管理会社の番号を表示したまま、電話をかけられない
給料日まで、あと十日。口座には食費と電気代を払う分しか残っていません。
家賃の引き落とし日は三日後です。
何度計算しても足りないことは分かっているのに、管理会社へ電話する言葉が見つかりません。
「怒られたらどうしよう」
「払えない人だと思われたくない」
「一度遅れたら、すぐ出ていけと言われるのでは」
連絡しようと決めても、「来週には何とかします」と言い切れる見通しがありません。入金日を聞かれたら答えられないと思い、今日も電話を閉じます。
けれど、支払いが難しい事実は、連絡しなくてもなくなりません。
今の段階で必要なのは、事情をきれいに説明することでも、必ず払える日を作ってから謝ることでもありません。
支払いが遅れる可能性を知らせ、今分かっている金額と日付を共有することです。
最初の連絡には、五つだけ入れれば伝わります
長い事情説明を考えるほど、連絡は難しくなります。
まず、次の五つをメモしてください。
| 伝えること | 記入例 |
|---|---|
| 契約者と部屋 | 山田太郎、○○ハイツ203号室 |
| 支払日と家賃額 | 7月31日支払い、家賃6万5,000円 |
| 遅れる理由 | 勤務日数が減り、今月の給与が少なかった |
| 払える金額・日 | 8月10日に全額、または7月31日に3万円 |
| 相談したいこと | 支払日の変更や分割が可能か |
遅れる理由は、一、二文で構いません。
病気、失業、給与日の変更、家族の急な支出など、支払いに影響している事実を伝えます。家族関係や病状の細部まで説明する必要はありません。
支払日前なら、この言葉から始める
電話では、謝罪だけを続けず、要件から伝えます。
「○○ハイツ203号室の山田太郎です。7月31日の家賃について、期日までの支払いが難しい見込みになり、事前にご連絡しました」
そのあと、理由と支払い案を続けます。
「勤務日数が減り、今月の給与が少なかったためです。8月10日には全額を支払える見込みですが、この日まで待っていただくことは可能でしょうか」
相手から質問されたら、分かる範囲で答えます。
話し終えたら、次の点を聞き直してください。
- 振込先や支払方法に変更はあるか
- 遅延損害金や手数料が発生するか
- 管理会社以外に連絡が必要か
- 合意した支払日はいつか
- 書面やメールでの手続きが必要か
メールや問い合わせフォームには、短く事実を書く
電話がつながらない場合や、電話で話すことが難しい場合は、契約書に記載されたメールや問い合わせフォームから連絡します。
件名は、内容がすぐ分かるものにします。
件名:7月分家賃の支払いについて(○○ハイツ203号室・山田太郎)
本文は、次のように書けます。
「○○管理株式会社 ご担当者様
○○ハイツ203号室の山田太郎です。
7月31日支払いの家賃6万5,000円について、勤務日数の減少により、期日までの入金が難しい見込みです。8月10日には全額を支払える予定です。
支払日を8月10日とさせていただくことは可能でしょうか。遅延に伴う手数料や、必要な手続きがありましたらお知らせください。
ご迷惑をおかけし申し訳ありません。ご確認をお願いいたします。」
送信後は、送信済み画面やメールを残します。
返事がなければ、メールを送った日時を伝えて、営業時間内に電話してください。メールを送っただけで、支払日の変更が認められたとは考えないようにします。
払える日が決まっていなくても、連絡して構いません
給料の入金日が未定、家族から借りられるか分からない、申請中の給付金がいつ入るか分からない。
そのような場合に、適当な日を約束すると、もう一度約束を破ることになります。
払える日が決まっていないときは、次の連絡日を約束してください。
「現時点では、全額を支払える日がまだ決まっていません。8月5日に給与の入金予定が分かるため、同日の午後5時までに、改めて支払日をご連絡します」
一部だけ準備できる場合は、勝手に少額を振り込む前に扱いを聞きます。
「7月31日に3万円、8月10日に残額を支払うことは可能でしょうか」
分割を認めるか、どの順番で充当するか、手数料が発生するかは、契約や管理会社などの対応によって異なります。
状況別に、伝える言葉を変える
| 現在の状況 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 数日遅れれば全額払える | 「8月5日に給与が入るため、同日に全額を振り込みます。支払日を変更できるか伺いたくご連絡しました」 |
| 一部だけなら期日に払える | 「期日に3万円、翌月10日に残りを支払う案を考えています。分割が可能か、支払方法を教えてください」 |
| 払える日がまだ分からない | 「現時点で入金日は未定です。○日には収入の見通しが分かるため、その日に改めて連絡します」 |
