「夫婦で働いているのだから」と思いながら、給料日前の食費が残っていない
夫婦ともに収入はある。それでも、夫の勤務日数が減り、妻は親の通院付き添いで仕事を休む日が増えた。
家賃、車のローン、学校の集金、医療費を払うと、次の給料日まで使えるお金がほとんど残らない。冷蔵庫の中身を見ながら、子どもには「今日は簡単なご飯にしよう」と伝える日が続いています。
役所の支援を調べても、「ひとり親家庭」「住民税非課税世帯」といった言葉が目に入り、自分たちは対象ではないと思って画面を閉じてしまう。
けれど、公的支援のすべてがひとり親限定ではありません。
夫婦世帯、子どものいない世帯、親子三世代の世帯、一人暮らしでも、実際の収入、預貯金、家賃、病気、失業、家族構成などに応じて利用を検討できる制度があります。
制度名を先に当てる必要はありません。
「夫婦世帯ですが、収入が減り、今月の家賃と食費が足りません。利用できる制度をまとめて確認したいです」
この一言から始められます。
「ひとり親ではない」は、生活相談を断られる理由ではありません
児童扶養手当など、ひとり親であることが主な要件となる制度はあります。
一方で、生活困窮者自立支援制度、生活保護、就学援助、国民健康保険料の減免、国民年金保険料の免除、住居確保給付金などは、ひとり親かどうかだけで決まる制度ではありません。
多くの制度では、世帯全体の収入や資産、困窮した理由、支出の状況などを見ます。そのため、配偶者に収入があれば必ず利用できるとも、必ず利用できないとも言えません。
「共働きだから」「持ち家だから」「車があるから」と、自分だけで対象外と決めるのは早過ぎます。
正式な給付には要件や審査がありますが、現在の家計と利用可能な制度を窓口で確かめることはできます。
家族構成ではなく、「現在の世帯収入で、食費・住まい・医療・子どもの生活を維持できているか」を窓口へ伝えます。
最も近い支払期限から、最初の窓口を選びます
| 現在困っていること | 最初に連絡する窓口 | 最初に伝える内容 |
|---|---|---|
| 今日食べる物がない、今夜泊まる場所がない | 自立相談支援機関、福祉事務所 | 手元の金額、家族人数、今日必要な食事や住まい |
| 家賃を払えない、退去を求められそう | 自立相談支援機関 | 滞納月数、退去期限、収入が減った時期 |
| 電気・ガス・水道が止まりそう | 各事業者と自立相談支援機関 | 停止予定日、請求額、支払える金額 |
| 学校給食費、学用品、修学旅行費が負担 | 学校、市区町村教育委員会 | 就学援助を利用できるか、申請期限 |
| 保険料、年金、税金を払えない | 市区町村、年金事務所、税の担当窓口 | 納期限、未納額、収入減や失業の事情 |
| 病院へ行きたいが医療費が心配 | 加入する医療保険の窓口、病院の相談窓口 | 加入保険、治療予定、見込まれる自己負担 |
| 借金の返済で生活費が残らない | 自立相談支援機関、法テラス等の法律相談 | 借入先、残高、毎月の返済、滞納の有無 |
| 子育て、病気、仕事の問題が重なっている | 自立相談支援機関、こども家庭センター | 家計だけでなく、家庭で同時に起きていること |
同じ家庭でも、複数の窓口が関係することがあります。
たとえば、夫の失業、家賃滞納、子どもの学校費用が重なっているなら、一件ずつ別々に説明するより、自立相談支援機関へ全体を伝え、必要な担当へつないでもらう方が進めやすくなります。
何から手を付けるか分からないときは、自立相談支援機関が入口です
生活困窮者自立支援制度は、仕事、住まい、家計、社会とのつながりなど、生活全体に困りごとを抱える方を支える制度です。
ひとり親だけを対象とした制度ではありません。
地域の自立相談支援機関では、現在の収入と支出、家賃、仕事、家族の健康などを聞き、利用できる可能性のある制度と取り組む順番を一緒に考えます。
家計改善支援では、単に節約を求めるのではなく、次のような問題を分けます。
- 世帯収入そのものが生活費に足りない
- 医療費や介護費が継続している
- 税金や保険料の支払いが重なっている
- 借金返済が家計を圧迫している
- 利用できる手当や減免を申請していない
- 家族の一人が収入や通帳を管理し、家計全体を把握できない
相談した当日に現金が支給されるとは限りません。窓口は、給付、減免、貸付、就労支援などから、今の状態に合うものを探す入口です。
市区町村の公式サイトで「自治体名 自立相談支援機関」と検索します。見つからない場合は、役所の代表電話へ次のように聞いてください。
