子どもの名前を開いたまま、メッセージを送れずに閉じました
年金が入ったばかりなのに、口座には思っていたほど残っていません。
固定資産税、医療費、給湯器の修理代が重なり、来月の家賃や公共料金まで払うと、食費が足りなくなりそうです。
子どもへ連絡しようとスマートフォンを開きました。
「少し相談したいことがある」と入力したところで、指が止まります。
子どもにも住宅ローンや教育費があることは分かっています。結婚している子どもなら、配偶者にどう思われるかも気になります。
「育てた子どもに、今度は自分が養ってもらうのか」
「家計の管理ができない親だと思われるのではないか」
「一度頼ったら、ずっと迷惑をかけることになる」
「お金の話をしたら、関係まで悪くなるかもしれない」
そう考えて、支払いをクレジットカードへ回したり、食事や通院を減らしたりしてしまう人もいます。
けれど、子どもへ話すことと、子どもに生活の全責任を負わせることは同じではありません。
お金を出してもらう前に、請求書を一緒に見る、制度を調べてもらう、窓口へ同行してもらうという頼み方もあります。
子どもへ何を頼みたいのかを、最初に分けます
| 頼みたいこと | 具体的な内容 | 子どもへ伝える言葉 |
|---|---|---|
| 話を聞いてほしい | 不安を一人で抱えず、状況を共有したい | すぐにお金を頼む話ではなく、まず状況を聞いてほしい |
| 家計を見てほしい | 支出の重複や見落としを一緒に探す | 通帳と請求書を一緒に見てもらえないかな |
| 手続きを手伝ってほしい | 年金、保険料、減免、福祉制度などを調べる | 制度が複雑で分からないので、窓口へ一緒に行ってほしい |
| 一時的に立て替えてほしい | 税金、修理、医療費など期限のある支払い | 今月だけ__円不足している。返し方も含めて相談したい |
| 一定期間援助してほしい | 収入が整うまで毎月決めた額を支援してもらう | __月まで月__円をお願いできるか考えてほしい |
| 今後の暮らし方を話したい | 住まい、仕事、車、介護などを含めて見直す | 毎月の不足が続くので、今後の暮らしを一緒に考えたい |
「生活費に困っている」とだけ伝えると、子どもは、今月だけなのか、毎月続くのか、いくら必要なのか分かりません。
分からないままでは、「自分がすべて支えなければならないのでは」と身構えることがあります。
今すぐ金銭援助が必要なのか、それとも一緒に考えてほしいのかを先に示すと、話を始めやすくなります。
話す前に、一枚の紙へ五つの数字を書きます
| 書くこと | 金額・内容 |
|---|---|
| 毎月入るお金 | 年金、給与、その他 合計__円 |
| 毎月必要な生活費 | 住居、食費、光熱、医療等 合計__円 |
| 年に数回払うお金の月割り | 税金、保険、車、修繕等 月__円 |
| 現在の不足額 | 毎月__円/今月だけ__円 |
| 支払期限が近いもの | __月__日までに__円 |
家計簿を何年分も作り直す必要はありません。
直近二、三か月の通帳、請求書、年金振込通知書などから、分かる範囲で書きます。
数字を出す目的は、自分の落ち度を証明することではありません。
今月の一時的な不足なのか、収入より支出が多い状態が続いているのかを区別するためです。
毎月の収入 __円
毎月の支出 __円
通常月の不足 __円
今月だけ必要な支払い __円
自分で見直したことも、二つだけ添えます
子どもは、援助を始めた後も不足が広がり続けないかを心配します。
そこで、すでに取り組んだことや、これから調べることを伝えます。
- 使っていない通信や定期購入を解約した
- 保険料や税金の分割・減免を問い合わせる
- 車を今後も維持するか検討している
- 年金額や受け取れる給付を確かめる
- 短時間でできる仕事を探している
- 家計相談の窓口へ行く予定を立てた
すべての節約を終えてから話す必要はありません。
「自分でも何とかしようとしているが、一人では行き詰まっている」と伝われば十分です。
最初の言葉は、「お金を出して」ではなく状況の共有から始めます
少し話したいことがあります。
今月、医療費と家の修理が重なり、生活費が__円ほど足りなくなる見込みです。
すぐにお金を出してほしいと決めているわけではなく、まず通帳と支払いを一緒に見てほしいです。
電話で突然切り出すのが難しい場合は、先に短いメッセージを送ります。
生活費のことで相談したいことがあります。
急いで振り込んでほしいという話ではありません。
今週、30分ほど落ち着いて話せる時間をもらえないかな。