| すでに支払日を過ぎた | 「期日を過ぎてからの連絡となり、申し訳ありません。現在の未払額と支払方法を教えてください」 |
| 来月以降も不足しそう | 「今月だけでなく来月も不足する可能性があります。今後の支払いについて、早めに話し合いたいです」 |
| 督促状が届いた | 「本日、○月○日付の通知を受け取りました。記載された未払額と期限について確認したくご連絡しました」 |
「必ず何とかします」「できるだけ早く払います」だけでは、相手が支払い予定を判断できません。
金額、日付、次の連絡日のどれかを入れてください。
誰へ連絡するかは、契約書と督促の差出人を見る
家賃の窓口は、物件によって異なります。
- 大家
- 管理会社
- 家賃の収納代行会社
- 家賃債務保証会社
- 公営住宅などの管理窓口
まず賃貸借契約書、家賃の請求書、口座振替のお知らせを見ます。
保証会社を利用している場合、契約内容によっては、保証会社が貸主へ家賃を支払い、その後、借主が保証会社から請求を受けることがあります。
管理会社へ連絡したから保証会社への連絡が不要とは限りません。反対に、保証会社だけへ連絡しても、管理会社へ伝わるとは限りません。
電話では、「ほかに連絡する会社はありますか」と聞いてください。
口座振替ができなかったときは、自動で再引き落としされると思わない
残高不足に気づき、すぐ口座へ入金しても、もう一度自動で引き落とされるとは限りません。
契約先によっては、再振替、振込用紙、指定口座への振込など、次の支払方法が決められています。
| 聞くこと | 伝え方 |
|---|---|
| 再振替の有無 | 「次の自動引き落とし日はありますか」 |
| 振込先 | 「自分で振り込む場合の口座を教えてください」 |
| 合計額 | 「手数料を含む支払総額はいくらですか」 |
| 振込名義 | 「契約者名だけでよいですか。部屋番号も必要ですか」 |
| 入金後の連絡 | 「振込後に連絡や明細の提出は必要ですか」 |
別の口座へ二重に支払わないよう、SMSなどで届いた口座情報だけを見て振り込まず、契約書や公式の連絡先から確認してください。
支払日を約束するときは、生活費を全部ゼロにしない
家賃を優先することは必要ですが、手元のお金をすべて振り込み、食費や通勤費がなくなれば、次の収入まで生活できません。
約束する前に、次の金額を書きます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 現在使えるお金 | 預金、現金、確実に入る収入 |
| 家賃の不足額 | 家賃、共益費、手数料など |
| 次の収入までに必要な支出 | 食費、通勤、薬、電気・ガス・水道 |
| 延期できる支出 | 定額サービス、急がない購入、娯楽など |
| 不足する金額 | 払うべき金額から、使える金額を引く |
「家賃を払ったら食べるお金がない」という状態なら、管理会社への連絡と同じ日に、地域の生活相談窓口へつながる必要があります。
翌月も同じ不足が起きる場合は、一時的な支払日の変更だけでは解決しません。
一度遅れただけで、その日に退去になるわけではありません
家賃の支払いが一度遅れたからといって、直ちに契約解除や明け渡しが認められるとは限りません。
法テラスは、家賃滞納が貸主と借主の信頼関係を破壊する程度に至っていなければ契約を解除できず、一度払い忘れた程度で直ちに明け渡す必要はないと説明しています。もっとも、滞納が長期化・反復すれば、請求や契約解除、明け渡しの手続きへ進む可能性があります。
国土交通省の賃貸住宅標準契約書でも、賃料の不払いについて、相当期間を定めて支払いを求めたにもかかわらず履行されない場合を、貸主からの解除事由として定めています。ただし、実際の契約内容や個別事情によって判断は異なります。
「一日遅れたら住まいを失う」と考えて連絡を避ける必要はありません。
一方で、「すぐ退去にはならないなら放置してよい」という意味でもありません。連絡が取れず、約束した日にも払われない状態が続くほど、話し合える余地は狭くなります。
管理会社から厳しく言われても、その場でできない約束をしない
電話で「いつ払えるんですか」「今日中に払ってください」と言われると、怖くなって無理な日を答えてしまうことがあります。
確実でない場合は、次のように伝えます。
「本日中の全額支払いはできません。確実にお伝えできるのは、8月5日に3万円を支払えることです。残額の日程は8月7日までに改めてご連絡します」
書類への署名や退去の合意をその場で求められ、内容が理解できない場合は、すぐ署名せず持ち帰って読みます。
契約解除や明け渡しに関する通知が届いた場合は、封筒を含めて保管し、記載された期限を過ぎる前に法テラスなどの法律相談へつないでください。
連絡を避けるために、別の借金を急いで増やさない
家賃の不足を埋めるため、消費者金融、カードのキャッシング、後払いなどをすぐ使いたくなることがあります。