「生活困窮者自立支援制度の相談窓口につないでください」
今日の食事や住まいを保てない場合は、福祉事務所も同時に考えます
数か月先の家計が心配な状態と、今日の生活を維持できない状態では、優先する制度が違います。
次のような状態では、生活保護を含めて福祉事務所へ話すことを先延ばしにしません。
- 家族が今日食べる物を買えない
- 家賃滞納が続き、住まいを失う時期が迫っている
- 必要な薬や受診費を用意できない
- 電気、ガス、水道が止まり、生活できない
- 収入と預貯金を合わせても、最低限の生活を保てない
生活保護は世帯単位で判断されます。夫婦の一方に収入があっても、世帯全体の収入が最低生活費に満たない場合は、対象となる可能性があります。
必要書類がすべてそろっていなくても申請できます。同居していない親族へ先に頼まなければ申請できない制度でもありません。
持ち家や車がある場合は、資産としての扱いを個別に見られますが、所有しているだけで窓口へ相談できないわけではありません。
「夫婦と子ども二人の世帯です。今月の収入は十五万円で、預貯金は二万円です。家賃と食費を払えないため、生活保護を含めて今日利用できる支援を聞きたいです」
「生活保護は最後の手段だから」と、食事や医療を失うまで待つ必要はありません。
家賃が払えないときは、退去通知を待たずに話します
仕事を失った、勤務日数が減った、休業が続いたなどにより家賃を払えなくなりそうな場合は、住居確保給付金の対象となる可能性があります。
一定の収入・資産要件や求職活動等の条件を満たした場合、自治体ごとの上限内で家賃相当額が支給されます。給付金は通常、本人の自由に使える現金ではなく、自治体から貸主等へ支払われます。
収入が大きく減り、今より家賃の低い住宅へ移ることで家計改善が見込まれる場合には、条件により転居費用の支援を検討できることもあります。
ただし、滞納済みの家賃が必ず全額支払われる制度ではありません。
家賃を一回遅れただけだからと待たず、次のように伝えてください。
「先月から勤務日数が減り、来月の家賃が不足します。まだ退去通知はありません。住居確保給付金の対象と、貸主への連絡方法を聞きたいです」
すでに督促や退去に関する文書が届いている場合は、文書に書かれた期限も読み上げます。
子どもの費用は、ひとり親向け制度だけを探さないでください
子育て家庭への支援には、家族構成を問わず利用できるものや、世帯所得などを基準にするものがあります。
児童手当の申請状況を見る
児童手当は、ひとり親だけの制度ではありません。高校生年代までの子どもを養育する家庭が対象となる制度です。
出生、転入、公務員への就職・退職などの後には申請や届出が必要になることがあります。原則として申請が遅れた月分をさかのぼって受け取れない場合があるため、未申請の可能性があれば市区町村へ確認してください。
小中学生の費用は就学援助を確認する
就学援助は、経済的理由で就学が難しいと認められる家庭に、学用品費、学校給食費、修学旅行費などを援助する制度です。
ひとり親であることだけが条件ではありません。対象基準、申請時期、援助される費目は市区町村によって異なります。
学校の事務室や教育委員会へ、次のように聞けます。
「夫婦世帯ですが、今年収入が大きく減りました。就学援助の基準と、家計急変時の扱いを教えてください」
子育てと家計の問題が重なっている
子どもの食事、登校、発達、家族の病気なども重なっている場合は、市区町村のこども家庭センターへ話せます。
こども家庭センターは、妊産婦、子育て家庭、子どもからの相談を受け、必要な支援を調整する窓口です。設置状況や名称は自治体によって異なります。
保険料や医療費は、「払えないまま放置」と「申請して軽くする」で結果が変わります
国民健康保険料、国民年金保険料、医療費は、それぞれ別の制度です。
国民健康保険料
所得が一定基準以下の世帯には、保険料の一部が軽減される制度があります。また、災害や収入減など特別な事情によって納付が難しい場合は、自治体独自の減免や納付猶予を利用できることがあります。
未納通知を放置せず、市区町村の国民健康保険担当へ、収入が減った時期と現在払える金額を伝えます。
国民年金保険料
失業や収入減などで納付が難しい場合は、保険料免除や納付猶予を申請できる可能性があります。
未納のままにすると、将来の老齢年金だけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金の要件に影響する場合があります。払えないときは放置せず、市区町村の国民年金窓口か年金事務所へ連絡してください。