「大変なことになった」「もう暮らしていけない」とだけ送ると、子どもは何が起きたのか分からず、強い不安を感じます。
緊急でなければ、相談内容と必要な時間を短く伝えてから話します。
金額を頼む場合は、「いくら・いつまで・何のため」を示します
| 曖昧になりやすい頼み方 | 伝え直す例 |
|---|---|
| 少し助けてほしい | 今月の医療費で3万円不足している |
| しばらくお願いしたい | 年金の手続きが終わる10月まで、月2万円をお願いできないか |
| 余裕ができたら返す | 12月から毎月5,000円ずつ返したい |
| 生活が苦しい | 年金が月12万円、必要支出が14万円で、毎月2万円不足している |
| できる範囲でいい | 金銭援助が難しければ、制度を一緒に調べてほしい |
必要額が分からないまま、多めに頼む必要はありません。
反対に、遠慮して少なすぎる額を頼み、翌週またお願いする形になると、双方の負担が増えます。
一回限りの費用と、毎月続く不足は分けて話してください。
借りるのか、もらうのかを曖昧にしないようにします
| 援助の形 | 決めておきたいこと |
|---|---|
| 立替え | 何を代わりに払ってもらい、いつ精算するか |
| 貸してもらう | 金額、返済開始、毎月の返済額 |
| 返済不要の援助 | 一回限りか、期間を決めるか |
| 現物で助けてもらう | 食料、日用品、公共料金の支払いなど |
| 複数の子どもで分担 | 金銭、手続き、通院同行などの役割 |
親は借りたつもりでも、子どもは返済不要だと思っていることがあります。
反対に、子どもは貸したつもりなのに、返済の話を出しにくくなることもあります。
家族間だから書面は不要と決めず、日付、金額、返済の有無を簡単なメモに残します。
大きな金額や長期間の援助になる場合は、税金やほかの家族との関係にも影響する可能性があるため、必要に応じて税務署などの公式窓口へ扱いを確認してください。
子どもがすぐ返事をできないのは、冷たいからとは限りません
子どもにも、配偶者との家計、住宅ローン、教育費、自分たちの老後があります。
親へ援助したい気持ちがあっても、その場で即答できないことがあります。
突然の話だから、今日返事を決めなくて大丈夫です。
家族とも話して、__日ごろまでに、できることと難しいことを教えてください。
「子どもなのだから助けて当然」と迫らず、検討する時間を渡します。
一方、支払期限が迫っている場合は、その日だけは明確に伝えます。
公共料金の期限が__日なので、それまでに援助が難しいかだけ教えてもらえると助かります。
難しい場合は、明日自治体の窓口へ行きます。
断られたときは、人格ではなく「できる範囲」の違いとして受け止めます
勇気を出して話したのに、「うちにも余裕がない」と言われれば、情けなさや怒りがこみ上げることがあります。
けれど、子どもが金銭援助をできないことと、親を大切にしていないことは同じではありません。
| 子どもの返事 | 次に頼めること |
|---|---|
| お金は出せない | 家計表を一緒に見る、窓口を調べる |
| 毎月は難しい | 一回限りの支払い、期間を限定した援助 |
| 配偶者と話したい | 返事の期限を決めて待つ |
| ほかのきょうだいにも話してほしい | 同じ資料を使い、全員へ同じ説明をする |
| 公的窓口を先に使ってほしい | 予約や同行を頼む |
分かった。無理をさせたいわけではないよ。
お金が難しければ、市役所の相談先を調べることか、通帳を一緒に見ることを手伝ってもらえないかな。
言わない方がよいのは、子どもの罪悪感を使う言葉です
| 避けたい言い方 | 話し直す例 |
|---|---|
| あなたを育てるのにいくらかかったと思っているの | 今の家計について、できる範囲を一緒に考えてほしい |
| 親を見捨てるの | 援助が難しい理由も聞かせてほしい |
| 兄は出してくれたのに | それぞれ事情が違うので、できることを教えてほしい |
| あなたの配偶者には言わなくていい | 家庭のお金なので、必要なら家族と話してほしい |
| 誰にも言わないで | 必要な範囲で、きょうだいとも共有したい |
| もう死ぬしかない | 一人では抱えきれないので、今日中に窓口へつないでほしい |
子どもを責めれば、一時的にお金を出してくれるかもしれません。
しかし、その後の連絡が減ったり、配偶者やきょうだいとの対立が強くなったりすることがあります。
親子関係を守るためにも、事実、希望、相手が選べる余地を分けて伝えます。
