家賃の引き落とし日が近づくほど、電話ができなくなることがあります
仕事を失ってから、求人を探し、離職票を待ち、ハローワークへ行く。その間にも、家賃の支払日は近づいてきます。
通帳に残っているのは数万円。家賃を払えば、食費や携帯電話代がなくなる。かといって家賃を払わなければ、住む場所まで失うのではないか。
管理会社から着信があっても、払える見通しがないため電話に出られない。郵便受けに封筒が入っているだけで、玄関を開けるのが怖くなる。
「まだ一度も滞納していないから、もう少し考えよう」
「来月には仕事が決まるかもしれない」
「払えないのに連絡しても、怒られるだけではないか」
そう思うのは自然なことです。
ただ、家賃の問題では、払えるようになってから連絡するより、払えないと分かった時点で連絡する方が、支払日の調整や分割について話せる余地が残ります。
必要なのは、立派な説明や長い謝罪ではありません。
「今月は全額を払えない」「○日なら○円を用意できる」「公的な支援も申請する予定」という三つを伝えることから始めます。
最初の一手は、通帳を見ることより「連絡先を一つ決めること」です
賃貸住宅の契約には、大家と直接契約している場合、管理会社が窓口になっている場合、家賃保証会社が集金を担当している場合などがあります。
誰へ話すべきか分からないまま時間が過ぎないよう、賃貸借契約書や家賃の請求書を見て、支払いに関する連絡先を一つ探します。
| 書類に書かれている相手 | 最初に聞くこと |
|---|---|
| 管理会社 | 支払日の変更や分割の相談窓口はどこか |
| 大家 | 今月分をいつ、いくら払えるか相談できるか |
| 家賃保証会社 | すでに立替払いが行われたか、支払方法を相談できるか |
| 勤務先の社宅担当 | 退職後いつまで住めるか、退去期限や費用はどうなるか |
| 公営住宅の管理窓口 | 収入減少時の家賃減免や徴収猶予があるか |
連絡先が分からなければ、契約した不動産会社へ「家賃の支払いについて相談する窓口を教えてください」と聞きます。
家賃を振り込む口座だけを見て、名義人へ突然電話する必要はありません。契約書に定められた管理窓口を通した方が、話した内容を記録に残しやすくなります。
大家や管理会社には、払えない理由より「三つの数字」を伝えます
電話をするとき、失業した事情をどこから説明すればよいか迷うかもしれません。
しかし、相手が知りたいのは、主に次の三つです。
- 今月の家賃はいくらか
- 今いくらなら払えるか
- 残りをいつ払える見込みか
電話の前に、紙へ書いておきます。
| 伝える項目 | 記入例 |
|---|---|
| 家賃の支払日 | 7月27日 |
| 家賃・共益費の合計 | 7万2,000円 |
| 支払日までに用意できる額 | 2万円 |
| 次に収入が入る予定日 | 失業給付の手続き中で未定 |
| 毎月払えそうな額 | 今月2万円、翌月から月3万円程度 |
| 公的支援の相談状況 | 自立相談支援機関へ明日連絡予定 |
支払日前に連絡する場合の言い方
「失業して収入が止まり、今月の家賃を支払日までに全額用意できません。支払う意思はあります。今月は2万円、残りは公的支援と失業給付の予定を確認したうえで分割したいのですが、相談できますか。」
すでに支払日を過ぎた場合の言い方
「家賃の支払いが遅れており、申し訳ありません。連絡しないままにしたくないため電話しました。現在用意できるのは2万円です。残りの支払方法について相談させてください。」
失業給付の金額や振込日がまだ確定していない段階で、「来月には全額払えます」と約束するのは避けた方がよいでしょう。
今分かっていることと、まだ分からないことを分けて伝えます。
家賃を払ったあとの生活費も、同じ紙に書きます
家賃を最優先にするあまり、手元のお金をすべて支払い、食費や通院費がなくなることがあります。
反対に、生活費が心配で家賃を一円も払わず、相手への説明もしない状態が続くこともあります。
どちらかに偏らないよう、次の支払日までに必要なお金を一度並べます。
| 項目 | 次の収入日までに必要な額 | 支払日の調整 |
|---|---|---|
| 家賃・共益費 | ○円 | 大家・管理会社へ連絡 |
| 食費 | ○円 | 最低限必要 |
| 電気・ガス・水道 | ○円 | 各事業者へ支払相談 |
| 携帯電話・通信 | ○円 | 就職活動に必要な範囲を残す |
| 通院・薬 | ○円 | 自己判断で中断しない |
| 就職活動の交通費 | ○円 | 面接回数を見込む |
| 借入金の返済 | ○円 | 返済先へ条件変更を相談 |