高額な医療費
医療機関の窓口負担が高くなる場合は、高額療養費制度を利用できる可能性があります。上限額は年齢や所得、診療月によって異なります。
加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村国保などへ、治療前または支払い後に必要な手続きを聞いてください。
「医療費と保険料の両方が払えません」と伝えれば、それぞれの担当部署を案内してもらえます。
社会福祉協議会の制度は、給付ではなく貸付の場合があります
市区町村社会福祉協議会では、一定の要件を満たす低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯などを対象に、生活福祉資金貸付制度を扱っています。
資金には、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金などがあります。
ただし、原則として返済が必要な貸付です。申し込めば即日で借りられる制度でもなく、審査では資金の使い道や返済可能性などが見られます。
今日の食費がない状態で、「貸付の審査結果が出るまで待つ」という進め方は適切ではありません。切迫している場合は、自立相談支援機関や福祉事務所へも同時に伝えてください。
「生活福祉資金を借りられるかだけでなく、返済を増やしてよい家計かも見てほしいです」
このように話せば、貸付以外の支援を先に使うべきかも検討できます。
借金で生活費が消えるときは、新しい借入れで月末を越えないようにします
給料日に返済すると、家賃と食費が足りない。足りない分を別のカードで借り、翌月また返す。
この状態では、収入が少ないだけでなく、返済の仕組みそのものを見直す必要があります。
自立相談支援機関の家計改善支援では、生活費と返済を分け、法律相談などへつなぐことがあります。
消費者金融やクレジットカードの返済条件を窓口が直接変更することはできませんが、弁護士や司法書士へ相談すべき状態かを分けられます。
次の借入れをする前に、借入先、残高、毎月の返済額だけでも伝えてください。
「四社へ毎月八万円返済しており、家賃が払えません。新たに借りずに生活を維持する方法と、債務整理を検討する基準を聞きたいです」
配偶者に収入があっても、生活費を使えない場合は別の問題があります
世帯の収入は一定額あるのに、配偶者から生活費を渡されない。通帳やカードを取り上げられ、食費や医療費を頼むたびに怒鳴られる。
この場合は、家計管理の行き違いだけでなく、経済的な暴力や支配が関係している可能性があります。
相手と二人きりで家計会議をすることで危険が高まりそうなら、一人で説得しようとしないでください。
自立相談支援機関へ生活費の不足を伝えるとともに、配偶者暴力相談支援センターなどへ、安全な連絡方法から相談します。
「世帯収入はありますが、私と子どもが使える生活費を渡してもらえません。相談したことを相手に知られると危険です」
現在暴力を受けている、外へ出られない、子どもや本人へ危害が迫っている場合は110番を優先します。
相談時は、世帯全体を完璧に計算せず、四つの数字を伝えます
窓口へ行く前に、家計簿を完成させる必要はありません。
次の四つが分かれば、支援員は状況をつかみやすくなります。
- 今月の世帯収入
- 現在の預貯金
- 毎月の家賃または住宅ローン
- 最も近い支払期限と金額
加えて、家族人数、仕事を休んだ理由、医療・介護・子育ての事情を伝えます。
「夫婦と小学生二人の世帯です。今月の収入は二十二万円、預貯金は三万円、家賃は八万円です。五日後に電気が止まる通知があり、学校給食費も未納です」
金額が正確でない場合は、「約」「まだ確認できていない」と付ければ構いません。
今日は最も近い支払期限を見て、窓口名を一つ保存します
今夜、利用できる制度を全部探す必要はありません。
家賃、公共料金、学校、保険料などの通知から、最も近い期限を一つだけ見てください。
次に、市区町村名と「自立相談支援機関」を検索し、電話番号と受付時間を保存します。
明日伝える言葉は、次の形で十分です。
「ひとり親ではありませんが、世帯収入が減り、家賃と食費が足りません。五日後に電気の停止予定があります。利用できる制度と、先に連絡する相手を教えてください」
窓口へ連絡することは、給付を受けると決めることでも、家計のすべてを他人へ任せることでもありません。
まず期限の迫った一件を止め、その後の一か月をどう保つかを一緒に考えるための連絡です。