翌月の収入で家賃と返済の両方を払える見込みがなければ、今月の不足を来月へ移すだけになりかねません。
借りる前に、次を見ます。
- 今回だけの一時的な不足か
- 翌月の収入で家賃と返済を両方払えるか
- すでにほかの支払いも遅れていないか
- 公的な給付や相談窓口を先に利用できないか
- 家賃以外の契約を止めたり延期したりできないか
複数の借入れや返済がある場合は、家賃だけを切り離さず、自立相談支援機関や法律相談で家計全体を見てもらう方が、次の滞納を防ぎやすくなります。
今回だけ足りない場合と、来月も足りない場合で動きを分ける
| 状況 | 優先する動き |
|---|---|
| 給与日が数日ずれただけ | 支払日を明示して管理会社へ連絡する |
| 急な医療費などで今月だけ不足 | 分割を相談し、一時的な貸付制度の対象になるか聞く |
| 勤務減少・休業で収入が落ちた | 住居確保給付金、自立相談支援機関、雇用関係の給付を調べる |
| 失業して収入の見込みがない | 家賃の連絡と同時に、自立相談支援機関やハローワークへつながる |
| 家賃が収入に対して高すぎる | 目先の滞納対応に加え、家計改善や住み替え支援を検討する |
| すでに複数月滞納している | 未払総額と通知期限を把握し、生活相談と法律相談を並行する |
| 家賃以外の借金も返せない | 借金で穴埋めを続けず、家計・債務をまとめて相談する |
今回だけの不足なら、支払日の合意で解決できる可能性があります。
来月も不足するなら、管理会社への説明だけでなく、収入、家賃、ほかの返済を含めた生活の組み直しが必要です。
収入が大きく減ったときは、住居確保給付金の対象を調べる
離職・廃業後や、本人の責任によらず収入を得る機会が大きく減り、一定の収入・資産などの要件を満たす場合、住居確保給付金によって家賃相当額の支給を受けられる可能性があります。
支給額には市区町村ごとの上限があり、原則3か月、要件を満たせば最大9か月まで延長されます。給付金は原則として自治体から貸主や管理会社などへ直接支払われます。共益費や駐車場代などは対象に含まれません。
相談・申請は、住んでいる地域の自立相談支援機関で受け付けています。対象要件や支給上限は自治体によって異なるため、「家賃を一度滞納してから」ではなく、支払えなくなりそうな段階で聞いてください。
窓口では、次のように伝えます。
「勤務日数が減り、今月の家賃を期日までに払えません。来月も不足する可能性があります。住居確保給付金の対象になるかと、申請までの家計について相談したいです」
今の家賃を払い続けることが難しい場合は、転居費用の支援もあります
収入が大きく減り、家計を改善するために今より家賃の安い住宅へ移る必要がある人を対象として、2025年4月から、住居確保給付金に転居費用を支給する仕組みが加わりました。
対象となる費用や収入・資産要件、支給額は自治体の確認が必要です。今すぐ退去を決める制度ではありませんが、現在の家賃を払い続ける見通しが立たない場合に、住み替えまで含めて自立相談支援機関と考える選択肢になります。
家賃が遅れた焦りだけで、引っ越し先や費用の見通しがないまま解約を申し出ないでください。
新しい家の初期費用、引っ越し代、現在の契約の解約予告期間などを並べてから判断します。
生活全体が苦しいときは、自立相談支援機関で家計を一緒に見る
生活困窮者自立支援制度では、家賃を払えない、仕事が見つからないなどの困りごとを受け付け、状況に応じた支援プランを作ります。
家計改善支援では、家計の見える化、滞納や債務の把握、利用できる制度へのつなぎ、必要に応じた貸付けのあっせんなどが行われます。
相談前に、完璧な家計簿を作る必要はありません。
- 賃貸借契約書
- 家賃の請求書や督促状
- 通帳や給与明細
- 公共料金や借入れの請求書
- 今月払えない金額を書いたメモ
手元にある物だけを持参し、「何から見ればよいか分からない」と伝えて構いません。
一時的な生活費不足には、貸付制度が使える場合もあります
低所得世帯などで、ほかから資金を借りることが難しい場合には、社会福祉協議会が扱う生活福祉資金貸付制度の対象となる可能性があります。
通常の緊急小口資金は、緊急かつ一時的に生活の維持が難しくなった場合の少額貸付で、貸付上限は10万円です。総合支援資金には、生活再建までの生活費を貸し付ける仕組みもあります。ただし、審査があり、申請すれば即日必ず借りられる制度ではありません。
貸付けは将来返すお金です。
来月以降も不足が続く場合は、借りられるかだけでなく、返済を含めた家計を自立相談支援機関や社会福祉協議会と見てください。
家族や同居人には、督促が届くまで隠さない
配偶者や家族と暮らしていても、自分が家計を管理していると、家賃不足を言えないことがあります。
「心配をかけたくない」
「使いすぎを責められそう」
「自分だけで何とかしたい」
けれど、同居する家族にとっても住まいの問題です。