家賃だけでなく生活全体が足りない場合は、大家との交渉だけで解決しようとしないことです。
生活困窮者自立支援制度では、仕事、家賃、家計など複数の困りごとについて相談を受け、本人の状況に合わせた支援計画の作成や関係機関へのつなぎを行っています。家計改善支援では、家計の見える化や、必要に応じた貸付制度などへの案内も行われます。
住居確保給付金は、失業中の家賃を支える中心的な制度です
失業や収入減少により住居を失うおそれがある場合、一定の要件を満たすと、住居確保給付金の家賃補助を受けられる可能性があります。
主な対象は、離職・廃業から2年以内の人や、本人の責任・都合によらず収入を得る機会が離職と同じ程度まで減った人です。収入、預貯金、求職活動などの要件があり、具体的な基準額は自治体や世帯人数によって異なります。
| 制度のポイント | 内容 |
|---|---|
| 支給期間 | 原則3か月。要件を満たす場合は延長により最大9か月 |
| 支給額 | 実際の家賃額。ただし自治体・世帯人数ごとの上限あり |
| 支払先 | 原則として自治体から大家や不動産事業者などへ直接支給 |
| 主な要件 | 離職・収入減少、収入、預貯金、求職活動など |
| 相談・申請先 | 現在住んでいる地域の自立相談支援機関 |
住居確保給付金は、申請者の口座へ自由に使える生活費として振り込まれる制度ではありません。原則として、自治体から大家や不動産事業者などへ家賃相当額が直接支払われます。
また、家賃額に含まれない共益費、駐車場代、敷金などは、原則として家賃補助の対象に含まれません。家賃と共益費を合わせた請求額が全額支給されるとは限らないため、契約書の内訳を見ておきます。
住居確保給付金を申請しても、すでに発生した滞納額や対象外費用について、大家・管理会社との話し合いが別に必要になることがあります。申請予定であることを早めに伝え、支給開始までの支払方法も相談してください。
住居確保給付金の相談では、書類が全部そろうまで待たなくて構いません
申請時には、本人確認書類、離職や収入減少が分かる書類、世帯の収入、預貯金、賃貸借契約などを確認されます。
離職票がまだ届いていない場合でも、退職証明書、解雇通知書、給与の振り込みが止まったことが分かる通帳など、別の資料で状況を伝えられることがあります。必要書類は自治体によって異なるため、そろうまで申請を諦めず、最初に窓口へ連絡してください。
最初の相談に持っていきたいもの
- 賃貸借契約書
- 家賃の請求書や滞納について届いた書面
- 本人確認書類
- 離職票、退職証明書、解雇通知書など
- 世帯全員の収入が分かる書類
- すべての預貯金口座の残高が分かるもの
- 雇用保険を申請している場合は、受給状況が分かる書類
窓口では、制度名を正確に言えなくても問題ありません。
「失業して今月の家賃を払えません。住居を失わずに求職活動を続けるため、使える制度を教えてください」
この一言から始められます。
家賃を下げなければ生活が続かない場合は、転居費用の補助もあります
再就職が決まっても、現在の家賃を払い続けることが難しい場合があります。
住居確保給付金には、家計改善のために家賃の安い住宅へ移る必要があると認められた場合、一定の要件のもとで転居費用を補助する仕組みもあります。単に「引っ越したい」という希望だけで利用できるものではなく、自立相談支援機関などの家計支援を受け、転居によって家計が改善する見込みを判断してもらう必要があります。
| 今の住まいを続ける方向 | 転居も検討する方向 |
|---|---|
| 失業給付や再就職後の収入で家賃を払える見込みがある | 再就職後の見込み収入でも家賃負担が重すぎる |
| 一時的な失業で、家賃以外の支出を調整すれば続けられる | 家賃を払うと毎月の食費や光熱費が不足する |
| 通勤や家族事情から現在地を維持する必要がある | 現在の住居にとどまることで求職先が大きく限られる |
| 滞納額について大家と返済計画を組める | 滞納の解消と今後の家賃を同時に払うのが難しい |
家賃の安い部屋へ移れば必ず生活が楽になるとは限りません。敷金、仲介手数料、引っ越し代、家具の買い替え、通勤費なども含めて比べます。
失業給付は、家賃の支払日に間に合うとは限りません
雇用保険の基本手当は、働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できない人の生活と求職活動を支える制度です。受給資格や給付日数は、雇用保険の加入期間、年齢、離職理由などによって異なります。
会社を退職しただけで、自動的にその月から振り込まれるわけではありません。