複数の子どもがいるときは、一人だけを秘密の援助役にしません
近くに住む長女へだけ頼み、遠方の長男には知らせないということがあります。
日頃から頼りやすい子どもへ連絡するのは自然ですが、毎月の援助や大きな金額になる場合は、一人へ負担が偏りやすくなります。
| 分担できること | 例 |
|---|---|
| 金銭的な支援 | 一回の立替え、月額援助 |
| 家計の見直し | 請求書、保険、通信費を調べる |
| 公的手続き | 予約、書類作成、窓口同行 |
| 生活の支援 | 買い物、通院、食事の手配 |
| 定期連絡 | 月一回、家計と体調を聞く |
すべての子どもが同額を出す必要はありません。
金銭を出せる人、手続きが得意な人、近くで様子を見られる人に分ける方法があります。
生活費が毎月__円不足しており、今後のことをきょうだい全員へ同じ内容で話したいです。
お金だけでなく、家計の確認や手続きも含め、できることを分けて考えてもらえないでしょうか。
子どもへ見せたくない支出があるほど、先に書き出します
家計を見せるのが恥ずかしい理由には、知られたくない支出がある場合もあります。
- 通販や定期購入をやめられない
- 知人や親族へ援助している
- カードローンやリボ払いがある
- 占い、投資、寄付などへ多く支払った
- 保険へ入りすぎている
- 子どもへ内緒の借入れがある
責められるのが怖くても、ここを隠したまま不足額だけ伝えると、子どもは正しい判断ができません。
細かい経緯を最初からすべて話せなくても、毎月の返済額と残高は伝えます。
話しにくかったのだけれど、生活費のほかに毎月__円の返済があります。
残額は約__円です。
隠したまま援助を頼むのは違うと思い、先に伝えることにしました。
生活費を借金でつなぐ前に、子どもか公的窓口へ話します
子どもへ知られるくらいなら、カードローンで借りようと考えることがあります。
しかし、毎月の収入自体が不足している状態では、借りた翌月に返済が加わり、さらに生活費が足りなくなります。
年金を担保に融資するという業者にも注意が必要です。公的な年金担保貸付制度は2022年3月末で新規申込みを終了しており、それ以降、年金受給権を担保とする融資は違法です。消費者庁は、生活資金や多重債務に困っている場合、自立相談支援機関や多重債務相談窓口へ連絡するよう案内しています。
借金がすでにある場合は、子どもに肩代わりを頼む前に、残高、金利、毎月の返済額を一覧にします。
法テラスでは、借金などの法的トラブルについて情報提供を行い、収入や資産が一定基準以下の場合には、無料法律相談や弁護士・司法書士費用等の立替制度を利用できる場合があります。
子どもへ頼る前後に、家計を一緒に立て直す公的窓口を使えます
生活困窮者自立支援制度では、仕事、家賃、家計など生活上の困りごとを受け付け、状況に応じた支援につなげています。
家計改善支援では、収支の見える化、滞納の解消、利用できる給付制度、債務整理に関する支援、必要に応じた貸付のあっせんなどが行われます。窓口が分からない場合は、居住する市区町村へ「自立相談支援機関を知りたい」と尋ねられます。
| 困っていること | 相談先の候補 |
|---|---|
| 家計のどこを直せばよいか分からない | 自治体の自立相談支援機関・家計改善支援 |
| 受け取っている年金の内容が分からない | 年金事務所・街角の年金相談センター |
| 低所得者・高齢者向けの貸付を確認したい | 市区町村または都道府県の社会福祉協議会 |
| 借金の返済が生活を圧迫している | 法テラス、多重債務相談窓口 |
| 収入や資産を使っても生活できない | 居住地を管轄する福祉事務所 |
年金事務所等では、受給中の年金、年金記録、見込額などについて相談でき、窓口での予約相談も行われています。
生活福祉資金は、低所得者、高齢者、障害者などを対象とする貸付制度で、利用目的や世帯状況などに要件があります。給付金ではなく返済が必要な貸付もあるため、子どもから借りる場合と同じように、今後返せるかまで含めて相談します。
生活そのものが維持できないときは、子どもの返事を待ち続けません
次の状態なら、家族だけで何とかすることにこだわらず、早めに自治体へ伝えます。
- 今週の食費がない
- 家賃や住宅費の滞納で住まいを失うおそれがある
- 電気・ガス・水道の停止予告が届いた
- 必要な通院や薬を中断している
- 借金を返すために別の借入れをしている
- 子どもも援助できる状態ではない
生活保護は、生活に困窮する人の最低限度の生活を保障し、自立を支援する制度です。必要書類がすべてそろっていなくても申請でき、相談・申請先は居住地を管轄する福祉事務所です。
