で生活を立て直す支援として利用されることが多い制度です。
ただし、すでに収入や資産だけでは最低限の生活を維持できず、食事、住まい、医療を確保できない場合は、生活保護の相談を先送りしません。
生活保護の相談・申請先は、現在いる地域を担当する福祉事務所です。必要な書類が全部そろっていなくても、住む場所がなくても申請できます。
親族へ先に頼まなければ申請できない、という制度でもありません。
自立相談支援機関で状況を伝えた結果、生活保護が適切と考えられる場合は、福祉事務所へつないでもらうことがあります。
「今日の食費がなく、家賃も払えません。生活困窮者自立支援制度と生活保護のどちらを進める状態か、すぐに判断してほしいです」
相談したからといって、自動的に生活保護が決まるわけではありません。反対に、恥ずかしさから自立相談だけを続け、最低限の生活を失うまで待つ必要もありません。
今日は自治体名と「自立相談支援機関」で検索し、電話番号だけ保存します
制度を全部理解してから連絡する必要はありません。
スマートフォンで、親御さんやご本人が現在住んでいる市区町村名と「自立相談支援機関」を入力してください。
窓口名、電話番号、受付日を一つだけ保存します。
明日伝える言葉は、次の一文で十分です。
「家賃、生活費、仕事の問題が重なり、どこから手を付ければよいか分かりません。自立相談支援の初回相談を受けたいです」
今日の食事、寝る場所、公共料金の停止、退去など、期限が近い問題があれば、その一文の後へ加えます。
今夜、借金の総額や家計を完成させなくても構いません。窓口の電話番号と、最初に伝える言葉が決まれば、ばらばらに見えていた問題を一か所からほどき始められます。