離職票を受け取り、ハローワークで求職の申し込みと受給資格の手続きを行い、失業認定などを経て支給されます。自己都合退職では、待期期間に加えて給付制限がかかる場合があります。2025年4月1日以降の離職では、正当な理由のない自己都合退職の給付制限期間は原則1か月ですが、過去の離職状況などによって扱いが変わります。
家賃の交渉では、「失業給付が入る予定です」とだけ伝えず、ハローワークで確認した支給見込み日を伝えます。
まだ手続き前なら、家賃の支払いと並行して、早めにハローワークへ連絡してください。
住居確保給付金だけでは食費が残らないときは、生活全体を話します
住居確保給付金は家賃を支える制度であり、食費、光熱費、携帯電話代などが同時に支給されるわけではありません。
次のような状態なら、家賃だけでなく生活全体が不足していると伝えます。
- 家賃を払うと食費が残らない
- 電気、ガス、水道の停止予告が届いている
- 健康保険料や年金、税金を滞納している
- 借金で家賃や生活費を払っている
- 失業給付が始まるまで暮らせない
- すでに住まいを失い、知人宅やネットカフェで過ごしている
自立相談支援機関では、住居確保給付金だけでなく、家計改善、就労、居住支援などを組み合わせて支援する仕組みがあります。住居がない人や不安定な場所で暮らしている人を対象に、一時的な宿泊場所や衣食を提供する居住支援事業につながる場合もあります。
社会福祉協議会の貸付制度などを案内される場合もありますが、貸付には審査や返済の見込みが必要で、必ず借りられるものではありません。利用の可否は実施する社会福祉協議会が判断します。
収入も預貯金も尽きそうなら、生活保護の申請を選択肢から外さないでください
家賃だけでなく、食費や医療費も用意できず、ほかの給付や資産を使っても最低限の暮らしを維持できない場合は、生活保護を申請できるか福祉事務所へ話します。
生活保護には、日常生活費に対応する生活扶助のほか、定められた範囲内で家賃を支給する住宅扶助があります。制度の対象になるか、現在の家賃のまま住み続けられるかは、世帯収入、資産、家賃額、地域の基準などを踏まえて判断されます。
「書類が全部ない」「親族にまだ頼んでいない」「住む場所がなくなった」という理由だけで、申請できないと決めつける必要はありません。厚生労働省は、必要書類がそろっていない人や住居がない人でも申請でき、親族へ先に相談することが申請の条件ではないと案内しています。
福祉事務所での伝え方
「失業して収入がなく、家賃と生活費を払えません。預貯金も残りわずかです。生活保護を申請したいので、手続きを教えてください。」
制度の説明だけでなく申請を希望している場合は、「申請したい」と明確に伝えます。
一度滞納しただけで、その日に部屋を出るわけではありません
支払日を一度過ぎたことで、「明日には鍵を替えられるのではないか」と眠れなくなる人もいます。
一般的には、一度家賃を払い忘れただけで直ちに明け渡しが必要になるわけではありません。賃貸借契約の解除が認められるかどうかは、滞納期間、金額、連絡状況、これまでの支払いなどを含め、貸主と借主の信頼関係が壊れたといえるかによって個別に判断されます。
ただし、「一度なら何もしなくてよい」という意味ではありません。
滞納が続けば、契約解除や明け渡しを求められる可能性が高まります。何か月なら絶対に住み続けられる、という安全な期限はありません。
| 届いたもの・起きたこと | 取る行動 |
|---|---|
| 電話や通常の督促状 | 無視せず、支払可能額と相談状況を伝える |
| 内容証明郵便や契約解除通知 | 書面を保存し、自立相談支援機関や法律相談へ持参する |
| 裁判所から訴状や支払督促が届いた | 期限内の対応が必要なため、すぐ法テラスや弁護士・司法書士へ相談する |
| 明け渡しを命じる判決などが出ている | 強制執行の段階を含め、至急法律相談と住居支援を受ける |
| 鍵を替える、荷物を出すと言われた | 相手と争わず記録を残し、警察や法律相談を含めて対応を聞く |
裁判所による強制的な明け渡しには、判決などの債務名義を得たうえで、地方裁判所の執行官へ申し立てるなどの手続きが必要です。裁判所から届いた書面は、管理会社からの通常の手紙とは重みが異なるため、封を開けずに置かないでください。
保証会社から請求が来た場合も、大家への連絡だけで終わらせません
家賃保証会社を利用していると、滞納した家賃を保証会社が大家へ立て替え、その後、入居者へ請求する場合があります。
大家へ家賃が支払われたように見えても、入居者の支払義務がなくなるわけではありません。