年金収入は月__円で、現在使える預金は__円です。
__日までに家賃・公共料金等__円が必要ですが、家族からの援助は難しい状況です。
利用できる制度と、生活保護を含む今後の手続きを説明してほしいです。
子どもへ相談したかどうかだけで、利用できる制度が決まるわけではありません。
自分と家族の状況をそのまま伝え、制度の対象になるかは窓口で個別に確認します。
子どもの立場では、すぐ振り込む前に三つを聞きます
親から「生活費が足りない」と言われた子どもは、驚いてその場で振り込みたくなるかもしれません。
緊急の食費や医療費を除き、まず次の三つを聞いてください。
| 聞くこと | 理由 |
|---|---|
| いつまでに、いくら必要か | 緊急度と必要額を分ける |
| 一時的な不足か、毎月続く不足か | 援助だけで解決できるかを見る |
| 借入れや滞納がほかにないか | 家計の全体像を把握する |
話してくれてありがとう。責めるつもりはないよ。
まず、今月必要な金額と期限、毎月の収入と支出を一緒に見せてほしい。
お金を出すことだけでなく、利用できる制度も一緒に調べよう。
子ども自身の家計を壊してまで、援助を引き受ける必要はありません。
出せる額、出せる期間、代わりに手伝える作業を明確にします。
同居を提案するときも、生活費の問題だけで決めません
毎月援助するより、一緒に暮らした方がよいと考える家族もいます。
ただし、同居にはお金以外の問題があります。
- 家事や介護を誰が担うか
- 生活時間や食事が合うか
- 子どもの配偶者や孫が納得しているか
- 親が自由に使えるお金を持てるか
- 住民票、医療、介護、住まいの契約をどうするか
- 同居が難しくなったときの住まいをどうするか
生活費の不足を埋めるためだけに急いで同居を決めると、家族関係が苦しくなることがあります。
まず月の不足額を出し、援助、公的制度、住まいの見直しを並べてから判断します。
関係が悪い子どもへ、無理に連絡しなくても構いません
長年連絡を取っていない、話すと強く責められる、金銭を奪われる心配があるなど、子どもへ頼ることが安全ではない場合もあります。
その場合は、親子だからと無理に連絡せず、自治体の自立相談支援機関、福祉事務所、地域包括支援センターなど第三者へ先に話します。
子どもへ相談できない事情も含めて伝えてください。
「家族へ言えないなら支援を受けられない」と一人で決める必要はありません。
今日するのは、子どもへ送金を頼むことではありません
今日は紙を三つに区切ってください。
| 今月必要なこと | 子どもに頼めること | 公的窓口へ聞くこと |
|---|---|---|
| __日までに家賃__円 | 請求書を一緒に見る | 分割・支援制度 |
| 食費が__円不足 | 一時援助を相談する | 自立相談支援機関 |
| 借入返済が月__円 | 窓口を調べてもらう | 多重債務・法律相談 |
次に、子どもへ送る最初の一文だけを書きます。
生活費のことで、隠さず話しておきたいことがあります。
すぐにお金を用意してほしいという話ではなく、まず今の収支を一緒に見てもらいたいです。
生活費を子どもへ相談することは、親としての価値を失うことではありません。
困っている事実を伝え、できることと難しいことを親子で分けるための話です。
子どもが援助できるかどうかにかかわらず、数字を隠さず外へ出せた時点で、次の行動は取りやすくなります。
まずは「恥ずかしいから、もう少し我慢しよう」と請求書をしまう前に、支払期限と不足額を一枚の紙へ書いてください。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」:生活上の困りごとの相談、家計改善、住まい、就労等の支援。
- 厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」:福祉事務所での相談・申請と、書類がそろっていない場合の取扱い。
- 全国社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度」:低所得者、高齢者、障害者等を対象とする貸付と相談支援。
- 日本年金機構「年金相談」:受給中の年金、年金記録、見込額等の相談と予約制度。
- 法テラス「よくある相談・民事法律扶助」:借金等の情報提供、一定要件のもとでの無料法律相談と費用立替え。
- 消費者庁「違法な年金担保融資への注意」:公的な年金担保貸付の受付終了と相談窓口。


