援助を求める前に、事実と今日することを伝えます。
「今月の家賃が2万円足りない。明日、管理会社へ支払日の相談をする。来月も同じ不足が出そうなので、今夜一緒に家計を見てほしい」
親やきょうだいへ援助を頼む場合も、金額と返済の有無を曖昧にしません。
「家賃が足りないから少し貸して」ではなく、「8月10日までに2万円必要です。9月と10月に1万円ずつ返したいと考えています」と伝えます。
連帯保証人へ連絡が行く可能性も、先に伝えておく
連帯保証人が付いている契約では、家賃の支払いがない場合に、貸主などから保証人へ請求が行われることがあります。
家族が連帯保証人になっているなら、管理会社から先に連絡が行き、家族が突然知るより、自分から状況を話した方が説明しやすくなります。
「今月の家賃が遅れる見込みで、今日管理会社へ連絡しました。8月10日に支払う案を伝えています。保証人のあなたへ連絡が行く可能性があるため、先に知らせます」
家族に知られたくないという理由だけで、管理会社からの電話や郵便を避けないでください。
約束した日に払えなくなったら、その日の前にもう一度連絡する
一度支払日の猶予を受けたあと、予定していた給与が入らなかったり、別の支出が発生したりすることがあります。
約束の日を過ぎてから事情を話すのではなく、払えないと分かった時点で連絡します。
「8月10日に全額を支払うとお伝えしましたが、予定していた給与の入金が遅れ、約束どおりの支払いができなくなりました。8月10日には3万円を支払い、残額については8月12日までに改めて日程をお伝えしたいです」
二度目の相談では、相手の対応が厳しくなる可能性があります。
それでも連絡をやめず、自立相談支援機関などにも同時につながっていることを伝えてください。
督促状や契約解除の通知が届いたら、封筒ごと残す
郵便物を開けるのが怖くても、期限を知らないままにしないでください。
| 見るところ | 書き出す内容 |
|---|---|
| 差出人 | 管理会社、保証会社、貸主、法律事務所、裁判所など |
| 文書の日付 | 作成日と受け取った日 |
| 未払額 | 家賃、共益費、手数料などの内訳 |
| 支払期限 | 何月何日までか |
| 求められていること | 支払い、連絡、明け渡しなど |
| 問い合わせ先 | 電話番号、担当者、受付時間 |
裁判所からの書類や、契約解除・明け渡しを求める通知は、通常の督促と同じだと考えて放置しないでください。
自分だけで内容を判断できなければ、法テラス、自治体の法律相談、弁護士会などへ文書を持参します。
今日することは、家賃を全額用意することではありません
今すぐ全額を用意できないから、連絡できずにいるのかもしれません。
今日は、次の順番で動いてください。
- 賃貸借契約書を出し、家賃の窓口を確かめる
- 家賃額、不足額、次に収入が入る日を書く
- 全額を払える日、または次に見通しが分かる日を決める
- 管理会社などへ電話し、つながらなければメールを送る
- 来月も不足するなら、自立相談支援機関へ同じ日に連絡する
電話では、次の一文を読み上げれば始められます。
「○○ハイツ203号室の山田太郎です。今月の家賃を期日までに支払えない見込みとなり、支払方法についてご相談したく連絡しました」
家賃が遅れそうなとき、うまく謝ることより、連絡を途切れさせないことが重要です。払える日が決まらなければ、次に状況を伝える日を約束してください。
今回だけの遅れなら、支払日の調整で暮らしを立て直せるかもしれません。
不足が続くなら、それは気持ちや努力だけで埋める問題ではありません。収入、家賃、借入れ、利用できる給付を一緒に見直す段階です。
連絡したからといって、その場で全てが解決するわけではありません。
それでも、黙って支払日を迎える状態から、話し合える状態へ変えられます。まず契約書を開き、連絡先と不足額を一枚のメモに書いてください。
出典・確認先メモ
- 法テラス「家賃不払を理由に、賃貸人から部屋の明渡しを求められました」:家賃滞納と契約解除・明け渡しの一般的な考え方を確かめる際の確認先。
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書」:家賃の支払義務、契約解除手続き、賃貸契約の基本的なモデルを確かめる際の確認先。
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」:家賃、生活、就労、家計改善について地域の窓口へつながる際の確認先。
- 厚生労働省「住居確保給付金」:家賃相当額の支給要件、支給期間、相談・申請窓口を確かめる際の確認先。
- 厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」:緊急小口資金、総合支援資金などの対象と貸付条件を確かめる際の確認先。


