保証会社へ聞くこと
- 何月分をいくら立て替えたのか
- 現在の請求総額はいくらか
- 追加されている費用の内訳は何か
- 分割払いを相談できるか
- 支払約束を書面で残せるか
- 管理会社や大家へはどのように報告されるか
電話口で無理な金額を約束せず、生活費と公的支援の予定を見たうえで、続けられる支払額を伝えます。
請求内容や契約解除について争いがある場合は、契約書、保証委託契約書、督促書面をまとめて法律相談へ持参してください。
家族が代わりに調べている場合は、先に立て替えない方がよいこともあります
子どもやきょうだいから「今月の家賃を貸して」と言われると、住まいを失わせたくない一心で、すぐ振り込みたくなるでしょう。
一か月分を立て替えることで再就職までつなげられるなら、有効な支援になる場合もあります。
しかし、現在の家賃が今後の収入に見合わず、毎月同じ不足が続くなら、立て替えだけでは問題が翌月へ移ります。
| 家族が聞きたいこと | 責めずに聞く言葉 |
|---|---|
| 滞納状況 | 「今月だけ足りないのか、前の月も残っているのか一緒に見てもいい?」 |
| 失業給付 | 「ハローワークの手続きはどこまで進んでいる?」 |
| 預貯金 | 「全部見せなくてもいいから、次の収入までに使える額を出してみよう」 |
| 住居確保給付金 | 「家賃の制度が使えるか、私も一緒に電話しようか」 |
| 今後の家賃負担 | 「再就職後の収入でも、この家賃を続けられそうかな」 |
家族から一般的な制度を問い合わせられることはありますが、本人の収入や契約内容を詳しく扱う場面では、本人の同意や委任状を求められる場合があります。
本人を抜きにして退去や引っ越しを決めるのではなく、本人が一番怖いと感じていることから聞きます。
消費者金融で家賃を埋める前に、「翌月の不足額」を出してください
支払日が迫ると、カードローンやキャッシングで家賃だけを用意したくなります。
借りることで数日間は落ち着けても、収入がない状態では、翌月から家賃に返済額と利息が加わります。
借りるかどうかを決める前に、次の式を紙に書きます。
「来月の収入見込み − 家賃 − 生活費 − 新しい返済額」
結果がすでにマイナスなら、借り入れは家賃問題を解決するのではなく、形を変えて先送りする可能性があります。
大家・管理会社への支払相談、住居確保給付金、自立相談支援機関、失業給付、生活保護の順に、返済義務のない制度や条件変更を先に確かめます。
すでに借金の返済と家賃を両方払えない場合は、「家賃だけ」または「借金だけ」に分けず、自立相談支援機関や法テラスへ両方を伝えてください。
今日することは、家賃を全額つくることではなく三本の連絡です
今夜のうちに家賃を全額用意できなくても、状況を前へ進めることはできます。
1本目 大家・管理会社・保証会社
「全額を払えない」「今払える額」「次に連絡する日」を伝えます。
2本目 自立相談支援機関
「失業して家賃を払えない。住居確保給付金を含めて相談したい」と伝えます。
3本目 ハローワーク
雇用保険の手続きが済んでいない場合は、必要書類と来所方法を聞きます。すでに手続き中なら、支給予定を確認します。
食費も残っていない、今夜泊まる場所がない、病気などで求職活動ができない場合は、三本の順番にこだわらず、自治体の自立相談支援機関または福祉事務所へ今の状態をそのまま伝えてください。
失業したことも、家賃が払えないことも、黙って罰を受けるような話ではありません。
支払日、払える額、次の収入日。この三つを書き、一本電話をかけるだけでも、何も伝わっていなかった昨日とは違います。
住まいを守るために必要なのは、一人で何とかすることではなく、大家、管理会社、ハローワーク、自治体に、それぞれができる役割を渡していくことです。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「住居確保給付金」:家賃補助の対象、収入・資産要件、支給期間、転居費用補助に関する確認先。
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」:自立相談支援、家計改善支援、居住支援などに関する確認先。
- 厚生労働省「基本手当について」:雇用保険の基本手当と受給手続きに関する確認先。
- 厚生労働省「生活保護制度」「生活保護を申請したい方へ」:福祉事務所、住宅扶助、申請に関する確認先。
- 法テラス「住まい、不動産」、裁判所「不動産引渡(明渡)執行」:家賃滞納による契約解除や明け渡し手続きに関する確認先。














